横紋筋融解症の話　その② 　〜続けて生じる様々な病態〜

ふむ。まぁ先ほど話したように外傷性と非外傷性に大きく分かれるのだけど、それだけでも誘引は多岐に渡る。もちろん手足がこわばり動きにくくなる事もまた怖いが、それ以上に続発して起こる様々な症状が非常に怖い。

そうだな。一番有名なのは急性腎不全と呼ばれるものだね。文字通り腎臓が普段の働きが行えなくなる不全の状態になる。腎不全についてはまた今度詳しく話す事として、これは横紋筋が融解する事によって生じる状態がまず関与する。

そうでもないよ。まず筋肉が障害される。そこに含まれるミオグロビン、クレアチニンといった物質が血中に流れ、それが腎臓に到達する。腎臓の役割としてそれらをろ過する訳だが普段の仕事より遥かに多い仕事を強いられるね。それに分子も大きな物質である訳だからミオグロビンや尿酸による閉塞や負担により腎臓はダメージをまず受ける。

もちろんそれだけが原因ではないよ。次に過度に体の中が酸性に傾くと、ミオグロビンはグロビンとヒマチンというものに名前を変える。このヘマチンが腎臓に辿り付き、尿細管で尿酸と結晶となり閉塞やろ過する過程に障害を与える。そしてそれに加えて問題になるのもまた脱水だ。

ふむ。元々の原因が熱中症や脱水症に伴うものもある。それに加えての話だな。横紋筋が何らかの原因で融解や壊死を起こす。そこには炎症自体も関わったり、高エネルギー外傷の際に出血が多いと出血性ショックに伴い血管の中が高度に脱水する。まぁ巡る血が少なくなるという事だな。

血管の中の脱水が起きる。それは血圧を保てないと共に血管の中に存在する酸素もまた体の中の必要な臓器に送り届けられない事を意味する。いわゆる虚血という訳だが、当然腎臓にもそれが起きて虚血に伴い腎不全となる。ヘムタンパクが血管拡張因子のNOを低下させる事も関与されていると言われているな。そしてここで腎不全以外の問題もまた考えることもあるだろう？

それ以外にも組織に蓄えられていた沢山の電解質もまた流出する訳だから、電解質異常に伴う、まぁ高カリウム血症や高カルシウム血症といったところかな。致死的な不整脈で命を落とす事も特に高度の事故では多いと聞くな。他にも腕や足に生じていてそこに過度に浮腫むと時にコンパートメント症候群を起こす事もまたある。そして先ほど上代君が言ったように、多臓器不全、もしくは多臓器機能障害と起こしたり、血管凝固系の働きが破綻し、体の血管の中で後半に血の塊を作ってしまう播種性血管内凝固症を引き起こす。横紋筋融解症自体もまた恐ろしいが、それ以上に今話したみたいな続発する症状もまた恐ろしい。

症状にももちろん高度なものや逆に軽いものもある。その時には尿の色が非常に濃いというか暗褐色にも似た色になるミオグロビン尿からも予測は出来る。他にも細かく言えばキリは無いが、これらはセットにして考えておくのが大切だな。そう考えていればそんな時に過度な運動負荷をかけようとは思わ無いだろう。