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さてと・・・山吹薫はすっかりと分厚くなったメモ帳をパラパラとめくり新しいページを開く。また新しいのを買わなくてはとそう思った。
それじゃぁ人工呼吸器が生命維持のために必要ってことは十分わかったわね。今度はもっと具体的に話を進めていくけど、人工呼吸器も万能ではなくてそこには合併症もまた必ずあると覚えておかなきゃね。
確かに侵襲の大きな治療法は大きな効果もありますが、その点合併症もまた多いと思います。それに普段僕らが行っている陰圧による換気ではなく、外部から空気を送り込む陽圧換気ですもんね。
そうだな。胸腔内が陽圧となることで胸腔の内圧は上昇する。それ自体は生命維持を行うためにも必要なことだが圧が上がることにより相対的といっていいかもしれないが、心拍出量や腎血流量は低下し、頭蓋内圧は上昇する。他にもシャント形成や死腔の増大といった合併症もあると言われている。
そうねぇ。と高橋美奈は頬に手を当て、うむ。と石峰優璃は頷く。どれほど長い時間がお互いの間に存在すればこうも分かり合えるのかと山吹は少し悔しく感じた。その気持ちの出どころはわからない。
そして重要な合併症としてVILIと呼ばれる人工呼吸器誘発性肺障害があり、これはまた説明しようと思うARDSと呼ばれる急性呼吸切迫症候群と同様の病態だと考えられている。これは特に一回換気量およびプラトー圧、経肺圧の異常高値が続くと生じると考えられている。
その原因には高い肺胞内圧と大きな一塊換気量による圧肺損傷、局所的な過膨張による肺サーファクタトの破壊や炎症初見による量肺損傷があるわ。そして極端な換気サイクルに伴い大きく膨らんだり縮んだりすること自体もまた肺に物理的なストレスが生じる。その結果虚脱性の肺損傷が生じたり、炎症による炎症性肺損傷なんて事も原因だと考えられているの。
ふむふむ。そして酸素にはそもそも酸素毒性もまたありますからね。生命を維持するためとはいえ長時間高濃度の酸素にさらされるとそれ自体が体に悪影響を及ぼすこともまたありますね。
つらつらと当然の様に、日常会話の延長戦で行われるその知識のやりとりを見て、時間とは残酷だとも思った。どれほど追い縋ろうとも決して追い越すことはできないのだ。
そしてそれらの結果、全身的に炎症に伴う酸素供給の障害や、菌血症が誘発されることによって今度はMODS、多臓器不全症候群、今では多臓器機能障害とも呼ぶかな。その様な致死的な状態に陥ることもある。
そう。そしてそれらを予防するために医師により人工呼吸器設定は適切に設定されている。でもその状況下で私たちがリハビリを行うことを忘れないで。過度な運動負荷や呼吸練習はその設定以上の負荷をかけてしまうこともまたあると思うの。でもそれは必要なことだから常にモニタリングを意識して、その前傾にあるその設定であるという理由を考えることが必要なの。
何事でもそれは必要なことですね。その治療がなぜ今、どの様な理由で行われているか。それを特に常に行うことが必要ということですか。
そういうことー。と高橋はふんふん。と人差し指を揺らしている。ちょっとだけ古めかしいその仕草はやはり高橋はずっと自分よりも大人だと思いつつ、それは決して口には出すまいと山吹は思った。
山吹薫の覚書 99
・人工呼吸器にはARDSにも似た病態のVILIという合併症が存在しており、それはMODSへとつながる重大な合併症でもある。
・肺自体へのメカニカルなストレスがその要因ともなる。それを予防するために適切な呼吸器の設定がされていることをまずは理解する。
・どれだけ努力をしても経験には勝てないのだろうか。
【〜目次〜】
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