敗血症の話 その② 〜敗血症で起こるショックの特徴〜

敗血症

いつまでも同じ日々は続けたい。それに越したことは無いんすけどね・・・白波百合は一見いつもの様に見える山吹薫を眺めながらそう思う。

山吹 薫
山吹 薫

そして敗血症の話の続きだな。敗血症は言ってみれば何らかの要因によって全身的に広がった感染による全身性の反応によって、結果として生命を脅かす低血圧、つまりはショックだな、それにより多臓器不全を起こしてしまう。それが恐ろしいことはさっき話した通りだよ。

白波 百合
白波 百合

そうっすね。でもそうやって聞いていると、敗血症自体の感染よりも、どこかその血圧・・・もまた重要になりそうっす。

山吹 薫
山吹 薫

そうだよ。いつも当たり前のように測定している血圧。それが重要な要因となる。

そういって、ページが止まったままの文献に山吹薫は目を落とす。その気持ちはきっと先輩の過去を漂っている。いや、、、それは今に始まったことでも無いっすね。と白波は思う。

山吹 薫
山吹 薫

これはおさらいだが、血圧とは心拍出量×全末梢血管抵抗で表される。心拍出量は一回の心臓の働きで全身に血液が送られる一回拍出量と、1分間の脈拍、この場合は心拍だな。そして血管の抵抗抵抗感で決まる。

白波 百合
白波 百合

そう改めて聞くと、血管の抵抗が少ない方が心臓も働きやすそうに思えるっすけど、例えば水道から出るホースがダラダラと溶けるように緩んでいたらそれは、十分な圧力でホースの先には水は届けられ無いっすもんね!

山吹 薫
山吹 薫

ふむ。良いな。そして過分では無い程度の血管の抵抗もまた必要であって、その白波の例えで言うのなら、そのホースの先は血液を求める臓器や組織なのだから、そこまで酸素を送り届けられなければ意味が無い。他にも動脈の弾力性や血液の粘性、循環血液量もまた影響はするがな。そして、敗血症では特にその血管の抵抗感が影響して、血圧を保てなくなり、組織への還流量が低下していますのが敗血症性ショックだよ。

君と呼ばれることから、いつしか自分の名前を呼んでいる。そんな些細な違いはきっと先輩自身は気がついてない。だけども自分は・・・と白波はきゅっと自分の胸の前に手を置く。

山吹 薫
山吹 薫

そして敗血症に話を戻すと、これは全身的な炎症の反応が起きる。簡単に言うと全身的に免疫応答が起きるという訳だな。そのプロセスの中で炎症を誘発する物質であるサイトカインと呼ばれるものが産生される。

白波 百合
白波 百合

えぇと全身で炎症が起きるということは、血管が拡張するっすね、そして血管の透過性が上がって血管の内外へその免疫応答に関連する細胞なんかが行き来しやすくするっすね!

山吹 薫
山吹 薫

そう。その結果、血管によって今まで適度に与えられていた血管の抵抗性が低下して、必要な組織へと十分に血液を送り届ける事が出来なくなる。その結果組織は必要な酸素を得られずに障害される。それが全身的に様々な臓器で生じるから、多臓器不全となる訳だな。そして様々な二次的な障害もまた呈していく訳だ。

だからこそ、自分もまた先輩に近付きたいと白波はそう思う。自分のエゴかもしれない・・・それでも先輩のより近くに在りたい。白波はそう思う。

山吹薫の覚書 55

・敗血症性ショックはいわゆる末梢血管抵抗の消失とも思える。

・その結果、様々な必要な臓器へと血流が滞り、多臓器不全を起こす。

・・・・そんな顔をするな・・・

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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