浮腫みの話 その② 〜ヒトはなぜ浮腫むのか?〜

浮腫

上代は大きく伸びをする。いつもに増して休憩室の空気が柔らかい。そう思った。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

つまりは百合のまん丸お顔の原因もまた膠質浸透圧が関与するって事やね?

山吹 薫
山吹 薫

そうだな。まさにそれを体現してる。

上代 葉月
上代 葉月

山吹さん・・そんな言い方は・・・

白波 百合
白波 百合

もういいっす。どちらかといえばその膠質浸透圧ってのが気になってるっすから!

白波はその瞳もまん丸にして山吹を見つめる。上代はそれを見てさながら子犬のようだと思う。思わず頭を撫でたくなる。

山吹 薫
山吹 薫

先ずは血液の動きから復習しようか。心臓から拍出された血液はその圧力で動脈を流れる。そして毛細血管に分散し静脈となって心臓に戻ってくる。その時に毛細血管を流れる時に圧力はゼロになってしまう。

白波 百合
白波 百合

そうっすね!そういえば圧力が無くなっても、心臓に血液が戻ってくるんすか?

上代 葉月
上代 葉月

えぇと・・・筋ポンプ作用という事ですか?

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そうやったね!筋肉が収縮と弛緩を繰り返して心臓に血液を戻すって事やな!

山吹 薫
山吹 薫

そうだな。浮腫予防にふくらはぎの運動をするのも、その効果を期待するためだ。他にも吸気の際に胸啌が陰圧となる事で血液が引き上げられる呼吸ポンプ血管の弾性により押し上げられる事も必要な要素だ。それは静脈に逆流防止弁がある事が重要だな。

へぇ。色々あるんすねぇ!白波は素直に感心している。こう素直に感心できる事はとても凄い事だと上代は思う。そのせいかどうしても世話を焼きたくなってしまう。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

なら足が浮腫むのは足を動かさずに、じっと足を垂らしているからって事なんかな?

山吹 薫
山吹 薫

確かにそれもあるな。そして静水圧、まぁ重力と水分との関係だな。重力に沿って足先には自然と血が滞りやすい。それ故に足を動かさないと血栓に繋がる訳だけどな。先ずは血を滞らないように循環させる。それが浮腫を予防する一つの大切な要因になる。

上代 葉月
上代 葉月

という事は他にも要因があるのですか?

山吹 薫
山吹 薫

そうだな。そこには膠質浸透圧が関わってくる。

白波 百合
白波 百合

あっ!キュウリの浅漬けの話っすね!

坪井と上代は同時に首を傾げる。山吹だけがしっかりと頷いている。

山吹 薫
山吹 薫

そうだな。例えば濃度の違う二つの物質が隣り合わせになると、その濃度を一定にしようと水分が動く。

上代 葉月
上代 葉月

なるほどキュウリと塩との関係ですね。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

濃度の濃い塩分がキュウリと隣合わせになって、キュウリ側から水分が塩の方に流れる事で・・・美味しい小鉢ができるんやな!

山吹 薫
山吹 薫

なんだか料理教室みたいだな。それは細胞間質と血管の間でも似たようなものだな。分子の大きいアルブミン・・・タンパク質の一種だが、それが血管内に多く存在することで、細胞間質から塩分を血管内に引き込む事ができる。

白波 百合
白波 百合

なるほどっすね。血液の流れとそのキュウリの小鉢理論で、血管と細胞間質と水分が入ったり来たりしてるって事っすね!

山吹 薫
山吹 薫

なんだその理論は・・・

ふふんと白波は得意げである。山吹はため息をついている。きっと百合のこういう所が山吹さんが世話を焼く理由なのかなと首を傾げる。

山吹 薫
山吹 薫

後はリンパ管というものが存在する。それは過剰な水分を排泄する機能があるから大まかにこの血液の流れによる圧力、血管内の膠質浸透圧、リンパ管この三つで調整されていると今は考えても良い。

白波 百合
白波 百合

ふむふむ。なんだかややこしくなってきたっす。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

まぁ細かい所は追い追いとやらやな。じゃぁ浮腫むという事はこれらに何か異常があるって事やな。

山吹 薫
山吹 薫

そういう事だな。先ずは血液の流れによる圧力が阻害されるという状況が生じた時だ。流れて行く先の静脈の流れが阻害された時だな。

上代 葉月
上代 葉月

ええと、つまりは良好な流れが阻害される。って事ですね。

山吹 薫
山吹 薫

他にはもちろん血管内の膠質浸透圧が破綻する時だね。血管内のアルブミンが減少したり、普段は通さないアルブミンが血管外に露出する時、後はリンパ管が通り辛くなる時。

ふむふむ。と白波はノートに一生懸命書き込んでいる。少しだけそれを見て見たい気もするが、きっとそれは止めておいた方が良い。そう思った。

白波 百合
白波 百合

ただ単に夜に食べ過ぎたとか、1日座っていたとかそういう話じゃないんすねー。

山吹 薫
山吹 薫

それだけなら浮腫みについてこんなに警戒する事はないよ。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

なんか山吹さんと話してると何もかもがリスクに思えてくるわぁ。

上代 葉月
上代 葉月

ちょっと咲夜!でもそれだけ身体に症状が現れると怖いって事ですよね。

山吹 薫
山吹 薫

そうだな。臆病なくらいが丁度良いんだよ。

ほぉと白波は素直に感心している。この休憩室に来るようになって百合は変わったと思う。それは紛れもなく山吹さんのお陰だとは思うけど、、、と上代は思う

山吹 薫
山吹 薫

自覚症状が現れる時は体が異常を発している証拠だからな。そしてそれに慣れてしまうともっと怖い。

上代 葉月
上代 葉月

自覚症状があてにならなくなるって事ですね。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そやなぁ。明らか苦しいと思ってても本人は以外とどうでもないって言ったりするもんなー。

白波 百合
白波 百合

だから他覚症状が重要なんすね。周りが気がつかないと自分も気がつかないっすから!

坪井 咲夜
坪井 咲夜

アンタ・・・それってワザと言ってるんか?

坪井が尊大な笑顔を浮かべている。上代はそれをチラリと見て、百合と関わっていつか山吹さんも変わるのだろか。そんな事が気になっていた。

白波百合のノート 50

・浮腫には大まかに血液の流れによる圧力、血管内の膠質浸透圧、リンパ管この三つで調整されている。

・これらが破綻すると浮腫む。そしてそこには重大なリスクが潜んでいる。

・自宅症状に慣れてしまう事はいけない。それでも他覚的な症状で気がつける事がある。

・今日は咲夜がやたらと笑っている気がする。

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