【山吹薫の昔の話】終末期に向かう話 ⑤ 〜それぞれへの終末期〜

終末期

【心揺さぶるストーリー!理学療法士×作家のタナカンによる作品集!】

小説の中では様々な背景や状況、そして異なる世界で生きる人々の物語が織りなされます。その中には、困難に立ち向かいながらも成長し、希望を見出す姿があります。また、人々の絆や優しさに触れ、心温まるエピソードも満載です!

心揺さぶるストーリー!理学療法士×作家のタナカンによる小説!|tanakannaika
 感動と感慨が交差する物語の世界へようこそ。理学療法士で作家のタナカンが贈る心揺さぶる小説の作品集を公開します。  私は理学療法士としての経験と知識を糧に、日々の出来事や人々との触れ合いから生まれる命なストーリーを創り出してきました。その筆致は繊細かつ力強く、登場人物たちの心情や葛藤を鮮やかに描き出します。  小説の中...

全人的な痛みとはどのようなものか。眉間に皺を寄せても答えはでない。ただ悩む山吹薫を石峰優璃は眺めている。まるで山吹の瞳の奥で繰り返されている問いから、答えを探すように。

山吹 薫
山吹 薫

終末期ケアと緩和ケアを教えてもらいましたが、似て非なるものなのに、同じだと考えてしまいます。

石峰 優璃
石峰 優璃

まず目的を整理しなければならない。何事も本来の意図を失ったまま学んでも道に迷うだけだ。緩和ケアは苦痛を和らげること、そして終末期ケアは穏やかに過ごせるようにケアを行う。という目的の違いがあり、何よりも期間は緩和ケアは比較的長い期間だが、終末期ケアは、終末期を迎えてからだから短い。そして終末期ケアよりも短い期間で行われるケアがホスピスケアと呼ばれる。

山吹 薫
山吹 薫

ホスピスという言葉がよく聞きます。実際に働いたことはないのですが、ガンを患った患者が最後を迎える場所と理解しています。

石峰 優璃
石峰 優璃

そうだな。日本のホスピスケアはガンを中心に発展してきたと言われている。そのせいでもあるだろう。今はガン以外でも適用されている部分が増えていて、入所だけではなく在宅サービスや、デイケアなど地域に根ざしたケアが増えてきているんだ。

多くの死を目前としたサービスが増えている。死という言葉はもはや生きていくということと同義にも感じた。あくまで自分の中ではあるのだけど、と山吹は思う。

石峰 優璃
石峰 優璃

ホスピスケアを整理していこうか。数ある終末期のケアにおいてお最も期間は短いとされる。それは余命が短いことが明らかになってから開始される。つまりは生命の危機に瀕している患者が身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな苦痛。前に少しだけ話した全人的な苦痛。というものだな。その苦痛から解放されて尊厳を保ちつつ安楽に過ごす。とされる。米国では自宅で暮らす重症患者を支援するためのプログラムもある。とのことだが。調べてみるといい。

山吹 薫
山吹 薫

全人的な苦痛からの解放という言葉がまた出てきましたね。そして患者本人と家族の苦痛を最小限にするために支援するということですね。

石峰 優璃
石峰 優璃

痛みと苦痛は似て非なるものだと思うよ。そして加えてホスピスケアとは違い最も長い期間になるのがエンドオブ・ライフ・ケアとされる。時期はいつからだと思う?

山吹 薫
山吹 薫

名前を聞く限りはそんなに、長くないとは思います。しかし・・・後期高齢者からでしょうか?

ふふん。と石峰は腕を組む。そして『間違ってはないが正しくはないな』と薄い唇を片方だけ上げた。言葉は山吹に届く前に、朝日に溶けていく。

石峰 優璃
石峰 優璃

死について考えるすべての時間。とされている。確かに高齢になればなるほど死を意識するが、必ずしもそうではない。こう定義もされている。『診断名、健康状態、年齢にかかわらず、差し迫った死あるいはいつか来る死について考える人が、生が終わる時まで最善の生を生きることができるように支援すること』ある意味、そういった社会作りにつながる考えとも言えると思う。

山吹 薫
山吹 薫

常に死を身近に考えるということですか?気が滅入る人もいるでしょうね。

石峰 優璃
石峰 優璃

だが人にとっては生の延長線上で、死は平等に訪れる。死を迎える場所は病院か家かの二択でもない。在宅系の施設もまた増えてきているし、家族での過ごし方もまた様々だ。画一的ではなく様々な過程の生活に合わせた終末期におけるケアを行う体制作りが必要。ということだな。まぁ私には何ができるとは思えんが、気に留めておくことはできるよ。

山吹 薫
山吹 薫

想像できませんよ。主任が死んでしまうことくらいに。想像できません。

石峰 優璃
石峰 優璃

私だって人間なんだがな。それくらいは許してほしいものだよ。

石峰は困ったように組んだ足に肘を乗せ、頬を支えて完成された笑みを浮かべた。心の中を覆い尽くしてしまうような笑みだった。

山吹薫の覚書112

・終末期に関わるケアは時期によって別れる。また目的も同じように異なる。

・死は常に誰にも訪れると他人事のようには考えない。そして多様化する生活の中で自分や家族、そして他人ともそれぞれの生活の変化に合わせたケア体制の確立が望まれる。

・いつも彼女は完成された笑みで、言葉を奪ってしまうのだ。

【〜目次〜】

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