【山吹薫の昔の話】終末期に向かう話 ③ 〜終末期と緩和ケア〜

終末期

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なぜ終わりを考えてしまうと、始まりを考えてしまうのだろうか。どこか透けて見える石峰優璃を眺めつつ、山吹薫はぼんやりとそう思った。

石峰 優璃
石峰 優璃

終末期ケアではリハビリを行うことが必要だと話したな。終末期で行われるケアとしてならば、他にも種類がある。緩和ケアとは聞いたことがあるか?

山吹 薫
山吹 薫

なんとなくですが。ガンを患う患者様が痛みや苦痛を和らげるような治療と理解していますが。やはり漠然としていますね。

石峰 優璃
石峰 優璃

当たらずとも遠からずだな。緩和ケアの定義は2002年にWHOによって定義されていて、「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチ」とされ、確かに日本のメディアでよく聞く緩和ケアはガンに罹患していることが頭に浮かぶ。しかし国際的に見れば緩和ケアがガンに特定されるわけではないのだ。

山吹 薫
山吹 薫

なんだか意外に思えます。終末期といえばガン・・・というイメージが強いような気がしました。

そうか。と石峰は言葉を区切る。そして一度目を伏せる。朝日が透過し、毛先が柔らかに細い髪が揺れた。

石峰 優璃
石峰 優璃

ともかく全てに共通する点として、緩和ケアとは患者と家族の苦痛を予防し、和らげることを目的としたケアであること。加えて、終末期に限ったケアではなく生命を脅かす疾患に罹患した時から対象となる。とされる。終末期に限ったケアではない。というところが一つのポイントであり、ガンが対象ではないということだ。すべての疾患に可能性はある。しかし、治療方法の発展から早期のがんであれば昔と違い治癒することもケースも増えてきているとされるからな。

山吹 薫
山吹 薫

だからこそガンだけではないのですね。しかし以前がん、悪性新生物の死亡率は高く、僕のように他の疾患よりも・・・死に繋げて考えてしまいます。

石峰 優璃
石峰 優璃

そうだな。ガンを患うと迫りくる死や人生の終わりを感じる。今の山吹みたいにどうしても死のイメージが強い疾患だ。そのために強い精神的な苦痛を感じる。心身ともに生じる苦痛が自身や患者家族を苦しめ、QOLを阻害してしまうのだよ。その苦痛を緩和するためのケアであるのだ

緩和する。こんなにも優しい響の言葉なのに、胸が締め付けられ優しくも悲しい響きに聞こえた。言葉のひとつひとつがこんなにも優しさに溢れているのに、先にあるのは死であるからか、山吹はわからなかった。

石峰 優璃
石峰 優璃

具体的には、といってもプロトコルが組まれているわけでもなく、やはり目の前の患者に寄り添うことが大切だと思うよ。病状の早い時期から積極的な治療と並行して行えるとされることが、終末期ケアとの概念としての違いかな。痛みや苦痛を和らげ、死を早めようとしたり遅らせようとしたりするものではないとされる。

山吹 薫
山吹 薫

死を遅らせる・・・というより遠のかせるためにリハビリをしている自分としては、まだ受け入れ難い考え方です。率直に言って。

石峰 優璃
石峰 優璃

素直じゃないか。生命を肯定することがまず必要で、生きていくということには死が含まれるということを理解する。心身ともに通ずるようにケアが必要であり、その中で自分自身として受動的ではなく能動的な生き方を選択できるように、我々の知識が必要となることも多い。多いと私は信じたいな。

なっ?と石峰の笑みはいつものようであって、それでいてどこか救いを求めるような弱々しさを白い肌が映し出していた。いつまでも眺めていたいと思いながら、すぐにでも目を背けたい。山吹はそう考えた。

山吹薫の覚書110

・緩和ケアの定義は2002年にWHOによって定義されていて、「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチ」である。難しい・・・

・死を受容しつつ自分自身で能動的に生きることが必要とされる。

・ガンが対象となることが多いが、ガンに限って緩和ケアがおこなれるわけではない。

【〜目次〜】

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