熱中症の話 その③  〜誰の身近にもあるその要因〜

熱中症

上代葉月はふむ。と腕を組む。その昔自分がバスケ部だった頃、四六時中暑い体育館の中で駆け回っていて、いつしかずっとこの競技を続けていける。そんな事を考えていた時の事をふと思い出していた。

上代 葉月
上代 葉月

なるほど、熱中症が恐ろしい事は十分にわかりました。そしてすっごい気を付けなければいけない事なのですね。

山吹 薫
山吹 薫

まぁ普段生活している時にも気をつける必要もあるが、過敏になりすぎるのもどうかと思うけどな。そうだな・・・本来体温はどう調整されている?

白波 百合
白波 百合

えぇとまず汗が出るっすね!そして皮膚表面の血管が拡張して外気にあたる事で体を冷やしていくっす。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

車のラジエーターみたいやな。そんで汗はやがて気化してその時に周りの熱を奪うから、それでも体を冷やすんやね。気化熱っていうやつやな!

そして上代は山吹薫から白波百合と坪井咲夜に視線を移す。もともと咲夜は頭が良いけど、百合もしっかり勉強している。負けたくはないなとそう思った。

山吹 薫
山吹 薫

そうだな。それらの体温調整の機構が破綻、もしくは外部の環境によって破綻せざるを得ない状態になった時に体はうつ熱となり、それが進んで熱中症となる。

上代 葉月
上代 葉月

なるほど、ならそう考えると例えば、よく聞くのが発汗する事で水分を失って脱水症状にもなりますね。

白波 百合
白波 百合

他にも塩分が失われて電解質異常が生じるっす!電解質の異常は意識障害にも繋がるっすから大事なことっすよね!

坪井 咲夜
坪井 咲夜

ふむふむ。そう考えると、一時的に体に熱が溜まり種々の体の障害を起こす、タンパク質の編成も含めてやな。そういう事が起こりつつも脱水や電解質異常による障害もあるんやな。熱中症って随分単純に考えていたわぁ。

山吹 薫
山吹 薫

そもそも単純な症状自体は無いよ。それに血管が拡張する事でそこを満たすための血液がより必要となり、相対的に血管内の脱水症状を呈するから本当に多くの事が体の中で起きている。統合と解釈を進める上でも全身の事を考えなければならない。

上代は蒸し暑い体育館の中で、連日練習に打ち込んでいた日々を眺める様に思い出す。流れる汗は止め処ない。だけどもその日々はもう戻らないと思うと少し寂しかった。

上代 葉月
上代 葉月

なら運動している最中は特に、そういう変化が体の中で起こっているって事ですね。だから電解質と一緒に水分を取る必要があって、水分だけを取る事は推奨され無い訳ですか。

山吹 薫
山吹 薫

そうだな。特にそうやってスポーツをする若年者や小児に多い熱中症がそれだな。だからその指導者や見守る人が気を付ける必要が有る。

白波 百合
白波 百合

ふむふむ。でも先輩みたいなスポーツをしない人も熱中症になるっすよね?

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そやな。むしろ病院で見るのは山吹さんみたいな、激しい運動をしない人や高齢者の人が多い気がするわ。

露骨に眉を潜める山吹から視線を逸らし、ちょっと二人共と上代は窘める。白波はへへっと舌を出し、坪井はしてやったりと不敵な笑みを浮かべる。

山吹 薫
山吹 薫

とにかく!特に暑くなってきた時に高齢者において多いのが熱中症、または脱水症で入院することだ。脱水症についてはまた話すが、屋内でも空気が流れずに気温は上がり続け、そして普段から飲水の習慣が無いと容易に熱中症として病院に運ばれる。その時には脱水症として運ばれることも多い。

白波 百合
白波 百合

ふむふむ。体の体温を調整する機構が十分に働か無いというか、働こうにも条件が不十分ってことっすかね?それに家にエアコンが無いご家庭がある処も多いっすから・・・

坪井 咲夜
坪井 咲夜

年々暑くなってるもんなぁ。昔はそれで良かったかもしれへんけど、今はそうとちゃうし、我慢しすぎるのも問題やな。

上代 葉月
上代 葉月

それにトイレに行きたくなくて水を飲むのを嫌がる人も多いからね。

ここで学んでいると凄く心地良い。今はちょっと暑いけど、と上代は思う。だからこそ昔のことを思い出せるのかもしれないと思う。話せば単純だけど、それでもやはり何かを挫折した思い出はあまり良いものでは無い。

山吹 薫
山吹 薫

だから僕らは予防と再発予防という観点で、そう言った患者様に関わらなければならない。単純に家にエアコンなどの設備があるか、飲水の頻度はどうか、そして脱水症で運ばれてくる方の多くは、四肢の筋力が低下していてトイレに行くのも辛いという人が多い。

白波 百合
白波 百合

なるほど夜に眠れない以外にもそういう理由があるのかもしれないっすね!食事にも水分が含まれているっすから、食事量もまた低下しているかもしれないっす。

上代 葉月
上代 葉月

そうか!サルコペニアやフレイルによって生活自体が制限されている人も多いんだ!なら熱中症でも若い人みたいな動いていて発症する人と、あまり活動性は高くなくて、そうなった人なのかを知らないとダメですね!

坪井 咲夜
坪井 咲夜

なるほど。なら再発しないために飲水や食事の指導や、外部環境の調整をせなあかんという訳やな。特に温度に対しての。でもそれってまだ軽症の人の話やんな。

山吹 薫
山吹 薫

そうだな。高度に進むとサーモガードを使用したり、電解質の補正や脱水に対しての対応や元々の原疾患を考慮しつつ介入する。もちろん合併症予防のための離床は進める。そんな話は、まぁもうちょっと勉強してからだな。

上代は確かにそうだと頷く。順を追っての説明は必要だ。それでも山吹さんと進藤さんの昔の話は聞きたい。そう思った。

山吹 薫
山吹 薫

ともかく熱中症は予防が必要だ。そのための情報は調べればすぐに出てくるし、この時期はテレビでも頻回に放送される。だけども、たかが熱中症と考ずに、それが重症化するととても恐ろしいことは理解できたな。

白波 百合
白波 百合

確かにそうっすねぇ。そしてウチらも普段のリハビリに加えて考えなきゃいけないことも多いっすね。

上代 葉月
上代 葉月

そうだね。でもこういう事をちゃんと説明できて知ってもらえたら、それだけでも予防になるかもね。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

ホンマや!知ってるのと知らんとでは全然ちゃうしな!

本当にそうだと上代は思う。だけども私の昔の話はまだちょっとこの二人には内緒だなと思う。そしてふと、百合は山吹さんたちの昔の話を聞いたんかな?そう思った。

白波百合のノート 86

・熱中症は予防が大切!そして特に環境面への関わりが重要!テレビやネットの情報も重要っす!

・再発予防も大切!だけども高齢の方はそもそも体が弱っている人も多いから、リハビリも体調に合わせてつつ、熱中症の怖さもしっかり伝える。

・葉月ちゃんが何やら物思いっす・・・

【これまでのあらすじ】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

【これまでの話 その①】

【これまでの話 その② 〜山吹薫の昔の話編〜】

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tanakannaika|note
理学療法士でパーソナルトレーナーなブロガーです。また動画編集や過去には脚本執筆や演出、撮影、編集など多岐に渡って活動しておりました。楽しみながら学べる『内科で働くセラピストの話』を執筆中。

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