【告知】『坂道と転び方』ティザーPV 第二報
—note創作大賞応募作品。表題左下のハートマークをぜひチェック!現在無料公開中!-
大好評をいただいておりますこの作品! 障がいとリハビリテーションを現職の理学療法士が記す、今まであったようでなかった作品。是非ともその世界を共に広げていきましょう!応援をよろしくお願いします。
やっぱり進藤さんは知っているんすね。と普段よりもずっと考え込みながら話す進藤守を見て、白波百合は手元を見つめる。自分は何を期待して訪れたのだろうかと考える。
口腔ケアの実践についていよいよ話そうと思うが、まず最初に行う時には拒否されることもまた多いことを念頭に置いておくことだな。
ちょっとわかるっす。口の中を他人に見せたり、触れたりしてもらうのはどうしても抵抗があるっす。口を固く閉じてしまうかもしれないっすね。
そうだな。コミュニケーションが取れたら説明もできる。しかしそうとばかりではない。反射的に噛んだり、吸啜反射などの反射を認めると口を開けることすらしてくれないこともある。ただトライはしなければならない。そのうち、言葉は通じなくても理解はしてくれることもある。
言葉が通じなくても。と白波は繰り返す。過去に消えてしまった人には敵わない。先輩はずっと、自分と同じ名前に主任を思い続けていたんすね。と白波は胸がキュッと締め付けられた。
必要な物品だが一般的に、柔らかめの歯ブラシ、不織布やスポンジブラシといった柔らかめの素材を選ぶ。口腔内を傷つけないようにな。感覚が敏感になっている時も多いから痛みが出ないように配慮は必要だ。
ふむふむ。なるほど。特に唾液の分泌量が減っていると硬い素材だと痛そうっすからね。大切っす。
そして保湿剤も有用だ。市販されているものも今では多いし、医師から処方される人工唾液や保湿含嗽剤などもある。口の中を磨いた後に保湿することもまた重要だ。
山吹薫から聞いた長い長い過去の話。聴きたいと言ったのは自分で、話してくれたのは先輩である。薄々感じていた先輩の苦しみ。自分がどうにかできるとやっぱり・・・自惚れていたと白波は思う。
でも、口腔ケアを行う必要のある人は、嚥下機能自体も低下している人が多いっすよね?ケアをするのにも誤嚥がちょっと心配っす。
そうだな。車椅子の上だとしても、ベッドの上でも同じように姿勢が重要になる。まっすぐと向き姿勢が崩れないように、必要な時にはポジショニングを行う。行い、頸部がぐらつかないように広めの枕も有効だ。ヘッドアップを30度以上の必要な角度で行い・・・ここら辺は俺たち言語聴覚士や看護師さんに聞いてもよいな。何もかも自分だけでとは考えなくていいんだから。
そうっすね。うん。そうっす。だから今後とも相談するっす。
頼むよ。と笑みを向ける進藤に白波はうなずいて返す。ひとりではないのだ。自分も、先輩もひとりではない。と言葉を胸の奥にそっと置いた。
白波百合の覚書 5
・最初は拒否されることもあるけれど、次第に慣れてもらうこともできる。
・柔らかい素材を選んで、保湿も重要である。
・ひとりではない。勇気を持って相談することもできるのだ。
【心揺さぶるストーリー!理学療法士×作家のタナカンによる作品集!】
小説の中では様々な背景や状況、そして異なる世界で生きる人々の物語が織りなされます。その中には、困難に立ち向かいながらも成長し、希望を見出す姿があります。また、人々の絆や優しさに触れ、心温まるエピソードも満載です!
コメント