床ずれの話 その② 〜寝たきりじゃ無くても起きる床ずれ〜

褥瘡

しっかし・・・でっかい人も居るもんやなぁと坪井咲夜は岩水静を見上げる。座っていてやっとウチと同じくらいやんとふむと腕を組む。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

あんな・・・でっかい岩水さん。何を食べたらそないに大きくなれるんです?

岩水 静
岩水 静

そうだな。適切な運動と食事と休養、後は敬愛する父と母からの遺伝だな。二人とも俺よりまだ大きいからな!それに君は昔居た俺たちの主任と同じくらいだなぁ。髪型や顔立ちはまるで主任は君より幼かったがなぁ!

どないな一家やねんと坪井は眼を細める。そしてその言葉に表情を隠す山吹薫を横目で見ると、その先で沢尻悠と眼があった。まるでその先を話させたく無い様に様に山吹が口火を切った。

山吹 薫
山吹 薫

さて続きですね。褥瘡がどういったものかのお話は済みましたが、必ずしも全ての人が褥瘡になる訳ではなく、かといって健康だからと言って褥瘡にならない訳ではありませんね。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

ん?どういった事や?自分で体の位置を変えられて除圧が出来れば褥瘡は出来ひんのとちゃうの?

沢尻 悠
沢尻 悠

基本はそうだけど、それはあくまで原疾患が何もない人だけだねー。そして褥瘡予防にもまずは既往歴、主病名以外の病態の理解が必要なのさー。

岩水 静
岩水 静

ふむ。確かにそうだ。例えば原疾患によっては適度な除圧を行っていてもそのリスクは爆発的に増える事もあるのだからな!

しっかし、この男も分かりやすいなと坪井は思う。幼い顔立ちの自分くらい小さなかつての主任。その姿が今も山吹の心の中に深く根ずいている。どんな人やろ?と坪井は首を傾げる。

岩水 静
岩水 静

そうだな。例を挙げるとまずは褥瘡にも栄養状態は深く関わる。皮膚を保つだけの栄養を得る他にも、栄養状態が悪いという事は当然痩せている。それだけで皮膚と骨の境にある組織は薄く、圧迫によるストレスは高まるのは当然だな。

山吹 薫
山吹 薫

そしてその皮膚の脆弱性というのも問題です。この時点で圧迫以外の問題も生じますから、それは皮膚への摩擦や寝ている間に、特にベッドの頭の部分を上げている時に腰から臀部にかかる摩擦。これでも同様に褥瘡は出来ます。そして汗や排泄により皮膚が過度にふやけているとそこに潰瘍や傷、そして褥瘡を形成しやすいですね。

沢尻 悠
沢尻 悠

あとはうっ血性心不全、まぁ腎不全もまたそうだけど体が浮腫んでいても当然リスクは高まるよねー!一見肥満に見えるかもしれないけど、皮膚は浮腫んでパンパンと張っていて摩擦やズレのストレスも受けやすい。そしてリハビリや移乗する時に怪我しやすいっていうのもあるねー。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

それはうちらが気をつけなあかん事やな。心不全で活動性が落ちてサルコペニアになってる人も多いしなぁ。

そう言いつつ何か心が何処か別の場所にある山吹を再び横目で見る。こんな不器用鉄面皮をこんな表情にし、こんな巨大な岩水さんを従える主任。謎は深まるばかりやぁ!と坪井は頭を抱える。

山吹 薫
山吹 薫

どうした?そして栄養状態と関連してCOPD、慢性閉塞性肺疾患もまたリスクは高い。多くの方は低栄養の状態で身体は痩せている。それに心不全とは別の機序で動く度に息は切れるから、ベッドから動く事を嫌がる人も多いしな。そしてこれらは良く関連する。

岩水 静
岩水 静

それに加えて、脳血管障害による半身麻痺、そして脊髄損傷、頸髄損傷といった体の動きが著しく阻害されてしまう、それに加えて痛みや圧覚を伝える感覚が鈍麻する。もしくは麻痺するという病態ではまた違ったリスクが伴う。体を動かすのが難しい以上に、自身の傷や痛みに気がつきにくい。よって脳血管障害の方では例え歩けていたとしても装具を着けた場所が圧迫されている。脊髄損傷の方では車椅子で生活する上で臀部が圧迫される。それで褥瘡を形成するリスクが高いのだが、まぁこれは入院中に指導や練習はされているな。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

ふむふむー。なるほどな。何も寝たきりだから褥瘡が出来るという事は安易な考えかもしれへんな。その病態によってはリスクは変化する。あくまでリスクは相対的なものやから、その人個人個人で考える必要もあるかもしれへんな。

沢尻 悠
沢尻 悠

それはもちろんそうだけど、施設や老人ホームではすっごい多忙だし専門にしているスタッフも少なかったりするの。でも今は色んな場所で使っているアセスメントシートや、アルゴリズムが公開されているから一度調べてみるのも良いかもね。

でもこの人は忘れる事が出来ひんのやろな。と坪井は思う。それだけの人だったか、それだけの事があったのか。それは誰にも分からへんのやろけどと坪井は思う。

岩水 静
岩水 静

それだけではないぞ!例えば整形疾患でも、ギプス固定の当たり方次第ではその部分に容易に褥瘡は出来る。腕の骨折で元気に歩いていたとしてもな。よってギプスの当たり感は必ず聞いておく。骨折自体の痛みと混同する方も多いからな!

沢尻 悠
沢尻 悠

確かにそうですねー。骨盤の骨折では体位変換が著しく制限される事も多いし、酷い骨折なら創外固定もされてるからねー。

山吹 薫
山吹 薫

他にもというか、糖尿病は重要な問題になる。高血糖によりドロドロになった血液は小さな動脈を障害する。よってそれ自体が圧迫部分の虚血を助長している訳だからリスクも高い。そして創傷治癒過程もまた阻害する。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

ふーむ。なら色んな疾患を多く抱えている高齢者が一番リスクが高いと思うわな。そして周りからしたらそういう人でも、今聞いた病態を抱えていたら余計にリスクは高まるって事やんなぁ。大切なんはみんなでその人の事を考えるって事やわな。なんでもそやけど。

岩水 静
岩水 静

そのとーり!良い事を言った!

吹き飛ばされそうな程の大声に坪井は体を仰け反らせながら、こんな人を従えてるなんてやっぱり普通の人とちゃうわ。そんな事を坪井は思った。

山吹薫の覚え書45

・褥瘡はもちろん低栄養状態が問題になるが、それ以上にそれを引き起こしている病態もまた考慮する。

・痛みの感覚は重要、それが鈍っているならば余計に除圧の指導は必要。

・しかしこの人だけは変わらないな。何だか安心する。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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