白波はお昼休みに病室を訪れる。
そこには受け持った患者様が歳の離れた娘さんと一緒に食事を取っている所だった。何を話しているのかは分からないが入院した時の表情と比べると二人とも穏やかに見える。
それを遠目から見て、白波もまた柔からく笑みを浮かべる。
患者様の食事量は徐々に増えていき、ちょっとだけ力も付いてきた。
しっかりと一人で歩く事は出来ないが、歩く練習は行えてきている。
お互いに笑顔で食事をとる姿は安心する気持ちと、そして何だか暖かい気持ちになるのを感じる。
全ての人がきっとこう言った風に上手く行くとは限らないんだろうな。
同時にそうとも思った。
たまたまなのか、それともそれが自分のリハビリの結果なのかを比較検討する事は出来ない。
だけども自分の関わりで、こうやって何かに繋がる事ができる。
それは素直に嬉しく感じた。本当に良かった。
でも・・・もし自分がこの病棟に配属されずに先輩に出会わなかったら。ふとそんな事が頭を過る。
きっとここまで考えられていなかったとは思うし、何よりも何をしていいか分からずにずっと不安だったかもしれない。
答えのない話っすね。と白波はその思いを払い退けるために一度だけ頭を振る。
でも随分教えてはもらったけど、ちょっとだけ自分が何をすれば良いかが分かった気がする。
でもこれから何をしていけば良いかは分からない。
ずっと先輩に教えてもらう訳にはいかない。それは分かっている。
だから自分で勉強もする。だけども・・・
もうちょっとだけ良いっすかね。
白波は細い両手を後ろに回して組んでみた。
今度は先輩の話を聞いてみないといけないっすね。やはりそう思う。
先輩がどうやって今の先輩になったのか。
その昔の話を聞いたらきっと今後の参考になる。
もちろん後学のためにっす。と白波は病棟を後にした。
病室から笑い声が流れている。その心地よい音色はゆっくりと心の中に流れている。
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