尿路感染症の話 その②  〜排泄に至るプロセスと関連する役割〜

尿路感染

またすっごい綺麗な人がいるものだなぁ。と上代葉月は高橋美奈を見てポヤンとそう思った。何故か白波百合は鼻息を荒くしているけれど、何故なんだろう?そう不思議に思う。

高橋 美奈
高橋 美奈

病態を理解するにはまず解剖学からね。解剖学は算数で言うと数字みたいなもんだからまずはその理解が必要なの。そこからの運動学や生理学が四則演算みたいなものだから、何事も基礎が大切なのよね。

上代 葉月
上代 葉月

確かにそうですね!そう言われると分かりやすいです。まずは数字を知らないといけませんね!

白波 百合
白波 百合

ふむ。なら尿路の話っすね!まず心臓から出た血液は身体中を通るっす!そしてもちろん腎臓にも流れ込むっすね!小さな動脈は糸球体という場所で濾過された後、小さな静脈となって出て行くっす!

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そしてその糸球体で濾過された血液が尿の始まりやな!それはボウマン嚢を通って、近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管を経て集合管で集まって尿管を通って膀胱に注ぐんやったね!

上代 葉月
上代 葉月

うん。そして外側の部分と内側の部分に分かれていてそれぞれ皮質と髄質だったね。その糸球体は皮質に、尿細管は皮質と髄質に跨っていて、集合管につながった後は、腎臓中央の部分、腎盂へと流れ込むんだったね!

あらよく勉強しているじゃないと、高橋は髪をかきあげた。何だかこんなお姉さんに褒められると嬉しくなるなぁと上代は思う。それを真似て白波も髪をかき上げ、それを見て坪井咲夜はため息を吐いている。みんな仲良くなれそうだなぁ。そう上代は笑みを浮かべる。

高橋 美奈
高橋 美奈

そうね。そうやって膀胱に流れ込んだ尿は貯蔵され、膀胱を伸展させていきリミットが来ると尿道を通って排泄される。この糸球体から濾過される血液、まぁ尿の原材料で原尿と言われるんだけど、これは日に150ー200lとも言われるの!とんでもない量よね。でもその全てが体外に排泄されているのかしら?

白波 百合
白波 百合

はい!それは違うっす!その99%が先ほどの尿細管から吸収されて行くんすよね!そんなに出たら何回トイレに行っても間に合わないっす!

上代 葉月
上代 葉月

うん。そしてそこで確か電解質の調整もされるんだよね。Naとかカリウムといった。他にも重炭酸イオンといったものも。それで体の中のPHを保ったり、なんというか・・・恒常性を保つ重要な働きをしているんですよね!

坪井 咲夜
坪井 咲夜

なんかアンタも中々勉強しとるようやな。それにエリスロポエチンといった血を作る指令を出すホルモンを分泌したり、ソラマメのような腎臓にちょいと帽子を被るようについている副腎では所謂アドレナリンやノルアドレナリンといったカテコールアミンの類が分泌されんねんな!

よし!と上代は心の中でガッツポーズを取る。実は二人に隠れて結構基礎から勉強しているのだ!と声には出せないけどその実感が湧いてちょっと嬉しい。

高橋 美奈
高橋 美奈

そうねぇ。でも他に大切なこともあるんじゃないのかしら?この魔法の呪文みたいな言葉を聞いても思い出さないかしら?行くわよ?レニン!アンギオテンシン!アルドステロン!そーれ♪

白波 百合
白波 百合

血圧の調整を行うレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系のお話っすよね!腎臓ではその調整も行っているっす!

上代 葉月
上代 葉月

そうだったね!腎臓に流入する血液が少なくなると、レニンが分泌されて、それが体の中を通って肺に至るとアンギオテンシンⅠからⅡになる。それが末梢の血管を収縮させて、そしてアルドステロンとなってさらに血圧を上げるように働くんだったね!

坪井 咲夜
坪井 咲夜

なっがい言葉やから覚え難い奴やもんなぁ。それに姐さんの言葉はなんか時代が・・・まぁええわ。兎に角!電解質や水分の調整、そして血圧の調整まで行う腎臓は体の中を一定に保つためにめっちゃ重要な役割だって事やな!

そういう事ー!とチョキにした右手を右目に当てて、何処かで見た事のあるポーズを取る高橋に上代は拍手を送る。山吹さんの先輩達ってこんな楽しい人ばかりなのかな?と思うと楽しくなる。

高橋 美奈
高橋 美奈

まず心不全で心臓から血液が出せないと、腎臓に来る血液も少なくなるから血圧を上げようと指令を出す。だけどもそれは心臓にとっては負担な事なの。そして腎不全が進んで腎臓の働きも上手く出来ないと今度は心臓へ負担が掛かってしまうから、これは心腎症候群と言われたりするのねー。だけどそれはまた薫ちゃんに教えて貰いなさいね。そして尿路感染症の話に戻るけどもう想像は付くんじゃないのかしら?

白波 百合
白波 百合

そうっすね。尿は逆流しないけど、こう考えると尿道から炎症を起こす腎盂まではつながっているような気がするっす。

上代 葉月
上代 葉月

なるほど!なら何らかの要因で感染源が尿道や膀胱内にあると、それがどんどんそこまで波及するって事だね!

坪井 咲夜
坪井 咲夜

でもそれは誰にだって起こるかもしれへんって事やろ?でも尿路感染症は高齢者が多いやん?なんでなんかな?

ふふーん!と高橋は得意げに腰に手を当てる。何だか話すごとに生き生きしてくるなぁと思う。しかもこの人は救急科の作業療法士さんなのだ。普通は呼吸リハや内部障害のリハビリに関わるのは理学療法士が多いけど、世の中にはすごい人がいるものだと上代は思う。

高橋 美奈
高橋 美奈

それはまずは加齢変化なの。当然体は加齢により変化する、それは尿管や膀胱も一緒よね。その結果残尿、つまりは排尿後に残る尿の量は増えるの。そしてそこで感染源となる菌が繁殖して、徐々に腎臓の方向へと波及して尿路感染症のリスクは高まるの。

上代 葉月
上代 葉月

なるほど。だから高齢者に多いんですね。それにやはり感染したから発症はしなくて、体が弱って来てから抵抗力が低下して発症する事もあるのでしょうね。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

なるほどな。考えてみたら当たり前の事かも使れへんけど、こうやって繋げて考えるとなんか妙に納得すんなぁ。

白波 百合
白波 百合

でも・・・それらに対して自分たちが出来る事ってあるんすかね?やっぱり看護師さんや介護士さんに頼ってしまいそうっす・・・

ふふ・・何だと思う?と高橋は柔らかな視線を白波に向ける。何だかこの人が白波を見る時には自分たちを眺める時とはちょっと違うような気がする。懐かしそうに、そしてどこか切なそうに、そんな表情に見えるな。と上代は思った。

白波百合のノート 119

・腎臓は尿を生成する以外にも、電解質や水分量、血圧といった体の中の環境を一定に保つ重要な臓器

・尿路感染症は膀胱や尿管の加齢によってもリスクが高まる。残尿に感染源が繁殖する。

・美奈さんの表情は何だか優しそうなのに何処か悲しそうなのはどうしてだろう。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

【総集編!!】

【これまでの話 その①】

【これまでの話 その② 〜山吹薫の昔の話編〜】

【時間がない人にお勧めのブログまとめシリーズ!】

【ウチ⭐︎セラ! 〜いまさら聞けないリハビリの話〜】

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