褥瘡ケアの話 ②  〜褥瘡形成のリスク要因〜

褥瘡

【心揺さぶるストーリー!理学療法士×作家のタナカンによる作品集!】

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【看取りのセラピスト/ティザーPV第五弾】

さてさて。どうやってお話しを続けようか。坪井咲夜は表情に浮かべた笑顔の裏で考えを巡らせる。いつものようでいつもではない、山吹薫の瞳を覗き込む。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

褥瘡には圧迫の他にも、剪断力や引っ張り応力が影響するってことやけど、それで好発部位と呼ばれる場所に生じるリスクが高まるんやったっけ?。

山吹 薫
山吹 薫

ちゃんと勉強しているじゃないか。そうだな。好発部位とは身体的に骨が突出して体圧の集中しやすい部位に生じる。多くの患者は仰臥位でいることから、臀部の中央上にある仙骨部が最も多い。また横になったままであると腸骨の外縁である腸骨稜、大転子部といった場所が有名だ。

上代 葉月
上代 葉月

その人の、普段の姿勢によるんですね。でも私たちには起きないとすると、その人が身動きできないという要因に関連するのでしょうか?。

上代葉月は首を体ごと傾げる。基本的にぼんやりとした彼女は目的を忘れつつあるようだ。やっぱりウチがしっかりとせんとあかん。と坪井はふむと腕を組む。

山吹 薫
山吹 薫

それが重要なことだよ。要因としての大項目は、患者の全身的・個人的な要因に伴った組織耐久性の低下と、褥瘡・ケア要因に分けられるが、個人的には患者個人の要因が強く関与していると思う。

上代 葉月
上代 葉月

たとえば、身動きが取れない時やいわゆる低栄養。痩せて骨と皮膚が圧迫されやすかったりするときですか?

坪井 咲夜
坪井 咲夜

ということは感覚障害のある方や、低栄養に繋がりやすい発熱慢性疾患の進行、もしかしたら手術後で栄養状態も悪くなりつつあり、身動きが取れにくい時もあるんかな?。

そうだな。と山吹が返し、勉強しているじゃないかとわずかに口元を緩める。同時に坪井の心も緩まるのを感じ、不器用鉄面皮である山吹の雰囲気も少し変わっていると疑問に思う。

山吹 薫
山吹 薫

褥瘡とは寝たきりの人がなるイメージがあるが、必ずしもそうではない。たとえば健康な人でも意識を失ってしまうことで、しかも発見が遅れた際に褥瘡は形成される。若い人でも同じだな。よってただ体位変換の時間が遅れただけの問題ではない。状態と状況が左右する。と僕は思う。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

ほうほう。いや考えてみれば当然やな。二時間ごとの体位変換と口を酸っぱく言われても、体型は人それぞれやし、たとえば痩せて慢性疾患の進む低栄養でしかも皮膚の弱い方やったら尚更、気をつけなあかんもんな。

上代 葉月
上代 葉月

褥瘡が深くなると痛そうですから、深く深く傷付けば、治るのも時間がかかりますね。

上代が語尾にかけて音を重く言い、山吹は口を閉ざす。時々、確信めいたことを言うもんやなと坪井は腕を組んだまま首を傾けた。

山吹薫の走り書き 2

・褥瘡は患者の要因に強く関与する。形成の理由は体位変換の有無だけではない。

・全身状態の評価と、褥瘡形成のリスクは個別に評価が必要である。

・傷。まだ僕も傷ついているのだろうか。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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