大動脈解離の話 その① 〜重篤な疾患の分類〜 【山吹薫の昔の話】

大動脈瘤

今日は少しだけ体が重いな。そんな事を考えながら山吹薫はリハビリ室のドアを開ける。そこにはいつもの様にデスクに座る石峰優璃とその向かいには巨大な姿が見えた。

岩水 静
岩水 静

ぬはは!今日もまた早いではないか新人よ!朝はやはり良いものだな!

石峰 優璃
石峰 優璃

そうではあるが、わざわざ私の業務を手伝うと言って聞かんのだコイツは。

良いでは無いか!と盛大な笑い声を上げる岩水静の笑い声に、どこか体が軽くなった山吹はため息を吐きつつデスクに座る。

山吹 薫
山吹 薫

それは良い事でしょう。僕だっていつも手伝う気持ちはありますよ。

石峰 優璃
石峰 優璃

はっは!それは良いな!しかしまずは基本的な事を学ぶことからだな。そして大動脈解離の新しい患者が来ているぞ。

岩水 静
岩水 静

ふむふむ!これはまた大変だな!大動脈解離とはつまりは読んで字の如く、大動脈が何らかの原因で避けてしまう事を言うな。大動脈は内膜、中膜、外膜の3層構造だが、中膜が何らかの原因で裂けてしまって、元は壁の部分に血液が流れ込んでもう一つの通り道を作ってしまう事だな。

まずは基礎から。その言葉に山吹はまだ自分が新人である事を何処か悔しく思ってしまう。どんなに勉強しようとも確かな知識に裏付けされた経験値は埋めることは難しい。

石峰 優璃
石峰 優璃

そしてその通り道に流れる血液の圧力は強いために、裂けた部分、つまりはエントリーの部分から徐々に縦方向、多くは末梢方向へと裂いていってしまう。その際は本来血液が流れていた方の道が真腔、裂けてできた血液の通り道を偽腔と呼ぶのだよ。

山吹 薫
山吹 薫

ふむ。血液の流れが強ければその偽腔が真空を押し潰してしまい、そこから下の、本来流れるべき血流が阻害されてしまい、そこから様々な臓器障害が起きてしまうとの事でしたね。

岩水 静
岩水 静

その発症自体が重たい病状だな、そして大まかに二つに分類され、心臓から出てすぐの上行大動脈に解離がある場合にはスタンフォードA型、背中側によって下へと下がる下行大動脈が裂けるものがスタンフォードB型と分類される。特にスタンフォードA型は、48時間以内に破裂を起こしやすく多くの場合で緊急手術が選択される。他にも脳に血流を送る分岐の前、心臓へ血液を送る冠動脈への分岐、もしくは心臓方向へも解離が進み心タンポテナーゼという重篤な合併症を引き起こす。特に注意すべき事なのだよ。

まだまだ学ぶことは多くある。でも・・それでも・・・山吹は大きく息を吸い込んで、石峰を向き直る。首を傾げる石峰は少しだけ微笑んだ様に見えた。

山吹薫の覚書79

・大動脈解離はそもそもが重篤な疾患。特にスタンフォードA型は死にも繋がる。

・偽腔が真腔を押し潰し、種々の合併症も引き起こす事もある。

・それでも僕は学ばなければいけない。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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