石峰優璃の本の中 ⑧ 〜思い出の選択〜

総論

【心揺さぶるストーリー!理学療法士×作家のタナカンによる作品集!】

小説の中では様々な背景や状況、そして異なる世界で生きる人々の物語が織りなされます。その中には、困難に立ち向かいながらも成長し、希望を見出す姿があります。また、人々の絆や優しさに触れ、心温まるエピソードも満載です!

心揺さぶるストーリー!理学療法士×作家のタナカンによる小説!|tanakannaika
 感動と感慨が交差する物語の世界へようこそ。理学療法士で作家のタナカンが贈る心揺さぶる小説の作品集を公開します。  私は理学療法士としての経験と知識を糧に、日々の出来事や人々との触れ合いから生まれる命なストーリーを創り出してきました。その筆致は繊細かつ力強く、登場人物たちの心情や葛藤を鮮やかに描き出します。  小説の中...

目の前に座る、新人を終えようとする彼は真剣な眼差しで私を見ている。

奥底に深海を思わせる深い藍色をのぞかせる彼の瞳から、私は思わず視線を逸らした。

逸らしたところで彼は見つめ続けるのだろう。私との別れの気配を感じながら、それでいて認めたくないという思いで、彼は見つめている。

ふと、最後に海に行ったのはいつだったからを考えてみた。

ずっと幼い頃だ。物心がついていたかも怪しい。海風で揺れる髪、じっとりと塩気を纏う毛先に父が触れた。母も隣にいる。

ただ顔は景色に溶け込んだ、陽炎のように揺らいでいる。

両親の顔が思い出せないというのか、子として許されないことなのかもしれない。

思い出せない訳ではないのだ。思い出そうとしたら思い出せるのだろう。

ただ私もまた逃げている。写真の中で互いにわずかな隙間を開けて並ぶ、造花に囲まれてむせかえる線香の香りもまた思い出してしまうから。

もし、両親と死別しなければ、私もまともに育っていたのだろうか。

人らしく、先輩らしく、他人の死に囚われることなく、そして誰よりも自分の死に囚われずに生きることができたのだろうか。

正しくはあるが正解ではないなと私は苦笑する。

「何を笑っているのですか?まだ話は続くのでしょう?」

彼は言った。始業までは一時間以上ある。

始業まで続く彼との会話はきっと、私の記憶に残り続けるだろう。

結ばれた口元とシワを寄せる眉間。少年の面影を残した整った顔立ち。

覚えておこうと思った。せめて救急科のリハビリ室と差し込む淡い朝日と一緒に覚えておこうと私は決めた。

「さぁ続きを話そうか。痛み・・・についてだ」

【〜目次〜】

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