大動脈瘤の話 その① 〜概論と発症に至る原因〜 【山吹薫の昔の話】

大動脈瘤

新人の期間も後三ヶ月。その時には自分はどうなっているのだろうか。そんな事をぼんやりと山吹薫は考える。すると背中を叩かれて眉を潜めて振り向くとそこには同期である進藤守がそこに居た。

進藤 守
進藤 守

よー!どうした浮かない顔をして!さぁ心機一転、俺も一緒に今年は勉強の年にするぜー!

山吹 薫
山吹 薫

なんでそう元気なんだよ。それに勉強を始めるには新年も何も変わらないだろう。

石峰 優璃
石峰 優璃

はっは!まぁ良いではないか。それならば丁度新患が来ている。それを学ぼうか。大動脈瘤の患者だ。

そしていつものようにデスクに足を組んで腰掛ける石峰優璃は笑みを絶やさずにそう答える。いつものような日々であるけれど、山吹は心の中が落ち着かない。

進藤 守
進藤 守

大動脈瘤!しかし様々な疾患はあるけれど何だか心疾患に関しては特に緊張すると言うか・・・そう思いますよね!

山吹 薫
山吹 薫

心大血管の超急性期の介入の殆どは大きな病院での介入となるから、多くの人がしょっちゅう経験していないと言うのもあるな。主任はもう慣れっこじゃないんですか?

石峰 優璃
石峰 優璃

直接的に命に関わる疾患でもあるからな。確かにそうかも知れんがどんな疾患でも当たり前と言う事はないよ慣れてしまうと目も曇る。自分の中のルーチンに組み込んでしまうと、余計なミスもするからそれは注意だな。

むぅ。と山吹は口を噤む。慣れた時が一番怖い。ニヤニヤと笑う進藤を横目で一度見て、言葉を続ける。

山吹 薫
山吹 薫

えぇと、それならば大動脈瘤の話ですね。そもそも大動脈とは心臓を出た後に上行した後に左側へ弧を描き、そのまま脳や腕へと向かう血管、そして腹部から足へと向かう血管に分かれて進みます。もちろん脊髄や腹部の大切な臓器へと枝分かれして進みますね。

石峰 優璃
石峰 優璃

そうだな。その大動脈に瘤が出来る。つまりはコブだな。通常なら20ー25mmの大きさだがそれが病的に膨らんでしまうのが大動脈瘤と言われる。当然そのコブが出来る位置でそれぞれ名前を変える。

進藤 守
進藤 守

つまりは上行大動脈なら上行大動脈瘤、弓部なら弓部大動脈瘤、腹部なら腹部大動脈瘤だし、その間に跨いだ場合には胸腹部大動脈瘤って訳だな。

ふふん!と胸を山吹に向かって張る進藤に山吹はため息を吐く。確かにこいつも勉強している。誰だって前に進んでいるのだと、当たり前の事を山吹はそう思う。

石峰 優璃
石峰 優璃

原因としては完全に解明されていないと聞くが、その多くは大動脈の壁が薄くなる事により生じる。動脈硬化や喫煙、高血圧や高度のストレスといった生活習慣病の延長にあると言われるから要注意だな。介入時にはその症状に加えて生活にもしっかりと目を向ける必要はある。

山吹 薫
山吹 薫

なるほどですね。ならば十分に気をつけるようにな進藤。

進藤 守
進藤 守

そうだな。特に薫からのストレスに関しては十分に気を付ける事にするよ。

互いに目を細めてそう伝えあう二人を眺めながら石峰は柔らかく笑う。穏やかな。いつものようないリハビリ室だと山吹はそう考える事にした。

山吹薫の覚書74

・大動脈瘤はそのコブが出来てしまう場所で名前を変える。

・多くは生活習慣病の延長線上で起こる。

・今日からもいつものような日常だ。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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