それはある日の休日。白波百合と桜井玲奈は二人で母校への道筋を歩く。なんだか学生時代を思い出すっすねぇ。と白波の足取りは軽い。
玲奈ちゃん!ささ!急ぐっすよー!内海先生がお待ちかねっす!
ちょっと白波さん!お待ちになって下さいな・・・
息も絶え絶え付いていく桜井はどうしてこういう事になってしまったのかしらと、ため息を漏らした。それはちょうど昨日の業務後の事だった。
えー!葉月も咲夜も一緒に行かないんすかー?
一緒にって・・・アンタらの母校やろ?ウチら完全に部外者やん!
確かに興味はあるけど、流石にねぇ。二人水いらずで行って来たら?
ちょっと皆さん!私(わたくし)が白波さんと行く事になっていませんか?
業務終わりの更衣室でばったりと出会ういつもの四人。先日訪れた内海青葉と約束した母校訪問に行くという話であった。
確かにその内海先生は興味あるけどなぁ。あの山吹さんと進藤さんの指導者の一人やろ?めっちゃ凄い人か、めっちゃ癖のある人かのどっちやん!見てみたいわ~
まぁどっちもっすかね・・・二人を手玉に取るほど賢くて、お話しするたびに奇妙に体が動く面白い人っす!
奇妙に体が動くって・・・なんだか想像できないなぁ。
え?私の知る内海先生はそれはもう賢くて紳士的な方だったと思いますが・・・
・・・なんや真逆の感想やな。
奇妙な記憶の食い違いに桜井は首を傾げる。でもまぁ卒業してから一度も母校へのご挨拶は行っておりませんし・・・と桜井は渋々白波に同行する事にした。
ささここっすね!内海先生の部屋は!
他の先生方にはご挨拶はしましたし、学生時代はあまりお話しはしませんでしたが、私たちは薫さ・・・山吹さんと進藤さんの教え子でもありますものね!是非ご挨拶しなければ!
二人は内海の部屋の扉を開ける。そして観葉植物を撫でる内海は上半身だけを傾けながらぐるりと振り返り、二人はぎょっと体を固めた。
いらっしゃーい。約束通り母校訪問お疲れ様~。
先日はありがとうございましたっすー!先生もお変わりなくー
随分と私の記憶の中とは違いますわ!いえ・・・ご無沙汰しています。
そうかなぁと内海は二人を振り返り、体を大きく反対側に傾ける。その仕草に白波もまた体を傾け、桜井だけが首を傾げている。
せっかく来てくれたんだし、何かしないとなぁ。そうだなぁ・・・なら一緒にちょっとお話ししようか?かつての新人ちゃん・・・じゃないや山吹と進藤がやったみたいにさー。昔の救急科ごっこだねー。
なるほど!いいっすねー!それで何を教えてくれるんすか?
なんですのそれは!?でも薫様が辿ってきた道ならば望むところですの!
薫様?と首を傾げる白波に、桜井は違いますの!と声をあげる。その二人を見て表情の分からない丸く厚いメガネの奥で内海は優しさに満ちた不気味な笑みを浮かべた。
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
【総集編!!】
【これまでの話 その①】
【これまでの話 その② 〜山吹薫の昔の話編〜】
【時間がない人にお勧めのブログまとめシリーズ!】
【ウチ⭐︎セラ! 〜いまさら聞けないリハビリの話〜】
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