業務が終わって退勤者の波がおさまると、途端に更衣室は静まり返る。
そんな中で葉月と咲夜は向かい合いながら、それぞれ医療系のブログを探していた。

んー。今日はどんなんにしよかなー。たくさん有って迷うわー

そうだね。みんな本当に頑張ってるんだね。
そう他愛の無い会話を繰り返していると、更衣室のドアがガチャリと開いた。

あれ?二人揃って何してるんすか?

あっ百合。お疲れさまー

お疲れー。なんか久しぶりな感じがするなぁ〜
そうっすか?と白波は首を傾げて二人と一緒のテーブルに座る。

それで二人は何してるんすか?

近二人で勉強してるんだ。いろんな人の考え方を知りたくてねー

そうそう。あっこのブログなんてええんとちゃう?
ずるいっすー。と白波が声を上げるのを遮るように、坪井は三人の真ん中にスマートフォンを出し、それぞれ身を乗り出してそれを覗き込む。

こじ介護さんって人の【介護心】ってブログの中にある『介護事故0は本当にあるの!』って記事!タイトルからしてすごない!?

確かに施設だけじゃなくて、病院でもやっぱり転倒とか起きてしまう事もあるもんね。

ふむふむ。すごくシンプルでとっても読みやすく書いてあるっすね!
そこには分かりやすいイラストの表題と共に、こじ介護さんのブログ、というより実体験に伴った穏やかな口調でのお話が描かれている。

おぉ!いきなりびっくりする結論が書かれているっすね!

確かになぁ。でもこじ介護さんの言う通りな気がするわ。こればっかりは難しい問題やもんな。

そうだね。悲しい事だけど、それでもやっぱり起きてしまう事もあるもんね・・・
三人はふむふむ。とそれぞれ考えながら読み進める。介護現場だけではなく決してそれは自分達に関係ない話ではない。

しっかし色んな事例が書かれていて分かりやすいなぁ

本当だね!自分達が何をしなければならないのかが、よく纏められていて分かりやすい!

うんうん。そうっすね。同じプロとして本当に学ぶ事が多いっす!病院と違って人数の限られる施設の方には、本当に心強い内容かもしれないっす!
見事な色彩で描かれていくその内容は、最後まで読む事を飽きさせない。三人は一気に読み進めて、読み終わってからはふぅ。と一つだけ息を吐く。

自分達もリハビリの情報などは次の転帰先に送るっすから、これはすごく参考になるっすよね!

うんうん。そうだね。ちゃんと相手に必要な情報を提供しないと!それで事故が減るのなら嬉しい事だね。

そやなぁ。退院したらはい終わり!なんてちゃうしな。ふむ。我ながらええ記事を見つけたと思うわ!
踏ん反り返る坪井を見て上代はそうだね。と返事をする。白波だけは両ほほを僅かに膨らませる。

やっぱり二人だけずるいっす!自分も一緒に勉強したいっす!

どないしようかなー。美味しいご飯を無償で食べたいなー

ちょっと咲夜!いいよ!百合も一緒に勉強しよ!
うっす!と白波は両手を上げて頬を上気させる。なんやー。と言いつつ咲夜もまたちょっと嬉しそうだな。葉月は横目で坪井の表情を眺めながらそんな事を考えた。
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