敗血症の話 その③ 〜敗血症でのレッドフラッグ〜

敗血症

いつものような、そしていつもとは違う休憩室で、山吹薫はまっすぐと自分を見つめる白波百合の視線を感じる。それもまたいつものようでいつもとは違うと山吹は思う。

山吹 薫
山吹 薫

それで、敗血症の症状だな。ほとんどの場合は発熱が見られるが、逆に体温の低下が見られる事もある。悪寒戦慄や体の強い倦怠感といった形かな。そしてそれに伴い呼吸や心拍数がそれぞれ、もしくは両方速くなる。

白波 百合
白波 百合

えぇと、なんだか強い発熱に似た症状のようっすね。でも全身で感染が進んでいるとなると、そういう症状も出てくるかもしれないっす!

随分と一緒にいる時間が長くなったと山吹は思う。かつての救急科の時間、そしてそこから一人だった時間。その時間よりは短くても、それでも随分と長いと感じる。

山吹 薫
山吹 薫

それ以上に進行する事により、様々な症状も程するんだよ。特に認知症の方みたいに自身の症状を正確に伝える事が出来ない方には、よく不穏という形で錯乱する症状が見られる。そして意識レベルは低下し、体は強く熱を持ち赤みを帯びる。そして呼吸や心拍数は増加し、血圧も低下し尿量もまた低下する。

白波 百合
白波 百合

それは、腎臓への血流量が低下するって事っすかね。血圧は必要な臓器に血液を送り届ける役割もあるっすから、腎臓に至る事が出来ないとそこから尿を作る事が出来なくなるっす。そうしたら・・・老廃物の排泄も難しいっすね・・・

山吹 薫
山吹 薫

それで体の中に毒素はたまる。体の中の水分量は排泄できない結果として多くなるが、全身の血管で炎症が起きているようなものだから、血管は広がり有効な血流量は確保できない。結果として血圧は低下する。その結果何度も話したが多臓器不全に陥り、・・・死亡するリスクも高まる。

その言葉に白波は息を一度のみ、再び山吹を見つめる。なんともこの子も強くなったものだと山吹は思う。ちゃんと自分自身と向き合えていると思う。それに比べて僕は・・・と山吹は一度首を振る

山吹 薫
山吹 薫

そしてその予後だが、もちろん敗血症性ショックに陥り、なんの治療も行わないとほとんどの人が死亡する。そして治療を行ったとしても、段階にもよるが死亡率も低くはない。何れにしても敗血症に至る原因を精査される。そして多数の要因の中でどれだけ迅速な治療を受けるか、特に抗菌薬や患者様の元々の体力にも当然左右される。

白波 百合
白波 百合

なるほど・・・でもそうなってくると自分には何も出来ないような気がするっす・・・

山吹 薫
山吹 薫

そうでもないよ。普段から関わる僕たちが一番その違いが分かる。心身の状態変化や元々の機能は治療の上で有用な情報ともされる。もちろん循環動態が落ちつかない間は何も出来ない事は多いが、それからやる事もまたたくさんあるんだよ。

そうっすね!と白波は笑顔を見せる。そう。君はもう何も出来ない訳ではないのだ。その言葉を山吹は一度飲み込み、そして不思議そうな笑みを浮かべる白波の前で笑みを作った。

山吹薫の覚書 56

・敗血症が進行し、有効な血圧が保てないと様々な症状を呈する。特に組織への循環量が低下し、有効な治療が得られないと致死的になることも多い。

・症状の進行は患者様の普段の行いからの逸脱から予測も行える。普段から関わるスタッフの感覚もまた重要

・君はもう何も出来ない訳ではない。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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