坪井咲夜の暇な時 その② 〜昔の話と昔からの話〜

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今日は何だか災難やったなー

坪井は大きく伸びをしながらそう思う。帰り道はすっかりと暗く夜はすっかり長くなっている。

家に帰り着いてしまうと昼間の喧騒はどこへやら、すっかりと夜に飲み込まれてしまう。

先日、百合が余りの自分の不甲斐なさに泣きだしてしまった事件。そして山吹さんが珍しく我を失っていた事件。

正直それは楽しかったと坪井は思う。

そのまま放っておこうかと思ったけれど、それで二人が仲を違えてしまう方がもっと面白く無くなると思い、沢尻に連絡を取ったのだが。

失敗やったかなー・・・と坪井は床にその身を広げる。

でも・・・と坪井は考える。

あのチャラいだけの人類はどこか得体が知れないとも思う。

決して悪い意味ではないのだが、本音と建前が大きく隔てられている。

そんな気がした。

そしてきっとその渦中にあるのはあの不器用な鉄面皮の先輩なのだ。

嘆かわしいと、坪井はさらにその身を広げる。

あの大切そうな黒猫のマグカップもすっかりと古ぼけているから、ずっと昔の話なのだろう。

たぶん。ここに来る前のずっと昔の話。

そしてきっとあの鉄面皮の先輩はそれをずっと引きずっている。

たぶんもっと複雑な、ずっと根深い話なのだ。

百合も百合であれやしなぁ・・・

と坪井の頭はさらに重くなる。

百合とはここに就職してからの付き合いだけど、なんだか放っておけない危うさもある。

それもきっと昔の話なのだろう。いや昔からの話だ。

ウチもウチで人の事ばっか考えている暇はないんやけどなぁ。

そう思いつつ坪井は天井を見上げる。灯りは広がり部屋を照らしていう。

それでも友人が傷付くのは見たくはない。

これもまたきっと昔からの話なのだと坪井はそう思う。

皆んなが皆んな鈍い痛みを引きずるものなのだ。

さてさて、どうなる事やら。

坪井咲夜は再び伸びをする。暇な時ほど余計な事を考えるものだ。

そう言って立ち上がった。夜はどんどん長くなる。

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