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目の前に石峰優璃という成人しているかどうか怪しいほどの童顔な主任がいて、その前で僕がいつものように何かを教わる。そんないつものような日常なのに、なぜか不安がよぎるのはなぜだろうと山吹薫はそう思った。
簡単に血液ガス分析の概要は話したが、ともかくその検査結果から肺や心臓、腎臓といった臓器や体液の状態を知ることができるため、特に超急性期において全身状態を把握する重要な手段の一つとなる。
そのために各データがそこには記されていますね。目には見えない情報を得るのは状態をしっかりと理解した上でリハビリを行う上で非常に重要なことですよね。
そうだな。しかしこういう客観的な内部疾患に関するデータを読み解くには少々コツがいる。そのために苦手意識を抱くセラピストもまた多いがコツをつかめば決してそういうことはない。
ふふん!と石峰はいつものような不遜な笑みを山吹へと向ける。それもまたいつもの光景なはずなのにいつもと違うように見えると山吹は思う。
検査データを手にとった時にずらっと検査結果が並んでいると思う。その際まずはpHの値を見るんだ。基本的に7.35未満をアシデミア、これは血液が酸性に傾いていることを指す、そして7.45以上をアルカデミアという。これは血液がアルカリ性に傾いていることを指す。それぞれ正常の値からその方向へ傾くことをそれぞれの言葉で指していることを忘れてはならないよ。
それは学校でも習いましたね。どちらに傾いても人は正常に体の中の動きを保つことができない、ということでしたね。
そうだな。そして次はそこからなぜpHがどちらかへと傾いているのかを考える。例えばCO2が異常値を示している場合、過大な際には呼吸性のアシデミアだといえるし、過小な場合には呼吸性のアルカデミア。CO2にほとんど異常はないが HCO3が低値を示すのがアシデミア、高値を示すのがアルカデミアと言われるがそれだけで判断すると悩むこともある。
こういう話は国家試験前に教えて欲しかったですよ。そう山吹が笑みを含んで口を尖らせると、そうだなと石峰は頬を和らげた。
これは個人的だがHCO3は呼吸性のアシデミアやアルカデミアの結果としても変化しやすい。呼吸性の場合もそうだが臨床所見もまた重要な判断基準にある。q-SOFAや乳酸、PCTといった敗血症を疑わせる所見や高度の腎不全がある際にアシデミアを呈しているとも考えられるし、嘔吐やカリウム値の低値などの所見があると代謝性のアルカデミアとも考えられる。
全てのことに通じることだとは思いますが、客観的データのみで判断するのではなくその臨床所見を下に状態を考えていくことが必要ですね。
もちろんそうだ!それぞれには起因となる疾患があるのだからね。そして体は体内の環境を一定に保とうとする。そのためにそれぞれ代償機構が働くんだよ。呼吸性のアシデミアに傾くならば代謝性のアルカデミアに体を傾けようとする。その理解にはそれぞれの病態がなぜそれらを引き起こすのか。それをまず考えてみようか。リハビリが関わる部分もまたあるのだからね。
むぅ。と頭を抱える山吹を石峰は足を組んだまま見つめる。窓から差し込む朝日が逆光となって、表情は朧げに、そして石峰の輪郭だけどくっきりと映していた。
山吹薫の覚書 94
・血液ガス分析はまずpHを見る。そしてその傾きがなぜ生じているかを臨床所見を含めて考えていく。
・代償機構が働いていることもまた忘れてはならない。体は体を一定に保とうとする。
・いつものような日々なのに、なんだかいつもと違うのはなぜだ。
【〜目次〜】
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