まったく困ったものだねぇ。と内海青葉は奇妙に体を捻る。そして視線を上げない山吹薫を眺める。そして我が家のように寛ぐ高橋美奈も横目で見つつ、こちらもこちらで困ったものだねー。とため息を吐く。
まぁ不整脈の話は続けようかなー。そもそもの話だし、どんな話でも共通する事だけど、それ自体の問題というよりも、それが引き起こす事が一番の問題って事だねー。
まぁそうですね。不整脈があるから危険!という訳ではなくその不整脈の結果に生じる症状や病態が危険って事ですね。
確かにそうだわ。そして運動を行う上での問題は、最初に確認された不整脈はあくまで安静時の事って事。そして日常生活でもそうだけど、運動を処方する際にも大切なのが、私たちが関わるのは運動時って事ね。
そうです。健康な人でも運動時には当然脈拍は増える。もちろん増えない事もまた大きな問題ですが、当然確認される不整脈もまた増える。って事ですよね。
もちろん重篤な不整脈を抱える方は安静時でもその症状は出るよねー。だけども発症や症状を自覚するのは運動時や活動時が多いって事をまずは念頭に置いてお話ししようかー。
山吹に何が有ったかはわからないし、聞いても決して話さないだろうなと内海は思う。そんな所ばっかり主任ちゃんに似ちゃってさぁーと内海は体を直角に至るまで大きく傾ける。
そして不整脈の多くはさっきも少し話したけど、不整脈が起因となって心臓が通常通りの働きを行えない。その結果全身の必要な血液を送り出すだけどの血圧が保てない事で生じる症状がやはり危険だと思うよー。もちろんそれだけでは無いけど、その結果として意識を失う。酷い時には心臓自体が止まってしまう。という事だねー。
当然運動する時、言い換えたなら安静時から運動時に状態が切り替わる時には全身に血を行き渡らせるだけの心拍出量は約5倍になります。普段ならその全身に必要となった血液を送り出すだけの血圧が、不整脈によって得る事が出来無い。その結果ですね。だから脈拍の測定とともに血圧の要素もまた必要です。
そもそも不整脈を呈する方は心臓の機能自体が低下している人も多いから余計にね。運動時にちゃんと血圧を上げられるか。不整脈が増えていないか、そもそも運動を処方する際に運動に耐えられるだけの状態かどうか、をまず判断しなければならないわ。運動に耐えられない人は日常生活上でもまず症状が出ているからそのチェックも必要ね。
全ての人に運動負荷試験をするのが理想ですが、そうでない場面も多いですから。それに急性期を脱してしまえば全ての人にモニターを付けて運動をする機会は減りますし、余計に自身の目と周りの目が頼りになります。
山吹は自分の目で自分をどう見ているんだろうねー。内海は口には出さずにそう心の中で呟いた。
そうだねー。動悸や息切れもそうだけど、普段から自分や相手がどんな不整脈で、それがどんな時に酷くなるか、何も運動だけではなく、環境の変化やストレス、といった事でも症状は酷くなるからねー。それに意識消失する事もある。これはすぐに病院を受診だねー。ペースメーカーの適応にもなるからさー。
症状をそのままにしておいて、例えば車での通勤中に発症し事故を起こす。多発外傷の方でも、その背景には高度の不整脈が隠れているという事もありますね。
そうそう!そもそも心臓に出来た血栓が脳に飛んで脳梗塞になった人は要注意!多くは退院後もリハビリを続ける方が多いから、そういう人に運動を処方するには不整脈やそもそもの心臓の働きを知る事が重要ね!そしてそれを共有する。それがリスク管理の第一歩ね!そしてBLSを学んで、いざという時に備える。これはある意味、民間や在宅で運動処方をする際の責任にもなるかもしれないわね。
ですね。なのでそういう方には自分で脈拍を測定する方法をまず伝える事が必要ですし、血圧も一緒に測定する事を指導する。重要な生活指導の一つです。
誰だっていつまで経っても悩む。だけどもそれは前に進もうとしているからであって、必ずしも悪い事ではない。そんな事は山吹は分かっているんだろうけどねぇー。と内海は山吹にかける言葉を探す。
そして大切なのはこれらは加齢により増えて行くという事。そしてそういった方は別の疾患で入院しているという事かな。例えば整形外科的な疾患で入院していても合併症として心房細動があるとかはよくあるよねー。だからボク達が見抜かなければならない場面も多いねー。
全ての方が病気に精通している訳でもないわ。そういった心疾患を抱えてクリニックでリハビリを続けたり、いつも通う整体の先生に相談するといった事も多いわね。
何事も周りの目がまずは必要という事ですね。そして疾患の理解を深める事。きっと僕たちがそういった人に関わった時点で無関係では無くなりますからね。不整脈の有無を知る、不整脈の種類を知り、その程度を知った上でまずは運動に耐えられるかどうかを判断する。運動が可能ならその時の不整脈の程度や血圧の反応を確認する。そして日常生活で自身のモニタリングを指導する。といった所でしょうか。
まぁそんな感じだねー。今回は大まかなお話になったけど、また一つ一つの不整脈を掘り下げていきたいねー。そういうのも懐かしい気分になるんじゃない?
そうですね。と山吹は頭を上げて何処かを見る。それはきっと・・・と内海は一度首を横に振る。相手を知らないとわからない。それは何事も同じなのだ。
まぁ美奈は置いておいて、久しぶりに尋ねて来てくれて楽しかったよー。今度は白波ちゃんも一緒においでー。
そうね!あの娘とまたお話したいわ!まだまだ教えたい事たくさんあるもの!それに・・・普段の薫ちゃんの働きぶりも聞いとかないと!後、普段どんな話をしているかとか・・・それに・・・・
随分と余計なものがついてきてますよ。まぁ時間があれば連れてきますよ。彼女にとっても良い刺激となるでしょうし。
おや?っと内海と高橋はお互いを見る。そして内海は奇妙に体を曲げながら、なんとも触れなくとも分かる事はあるものだ。そう思った。
山吹薫の覚え書 43
・安静時と運動時は大きく違う事をまずは考える。そしてそもそも運動に耐えられる体かどうかをまずは知る。
・生活指導の中には自身の症状が進んでないかを確かめる術を必ず指導する。
・少しだけ昔の気持ちを思い出した。
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
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