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さて。ともかく人工呼吸器についての理解を深めて早くICUでのリハビリを行える様になりたい。朝の救急科で山吹薫の鼻息は荒い。それを見て石峰優璃は静かに笑みを浮かべる。
今度は人工呼吸器についてさらに詳しく説明していこうか。目的は呼吸と循環動態の安定からの早期離脱。それはまず念頭に置く。そして人工呼吸器の適応となるのは高度の肺炎や心不全、慢性呼吸不全の急性増悪といったといった急性呼吸不全、そして脳幹梗塞や急性薬物中毒といった咳嗽反射消失による下気道保護困難、他にも・・・・
ARDSの出現に伴う難治性低酸素血症や喉頭蓋炎、顔面外傷などの上気道狭窄や閉塞があげらえるわね。つまりは気道自体が維持できずに換気が阻害される事柄や、高度の炎症や呼吸器疾患によるガス交換自体が阻害されていずれにしても生命の維持が困難となる状態に対して人工呼吸器は使用されるの。
ふむふむ。と言うことは広範の脳血管障害に伴って自発呼吸が乏しい場合、もちろん麻酔導入下での術中もまた同じと言うことですね。
そういうことー。と高橋美奈は何処かでみた古めかしいポーズで人差し指と親指を立てて顎先に当てる。そのことに関して山吹は何も言うまいと思った。
そして挿管後、人工呼吸器使用の開始直後は薬物により十分な鎮静・鎮痛が行われる。人工呼吸器自体はやはり痛みや苦痛を伴う。救急搬送時には意識がなかったのなら当然だ。意識が戻ったら喉元に異物があり見知らぬ環境にいるのだからな。十分な呼吸器のサポートの元で呼吸筋疲労を起こさない様に設定もまた検討される。
そうね。そしてそれから原因疾患への治療が開始される。それに伴い酸素化や換気自体の改善、もちろん結構動態が安定してきたのを目安に今度は徐々に鎮静と鎮痛がコントロールされて自発呼吸をサポートする展開になるわ。
なるほど目標はもちろん早期抜管と早期人工呼吸器からの離脱ですが、もちろんその時々によって展開も変わるし僕達が考えることもまた変わるということですね。
そういうことだな。と石峰は腕を組み、ねー!と高橋もまた石峰の顔を覗き込むように体を傾ける。今更ながらこのふたりはいつからここで働いているんだろう。そんなことが山吹は気になった。
そしてその展開に合わせて我々の介入もまた違うと私は思う。ここからはあくまで私の持論だが、人工呼吸器使用開始直後はもちろん評価が中心となる。そして体位ドレナージなど二次的合併症予防が中心になる。ここで積極的に呼吸練習しても患者はやや深めの鎮静下であるし、過度な介入によって不穏やそれに伴う呼吸器との同調困難、ひいては不要な呼吸筋疲労を招く気がするのだ。
それは私も同感ね。そして循環動態が安定して、自発呼吸を温存し呼吸器からの離脱を行う展開になったら今度は可能な範囲で呼吸練習や呼吸の評価、横隔膜呼吸や咳嗽の可否はその後の抜管に向けての介入、気道浄化の点でも非常に有用となるわ。それにこの時点でベッド上座位保持、人によっては離床の指示が出ることがあるからここからは私たちの腕の見せ所ね。
なるほど。今はどのような治療展開なのかはチームで話し合いつつ医師の意向も確認する。何よりも自分自身である程度状況を理解できる様にしておく。と言うことですね。
わかってきたじゃないと。高橋は山吹を真っ直ぐと見る。しかしその瞳は山吹の心の奥を覗く様に静かに揺れていた。まるで評価をされている様だと山吹は思った。
山吹薫の覚書98
・人工呼吸器管理時には開始時と離脱開始時の二つに分けて介入すると考えやすい。
・呼吸器使用下での呼吸器評価はその後の治療展開に有用な情報となりやすい。
・この二人は一体何歳なのだろうか?・・・いやそれは聞かないことに使用。
【〜目次〜】
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