ふむふむ。と白波百合は何度も頷く。ここまでの話で何となくコロナウイルスの事は知ることができた。今までのお話は内海青葉もまた聞いた話だと言っていたから、現場はもっと違うのかもしれない。それでも実際場面の知識はやはり勉強になると思い、仏頂面を崩さない山吹薫を眺める。
それでリハビリの話だねー。これはもちろん新型コロナウイルスによって廃用した方に対してもそうだけど、感染の最中である人に対しても必要性があるらしいんだよねー。
それは何だか想像できますね。新型コロナウイルスに罹患した方が何も全ての人が健康で心身に、障害を抱えていないとは言い切れませんから。それに重症化する人ほどやはり、慢性的な疾患を抱えています。
それに病院や施設でのクラスターも出ているっすから、当然リハビリ中だった人もいる訳っすよね?もしくはこれから手術を控えていてリハビリを行う予定だった人も。
そうだよねー。そして病院や施設でのクラスターは不注意なんかじゃなくて、災害のようなものだとボクは思うんだよねー。医療従事者やそうでない方もまた感染予防策を行わなければならない。もちろんそれ自体が上手く理解できない人や覚えられない認知症の方もいらっしゃるでしょう?精神疾患だったり高次脳機能障害もある人も多い。その中で全ての人をってのは難しいと思うんだー
そうっすよね。と白波は思う。自分自身だってそうだし、患者様だったら・・・と思う。症状は何も身体機能だけではないのだ。
それでリハビリを行う際にもまずは感染対策が絶対。手洗いうがい、手指消毒はもちろんだけど、それ以上に接触予防策や飛沫予防策、空気予防策もまた行う必要が絶対なの。自分が媒体になってしまうからね。そして介入するチームを固定するのも重要。その病棟だけでリハビリするとしても感染のリスクがあるのに、他の病棟までリハビリを行って感染を拡大させる要因にもなるしねー。
やはり必要と分かっていても難しいものはあるでしょうね。心理的な面でもそうです。我々セラピストもまた人間であるのですから。
でも多分自分ならやるっす。何も出来ずにただ眺めているだなんて出来ないっすもん。でもそればっかりは個人の感情の捉え方も違うっすから、それもまた汲み取らないといけないっすよね。
身体的な部分より心理的な配慮もまた必要っすよね。と白波は改めて思う。誰が誰を責めるとかそういう話では根本的に違うのだ。
うん。そしてゴーグル、またはフェイスシールドだね、N95をはじめとしたマスクや手袋、長袖ガウン、帽子などを着用する。これはそれぞれの病院や施設でルールが出来ているからそれに準じて行う必要があるねー。
ならその上でリハビリを行うとは思うのですが、例えば術後や廃用としてもやはり普段のリハビリとは方法を変えなければなりませんね。特に徒手の介入ではかなり濃厚接触となりますから。それに呼吸器症状が出ているのならエアロゾル、飛沫ですね、それを回避するために立つ位置も正面を回避する必要があります。
ということは動作指導や生活指導、時にはデバイスを用いながら徒手での介入を少なくしなければならないっすね。自身の身を守りつつ、患者様の身も守る。そのためには基準となるその病院や施設で定められた感染予防策を徹底して、立ち位置を正面から避ける。そして徒手での介入だけではなく動作指導や生活指導、運動の方法といった方法をとるって感じっすかね。
少なくともボクの知る限りではそうだね。他にもきっと良い方法があると思うんだー。それを考えるのがこれからのボクたちのリハビリの一つだねー。
そうっすね。と白波はそう思う。いつまでも自分達は無関係ではないのだ。
そして自分たちの健康管理もまた怠らないようにしないといけない。自覚症状は出ていないか、発熱はしていないか。これは出勤前と退勤前に行っている所が多いよね。そして異常があったらすぐに報告して指示を仰ぐ。当たり前だけどこれは重要。適切に個人防護具を着用していた場合には濃厚接触には該当せず、就業を控える必要はない。との記載もあるけれど、自己判断はせずに必ず相談する必要があるね。
そうですね。後は軽快して退院が決まったからといっても油断はできません。まぁリハビリではなくチームとして、円滑に社会復帰できるように保健所との連携も必要ですし、密閉、密集、密接といった三密を避ける指導もまた必要です。しかしまだ分かっていない事も多いですし、症状の再燃や後期合併症もまたありますから、体調不良の際にはすぐに対応出来る環境作りも必要です。
それに関わる中ですっごく大切なのは心理的な支援っすよね。それだけで不安になってしまう。もちろんその家族もまたそうっす。検査の結果が出ても安心できないっすし、それにそれは患者様だけの話ではなくてそれに従事するスタッフもまたそうっす。我慢ばっかりは出来ないっす。
もし自分がそうなったら・・・と考えてみるだけで、胸がぎゅっとなると白波は思う。医療従事者もそうでない方も立場は違えど同じ人間なのだ。
そしてこれからだね。収束に向かった後は、やっぱりリハビリだと思うんだ。交通外傷が減ってきた代わりに、廃用が進んで転倒骨折や新型コロナウイルスじゃない肺疾患の増悪、もしくは心臓や腎臓といった慢性疾患の増悪もまた多くなっているのが現状だね。そして感染が蔓延すると入院も難しくなる。
そうですね。感染の報道にマスクされて見えない部分もまた多いです。そう言った方への関わりもまた増えていますし、僕たちの考える事は現状とともにこれから、罹患された方が社会復帰できるような対策や方法ですね。
ふむ!それこそ正にリハビリテーションっすね!その方だけでは無く社会として元の社会へと復帰できるように出来る事も多そうっす!
ふん!と白波は両手をあげる。多分自分はまだ出来る事は少ないっすけど・・・やらなきゃいけない事は沢山あるっす!
山吹薫の覚え書 50
・感染していてもリハビリが必要な人がいる。大切なのは定められたルールの順守。そして出来る範囲で接触は避ける。
・必要なのは心理的な配慮とこれから必要な事を考える。新型コロナウイルスが落ち着いてからが本番かもしれない。
・正しくそれがリハビリテーションだな
※このお話の登場人物は皆フィクションです。現在公開されている新型コロナウイルスの情報(厚生労働省HPや診療の手引き)より抜粋しています。それをご了承の上ご覧くださればと思います。
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
【Tnakanとあまみーのセラピスト達の学べる雑談ラジオ!をやってみた件について】
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【ウチ⭐︎セラ! 〜いまさら聞けないリハビリの話〜】
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