【腰椎圧迫骨折の話 その⑥ 〜どうやって生活を営むのか〜【白波百合とリハビリテーション】】

圧迫骨折

最近やたらと薫さんが昔話をするものだから心配になって来たものの・・・と沢尻はふむと山吹を眺める。

白波 百合
白波 百合

とりあえず車椅子になんとか起きれそうっすね!

山吹 薫
山吹 薫

まだやってもないだろうに。それに車椅子に起きれるのがゴールではないからな。元々家で歩いていた人だろう?

白波 百合
白波 百合

そうっすね!なら直ぐに歩く練習をした方が良いんすか?

山吹 薫
山吹 薫

それもそうだが、リハビリ時間以外の事を先ずは考えなければならない。

白波 百合
白波 百合

ほう!

見ている限りはいつも通りだけど、と沢尻は思う。しかし元々自分の事は話さない上に自分の感情もまた表に出さないのだから困ったものだと沢尻は思う。

沢尻 悠
沢尻 悠

そうそう。リハビリを1日1時間するとして、睡眠時間を除いても15時間前後は病棟での生活だからね。そこで寝たきりになったら元も子もないからねー。

山吹 薫
山吹 薫

そうだ。だからと言って病棟に車椅子に起こす事を頻回にやってもらうとしたら、それはもはや病棟スタッフにリハビリをやってもらう方が良い。

白波 百合
白波 百合

確かにそれはそうっすね・・・あっなら沢山車椅子に起きてもらえるようにリハビリ頑張るっすね!

沢尻 悠
沢尻 悠

それもそうだねー。そして手っ取り早いのが起きる習慣をつけるということだねー。食事の時に起きるようにするとか、先ずはそこからかもねー。

はてさて自分が薫さんにこうやって教えて貰ったことがそもそもあるのか・・・無いなと沢尻は目を細める。何だかんだでムッツリ助平だったのかと更に思案する。

沢尻 悠
沢尻 悠

移乗に必要な力の入れ具合とか方法を病棟に伝えて、毎食時に離床を行う。そしてご飯を食べることが大切!食べやすい環境が必要だねー

白波 百合
白波 百合

ふむ!ご飯を美味しくするってことっすか?

山吹 薫
山吹 薫

なんともまぁ当たらずともってやつだな。例えば食事を取る時に下からこう箸を口に運ぶだろう?でも車椅子の高さが低すぎたら上から口に箸を運ぶことになる。そしたら不思議と腕は疲れる。腰にも負担が掛かる。そうしたら車椅子に起きてご飯を食べようとも思わなくなる。

白波 百合
白波 百合

確かに無理してご飯を食べに起きるのは苦痛っすよね・・・

確かに百合ちゃんはまっすぐで可愛いもんなーこれなら毎日話したくなっても仕方が無いなぁ。と沢尻は思う。その役を変わって欲しいくらいだねー。と心の中でそう呟く。

山吹 薫
山吹 薫

食事と一緒に次に歯磨きだとが洗顔といった整容動作にも同時につながるから、車椅子に起きておく環境の設定もまた必要だな。

白波 百合
白波 百合

なんか段々と自分で出来ることが増えてくるっすね!

沢尻 悠
沢尻 悠

そうそう。だけども最初から全部自分でやってもらうんじゃなくて、最初は申し訳ないけど看護師さんを呼んでもらってやってもらうのが一番かな?そしてら看護師さんや介護士さんも自分の目で見て確認できるしねー。

山吹 薫
山吹 薫

勿論認知症の影響でそれが出来ない人もいるから、そこは病棟と相談する事が必要だから忘れないように。

白波 百合
白波 百合

うっす!自分たちだけで考えてたら結局病棟の負担にもなるっすから、それにそうなってしまったら結局患者様にも負担になるっすからね。

それに百合ちゃんは育ちも京都のそれなりの家柄らしい。なんともまぁ羨ましい話だと沢尻は思う。だけども薫さんは結局そんな事を考えていないんだろうなぁと結論付ける。

白波 百合
白波 百合

こうやって少しずつご自分で出来る事を増やしていくんすね。

山吹 薫
山吹 薫

勿論リハビリと並行してだよ。座るのが難しければ座る練習、立ち上がるのが難しければ立ち上がる練習。そして痛みの程度を見ながらそれぞれの動きに必要な筋力や関節の動きを増やしていく。

白波 百合
白波 百合

なるほど!そうやって難しい動きの練習とそれに必要な機能の練習を並行して、先ずは病棟の生活に繋げるんすね!

沢尻 悠
沢尻 悠

そうそう!みんなのためになるリハビリテーションだねー!何だかんだで患者様が元気になっていく姿はみんな嬉しいもんねー。

結局のところ、薫さんを縛っているのは過去の話なんだろうと思う。そしてきっと目の前の後輩に過去の自分の姿を見ていると沢尻はそんな気がする。

山吹 薫
山吹 薫

そして病棟での車椅子離床が落ち着いてきて、移乗も少しずつ安定してきたら次はトイレへの誘導を行う。最初から手を離して下衣を操作するのは難しいから、これも少しずつ練習する必要がある。

白波 百合
白波 百合

そしてそれがどこまで出来るかを病棟に伝えて、リハビリと並行して病棟で出来る事を増やすんすね!

沢尻 悠
沢尻 悠

そうそう良い感じー!だけどここら辺ではちょっと注意だねー。できる事が増えてくると誰でもそれを自分で試そうとするものだから、病棟内での転倒のリスクもまた増えてくるんだよー。

白波 百合
白波 百合

確かに成る程っす・・・それは恐ろしい話っすね・・・

山吹 薫
山吹 薫

そうだ。だからそのリスクも共有したり、患者様に念押ししたりする。

白波はコクコクと何度も頷いている。百合ちゃんはこうも前向きなのに薫さんは何て後ろ向きなんだろう。と沢尻は一度ため息をつく。だけどもきっとそれだけの事があったのだろうとも思ってしまう。

山吹 薫
山吹 薫

まぁ先ずは病棟生活を落ち着けるための介入も僕は必要だと思っているが、一例だから参考にするように。その人に寄って十人十色で全く違うからな。

白波 百合
白波 百合

そうっすね!そのための自分たちっすもん。

沢尻 悠
沢尻 悠

良い事を言うねー。まぁ病棟生活の中で介護が必要だとやっぱり自宅での生活を考え直す一つの指標にもなるからね。頑張って!

うっす!と白波は透き通る声で返事をしている。さてさて薫さんの昔の病棟生活はどうだったのか。途切れ途切れの話だから良くは分からないけど、今度めいいっぱい酔わせてみよう。そんな事を沢尻は考えた。

白波百合のノート 64

・リハビリで行った事は病棟生活に反映させる。出来る事を少しずつ増やす。

・病棟での活動性が上がってきたら要注意!転倒のリスクも増える。

・何が出来るかまとまってきたらちょっと安心。

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