急性期と回復期のリハビリの話 その②  〜変わりつつあるリハビリの考え方〜

リハビリ

なるほどですわね・・・と桜井玲奈は腕を組む。多くは無いけれど確かに起こる回復期病棟での急変。自分だけが頑張れば良いと思っていましたけど、それは違う気がしますわね。とまっすぐと進藤守と沢尻悠を見つめる白波百合の珍しい真剣な表情を見てそう思った。

沢尻 悠
沢尻 悠

なら話をちょっと変えて、まずはここでリハビリの種類を簡単におさらいしてみようかー。

桜井 玲奈
桜井 玲奈

なぜ今更ですの?・・・と言いたい所ですが何か目的があっての事ですわね。良いでしょう。まずは中枢疾患のリハビリテーション。これは脳血管障害に主に行われますわ。多くは麻痺した腕や足の機能の改善や、その手足を使っての動作の練習といった所ですわね。そして骨折や変形性疾患に行われる運動器のリハビリテーション。これも低下した運動器や手術の後に改善していく運動器の機能の改善と、それを用いた日常生活の動作の練習が行われますわね。

白波 百合
白波 百合

そして呼吸器のリハビリテーションっすね!これは多くは肺炎などの呼吸器の治療に並行して効率的な呼吸の練習や痰を出すお手伝い、そして低下した体力の向上を行うっす。他にも心大血管疾患のリハビリテーション。これも様々な治療に並行して徐々に運動負荷を上げながら発症や手術の前の体力や動作を目標に行われるっす。それら全てのリハビリに共通するのが生活指導や動作の指導といった所っすかね。

進藤 守
進藤 守

そして理学療法以外にも作業を通して心身機能の改善を図り生活全般や高次脳機能障害を主に介入する作業療法や、飲み込みや言語機能を通して自宅や社会生活に関わる俺がやっている言語聴覚療法かな。透析をされる患者様に関わる腎臓リハビリテーションや、糖尿病や低栄養に関わる代謝性疾患に対してのリハビリテーションもある。細かく言えばキリは無いけれど、大雑把に振り返るとこんな感じだな。

ですわね。と桜井は指を顎先に当てる。日々リハビリテーションの世界は広がり続けている。そんな中でも良く見る方法はこんな所だろうと思う。

沢尻 悠
沢尻 悠

そうだねー。そして脳血管障害や骨折などの術後は経過も長くなりやすいし、回復期病棟でリハビリをされる方も良く見るよねー。だから回復期病棟で多く行われるのは中枢疾患や運動器のリハビリテーションとも言えるねー。

進藤 守
進藤 守

そうだな。そして一般病床や急性期では、脳血管障害の発症直後やや手術前後のリハビリ、それに加えて肺炎や心血管障害のリハビリとも言えるな。そして単純な肺炎でうまく合併症予防や廃用症候群予防が行われたら早期に退院となるし、たとえ心臓外科手術後でも現在では早くて10日以内に退院となるプログラムもある。保存療法だとしても服薬の調整がついて症状のコントロールが付けば、そのまま急性期から自宅に退院となる事も多いな。

白波 百合
白波 百合

ふむ。それでも自宅に帰れ無い人はそもそも、自宅で生活出来ないと判断にもなるっすから、悲しいけど別の転帰先となる事も多いっすね・・・たくさんリハビリする事自体が負担となってしまう。そして自宅で診るには病状が重すぎるって事っすかね・・・

桜井 玲奈
桜井 玲奈

ならば中枢疾患は麻痺した機能の改善となるとやはり長期間のリハビリが必要になる事が多いですから、やはり回復期病棟を経由して退院という事になりますわね。それに運動器疾患の手術後も筋力の回復や侵襲のあった組織の回復を考えると、中長期的な介入が必要ですので回復期病棟でのリハビリが必要となる事も多いですわね。もちろん軽症ならば急性期より退院して通院となる事もあるのでしょうが・・・

進藤 守
進藤 守

そうだな。だけども例え身体機能は軽症であってもそこに高次脳機能障害やワレンベルグ症候群など、高度の嚥下障害を来しているとやはり回復期病棟での入院加療となる事もある。あくまでケースバイケースだがな。あくまで多くの例としてという認識で話を進める。という事だな?沢尻。

だねーと沢尻は何度かコクコクと頷く。いつものような軽薄な表情でありながらちょっと違いますわねと桜井は思う。この人は実は思慮深い事は知っている。だからこそ油断なりませんわ!と桜井はそうとも思う。

沢尻 悠
沢尻 悠

ざっくりとリハビリテーションの種類と多くのその進み方をおさらいした所で質問だよー。特に高齢者において単純な一つの疾患を患っているなんて事は多いのかなー?

桜井 玲奈
桜井 玲奈

それは・・・違いますわね。高齢者になればなるほど患う疾患の数は増えていきますの。心不全やCOPD、慢性腎不全といった方もいらっしゃいますし、脳血管障害を患うという事は、そもそも代謝性疾患や不整脈、弁膜症といった疾患を元々患っている事も多いですわ!

白波 百合
白波 百合

それに市中肺炎としても誤嚥性肺炎も増えているっす。そしてそこには元々脳血管障害を患っていて嚥下に障害を抱える方もいるっす!心不全で入院される方もまた腎不全を患っている方も多いっすね。そして多くの高齢者は変形性膝関節症や以前に大腿骨頸部骨折の手術後といった運動器疾患を患う人も多いっすね!・・・って事は・・・

進藤 守
進藤 守

そうだな。まぁ俺が言うのもなんだが、例えば俺らが臨床やそれ以外でリハビリや運動を処方するとして、中枢疾患のリハビリテーションや運動器疾患だけのリハビリテーションだけを提供して良いものなのかな?

その言葉に桜井と白波は一度口をつぐむ。私達はいる臨床はそれだけ容易く進む場所ではない。改めてそう思うのは白波さんも一緒だろうとそう思う

沢尻 悠
沢尻 悠

一昔前は卒後3年経ったら自分の進む道を決めるなんて事も言われてたけどねー。まぁ山吹さんの言葉を借りるなら「カルテをまともに読むのに2-3年は掛かるのに大層な事だな。」との事だね。まぁこれはオレが言われたんだけど・・・まぁオレの予測だけどきっと薫さんも昔誰かに言われたんだろうねー

進藤 守
進藤 守

まぁそれもまた極論ではあるだろうけどな。まぁそんなセリフを吐くだろう人は予測はつくし、その人も大層極端だからな。だけども俺たちは学ぶ事はたくさんあるんだよ。本当に。

桜井 玲奈
桜井 玲奈

確かにそうですわ・・・今までは漠然に考えていましたけど、言葉にしてみるとやはり目を背けたくもなりますわね。

白波 百合
白波 百合

自分は・・・確かに先輩は一つの分野だけを教える事なんてしなかったす。バイタルサイン測定の基礎の基礎から様々な分野のリハビリの基礎を教わった気がするっす。だから・・沢尻さんや進藤さんの言いたい事は凄く分かるっす。

沢尻 悠
沢尻 悠

まぁあの人は不器用なのはそういう所だねー。まぁとにかくならばオレ達は何をすべきなんだろうねー。と偉そうに話しといて殆ど薫さんの受け売りとオレの持論だけど、まぁもう少しだけお付き合いくださいなー。

ヒラヒラと不真面目に見えるように手を振る沢尻を見て、貴方はなぜそんな軽薄な風に見えるようにするのかしら?と首を傾げる。まぁ薫様には全然敵いませんけどね!と桜井は薫様が来るだろうドアをもう一度眺めた。ドアは未だに静かなままでふぅ。と漏らした息は僅かに漂い空中に溶けた。

白波百合のノート 122

・リハビリには様々な種類がある。そしてそれらは目的は一緒であるがそこに至る考え方や手法は異なる。

・高齢者は様々な疾患を患っている。当たり前であるけれど、それはリハビリを行う上で重大な問題となる。

・先輩は自分に何を伝えようとしているのだろう。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

【総集編!!】

【これまでの話 その①】

【これまでの話 その② 〜山吹薫の昔の話編〜】

【時間がない人にお勧めのブログまとめシリーズ!】

【ウチ⭐︎セラ! 〜いまさら聞けないリハビリの話〜】

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