大動脈解離の話 その⑥ 〜術直後の介入で必要なこと〜 【山吹薫の昔の話】

大動脈解離

石峰優璃は足を組んだまま、目の前の山吹薫の姿を眺める。自分が新人だった時の事なんて今更覚えてもいないと思った。

石峰 優璃
石峰 優璃

大動脈解離の主に術後のリハビリだが、これはダイナミックに変動する循環動態をモニタリングしつつ段階的に元のADLに戻すことが目標になる。そしてまず術後のリハビリが円滑に進まない問題として疼痛がある。

岩水 静
岩水 静

痛みはとても強い不快な感覚だ。特に開胸術後、開腹術後には

体を僅かに動かすだけでも強い疼痛が生じて起き上がるのも難しい。それに術中は気管挿管されている訳だが、その後の抜管後に痰量も増える。そして咳をしようとしても痛みからそれを自分で止めてしまうことも多い。

山吹 薫
山吹 薫

ふむふむ。術後だから早速離床と言う訳ではないのですね。離床が進まないことよりも痰が出せないこともまた問題ですね。二次的に合併症が生じてしまえば大手術後です。一気に循環もまたあ不安定になってしまいそうです。

そうだよ。石峰は答えつつ、珍しく静かな岩水静に目をやる。きっとこの男も私と遠からずな感情を抱いているのだろう。

岩水 静
岩水 静

よって出来れば術前から胸部をこう両手で包むようにして創部を保護した咳の方法、そして寝返りからヘッドアップした姿勢を取るように練習を行っておく。術後初回の介入でもその方法を確認して何とか自己排痰を獲得する。これを獲得出来るかはどうかで術後のリハビリが円滑に進むかどうかの可否が決まると言っても過言ではないな。

石峰 優璃
石峰 優璃

一気に全介助で離床するメリットも大きいが、それでも患者様自身が自身の力で離床を行おうとするのとではそれは大きく違う。その後の立位ー足踏み、そして歩行と段階的に進めるにも疼痛をコントロールした動作の獲得が必要だな。

山吹 薫
山吹 薫

その時点が既にリハビリテーションですものね、ただ離床をさせるのではなく、自身で離床を行えるように練習を行う。それが術後の合併症を防ぐための第一歩ですね。

ふむ。と岩水は腕を組んでうなずいている。知識は得ても、技術を知ってもそれを実感として感覚として捉えるには長い時間が掛かる。まぁまだ新人だがなと石峰笑みを浮かべる。

石峰 優璃
石峰 優璃

そして再三言うが、リハビリ開始前の状態はあくまで安静時の循環動態や呼吸状態だ。そしてそれらは我々の行う運動負荷によって当然大きく変動する。それらのモニタリングを行いつつ状態に応じてどこまでリハビリを進めるか。それらの判断の多くは私たちに委ねられることが多い。リスクを恐れるのではなく主観的、客観的なモニタリングから管理する。それがリスクマネージメントだと私は思うよ。

岩水 静
岩水 静

まぁその為に客観的なデータと動的なデータをモニター上でもモニタリングを行う必要がある。スワンガンツカテーテルや、フロートラックセンサーによって得られるデータ。動脈圧や人工呼吸器によるパラーメーターなど様々だ。まぁつまりは動的なバイタルサイン測定だな。まぁ励め。

山吹 薫
山吹 薫

何ともまぁたくさんあるものです。だけどもまぁ全体を学んでからしっかり格論も抑えなければなりませんからね。これからもずっと教えてもらいますからね。

言われずともな!と腕を組む岩水は何だか嬉しそうに見える。と石峰はそう思った。私がいつまで教えられるのだろうか。石峰一度首を振り、言葉ではなく笑みで山吹にその答えを返した。

山吹薫の覚書84

・全介助での離床ではなく、自身で起きることも指導した上で離床を進める。自己排痰の獲得も重要。

・安静時のモニタリングにてリハビリの介入の可否を判断し、動的なモニタリング行いつつどこまでリハビリを行うかの判断を行う。

・まだまだ教えてもらうことは沢山ある。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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