発熱と熱源の話 その① 〜なぜ平熱は一定なのか〜

発熱

季節は巡り、西日は段々柔らかくなっていく。

もう夏も終わりっすねぇ。白波は大きく伸びをしながら休憩室への道を歩く。それでも西日はまだ暖かい。

白波 百合
白波 百合

おつかれっすー!

進藤 守
進藤 守

おぉいらっしゃい。

山吹 薫
山吹 薫

また無駄に元気が良いな。

白波 百合
白波 百合

無駄とは何すか無駄とはー!進藤さんも珍しいっすね。

進藤 守
進藤 守

うん。まぁ暇だったからな。

山吹の隣に進藤は並んでいる。二人は普段どんな会話をしているんすかね。白波はそれが気になった。雑談をしているようなイメージは浮かばない。そして休憩室の扉は再び開く。

上代 葉月
上代 葉月

お疲れ様です。ほら百合!またアンタ文献忘れてる。

白波 百合
白波 百合

これで二度目っすね・・・ありがとうっす。

訪れた上代は山吹と進藤を交互に見比べる。そういえば上代は進藤さんと直接話すのは初めてっすね。と白波は思う。

進藤 守
進藤 守

初めまして、百合ちゃんのお友達?

山吹 薫
山吹 薫

同期の理学療法士さんだ。どうやら結構な酒飲みらしい。お前と気が合うかもな。

白波 百合
白波 百合

そうっすそうっす!そんでザルというか、もう底に穴が空いてるとしか思えないくらい沢山呑むんす!

上代 葉月
上代 葉月

初対面でそんな事は言わないでください。どうぞよろしくお願いします。

進藤 守
進藤 守

こちらこそ。

なんか二人とも空気感が似てるっすねぇ。と白波は目を細める。後で上代に進藤さんのお店も教えてあげよう。白波はそう思った。

白波 百合
白波 百合

しかし涼しくなってきたっすねぇ。

山吹 薫
山吹 薫

うむ。脱水症の患者が減ると秋の訪れを感じるよ。

進藤 守
進藤 守

そうだな。夏の終わりはもう近い。

上代 葉月
上代 葉月

そんな事で季節感を感じるのはちょっと・・・

白波 百合
白波 百合

そうっすよ。でも外気温が変わっても体温が一定なんて不思議っすねえ。

白波が首を傾げるのを見て、進藤と山吹は顔を見合わせる。

山吹 薫
山吹 薫

不思議では無いよ。自然と体温が一定になっている訳ではなく、体が体温を一定に保つようにしているんだ。

白波 百合
白波 百合

どこが違うんすか?

進藤 守
進藤 守

体温を保つのにも要因があって、逆に体温を一定に保てないのにも要因がある。

上代 葉月
上代 葉月

熱中症みたいに体温が上がるって事ですか?

自然と上代も白波の隣に座っている。なんだか今日は人が多いっす。白波はちょっと楽しくなる。

山吹 薫
山吹 薫

例えば肺炎のように感染症であったり、慢性疾患や関節の炎症、術後などの体が外部から侵害される時の発熱と、熱中症などで外気温の変化で体温が変化するのは大きく違う。

白波 百合
白波 百合

二つとも熱が出て体温が上がるのにっすか?

上代 葉月
上代 葉月

風邪を引いて熱が出るのと、運動したり、日向にいて体温が上がるのとは違うって事ですよね?

進藤 守
進藤 守

そうだね。体の中の設定温度が変化するんだよ。

上代 葉月
上代 葉月

室温・・みたいな感じですか?

山吹 薫
山吹 薫

うん。体を大きな部屋と考えるなら、体の中の設定温度が変化するという表現は良いかもしれないな。

白波は自分の体の中で小さな自分がエアコンを操作している場面を想像する。頭の中にも知らない自分が沢山いると思った。

山吹 薫
山吹 薫

その設定温度は視床下部で操作される。丁度、頭の中央に位置する場所だね。それはセットポイントと呼ばれていて、普段は常に平熱と言われる温度で一定になっている。

白波 百合
白波 百合

へぇ!勝手に調整されている訳じゃないんすね!

進藤 守
進藤 守

温度設定だけそこでされている感じかな。実際に温度を調整するのはまだ別だね。

上代 葉月
上代 葉月

えぇと単純に考えるなら体を動かしたりする。って事ですか?

進藤 守
進藤 守

まぁややこしい話にはなるが、エネルギーが産まれる時に熱もまた産まれる。

白波 百合
白波 百合

ふんふん。ご飯を食べると熱が出る!という事っすね!

それだけではないよ。と山吹が目を細めているのが見えた。先輩は何も変わらないっすねぇ。と白波は少し寂しくなる。

山吹 薫
山吹 薫

体のエネルギーを生み出すのは体の中の細胞だね。TCA回路や電子伝達系の中で発生したエネルギー、ATPが発生した時に熱も同時に産まれる。

白波 百合
白波 百合

えぇとご飯を食べて、それが血となり肉となる時に熱が出るんすね!

山吹 薫
山吹 薫

なんだか時々古風な言い回しをするな君は。

上代 葉月
上代 葉月

まぁ、とにかく食物や栄養が細胞の中で代謝される時に熱が発生する。という事ですか?

進藤 守
進藤 守

まぁそうだね。それは常に体の中で起こっているし、一番エネルギーを使っている部分はわかる?

上代 葉月
上代 葉月

えぇと。筋肉ですか?

白波 百合
白波 百合

頭っす!

山吹 薫
山吹 薫

それは今の君だろう。

進藤 守
進藤 守

まぁ二人とも正解だね。

白波は腕を組んでふふんと鼻を鳴らして山吹を見る。なんだそれはと山吹は目を細めている。まぁこんなもんでも良いっすかね。とそう感じた。

山吹 薫
山吹 薫

とにかく視床下部で体の設定温度が決められて、体の中で消化吸収された栄養が細胞の中で代謝される時にエネルギーと熱が産まれる。

白波 百合
白波 百合

そしてそれは筋肉で一番多いんすね!

進藤 守
進藤 守

そう。そしてその設定温度が上がる時に考えなきゃいけない事があるんだよ

白波 百合
白波 百合

なんすか?体の中に重大な何かが起こるんすね!?

上代 葉月
上代 葉月

百合・・・落ち着きなって・・・。でも気になります。

進藤と山吹は顔を見合わせて、進藤は腕を組み、山吹は頬杖を付いた。

二人で何を話していたんすかねぇ。白波はそれが気になった。

白波百合のノート 43

・視床下部で体温の設定温度が決めれれていて、それはセットポイントと呼ばれる。

・体の中でエネルギーが産まれる時に熱が生まれて、それで体温が調整される。

・やはり先輩はいつも通りだ。←ちょっと残念。

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