しかし・・やっぱりみんなの負担にはなるよね。と内海青葉はいつもと変わら無いような表情を浮かべる山吹薫と、目を泳がせながら不安げに表情を変える白波百合を眺める。それはボクだってそうかな。そう思う。
ならコロナウイルス自体の事は話はしたけど、その重症度分類なんてのも診療の手引きには書かれているね。だけどこれはあくまで医療従事者、主に医師がこれらの基準を鑑みて判断し診断するのねー。それをしっかりと念頭に置いてから話を続けようか。
そうですね。しっかりとした臨床の経験と知識で判断されないと、無駄に不安な気持ちになったり更なる混乱を招きますからね。そこは要注意でしょう。
ふむふむ。そうっすね!みんな大丈夫でも不安になるっすから。
そうだね。と内海は体を直角に倒しながらそう頷く。自分はあくまで知識として知っていて、先生・・・岩神 築先生から聞いた話だから全てを伝えられるかは不安だね。そう思う
その重症度分類は飽和酸素度、多くは血中酸素飽和度だね。その値と臨床症状で規定されてるね。それは死亡例が呼吸不全が多いために、息切れなどの基準を踏まえて書かれているの。
なるほどですね。でも検査の値はあくまで相対的ですし、その時々や個人差もある。なのであくまで医師の診察の元判断しなければなら無いですね。
確かに。でもテレビなんか見ていると自分で測定して重症化を間逃れたって事も聞くっすから、やっぱり不安は不安っすよ!
そうなのだ。全てが分かっている訳ではないから恐ろしい。もちろん分かっていたとしても恐ろしいものではあるが
まずは軽症の場合。これは酸素飽和度が96%以上で、呼吸器症状がなく、息切れはないけど咳は出るって状態だね、この多くは入院の必要はなく、自然軽快するけれど、急速に症状が進行する事もあるんだよね。もちろん基礎疾患の可否の影響もあって、それが考えられる時には当然入院が必要になる。
そうですね。全ての人を入院するのが、心因的にも安心かもしれませんが、全ての病院で対応が可能・・・とは言い難いでしょうね。機材やスタッフの問題もある。それに専用の病棟を用意するというのも簡単には行かないでしょう。
そうっ・・・すよね。専門の病棟を作るという事はそこに入院されている方や、入院する予定の方を別の病院や病棟に移って頂く必要性があるって事っすよね。それは現実問題として本当に難しいと思うっす。
ふむふむと内海は頷く。先生から聞いた話では、先生はその専門の病棟でリハビリをしているという。それにしてもまだ現役とは恐れ入ると内海は思う。
そして中等症の1、は飽和酸素度が93%~96%で息切れや肺炎の所見がある状態。この状態では入院する必要があるんだけど、もともとCOPDなどで慢性的に低酸素症の人は呼吸困難感を訴えられない事も多いらしいね、そして中等症のⅡでは飽和酸素度が93%を下回って酸素投与が必要な状態になった時という事だね。呼吸不全の原因を推定し、高度な医療。ICUを有していたり機材が揃っている病院への転院を検討する必要があるという事だね。
人工呼吸器やECMOといった人工心肺の利用という訳ですね。しかしこれらは対症療法であるという事も念頭に置く必要がありますね。呼吸や循環を人工的に維持する。その間に呼吸不全の原因を除去するという訳ですが、これらを利用したからといって、それで症状が必ず軽快する都いう訳ではなさそうですね。
そうなんすね・・・でもそれを使用するくらいに状態が悪い、もしくは元々悪かった病状が高度に進行するって事っすよね。慢性的な肺疾患や心臓の疾患も・・・それに誰しも直ぐに使えるという訳でも無いっすもんね・・・ウチらだって経験しないと知っていても出来ない事が多いっすもん。
そうだねー。日々その業務に携わってチームとして上手く機能している事が大きな条件かもねー。もちろんチーム医療という事かなー。先生もそう言ってたなー。
先生・・・という言葉に山吹は首を傾げている。そうかー山吹ちゃんは知らないねー。と内海はそう思う。山吹が来る前、主任と共に講義をよく受けた。主任の先生だから結構なお歳だなぁと内海は思う。
そして重症・・・これはICUに入室する必要があって、人工呼吸も必要になるのね。これには二つの型があって、まずはL型、肺のコンプライアンス、柔らかさと言い換えても良いかもしれないけれど、これが正常で肺が膨らみやすい状態。そしてH型は肺水腫の増強からそのコンプライアンスが低下し、高度の呼吸不全やそれに移行していく状態かなりシビアな状態という事だね。
なるほど、肺が膨らみにくいからといって、高い圧で酸素を与えるという訳にもいきませんからね。気管や肺の障害を招く事もありますから。そして前に紹介されていたのが腹臥位療法も有効とされていますね。
腹臥位って事はうつ伏せになるって事っすか?
そうだねー。でもそう単純じゃない。ボクらのうつ伏せと高度な医療で全身状態管理したでのうつ伏せは訳が違うんだよねー。様々な負担がかかる事は想像出来るでしょ?ICUでの腹臥位これにもまた訓練されたチームが必要。状態の管理もまたそうだし、デバイスや色々考える事があるのさー。腹臥位療法の話はまた今度しようかねー。
うっす!と白波は返事をする。そう。その訓練されたチームもまた大きな問題なんだよね。と内海は思う。これほど状況が変わる中でそれほど高度に訓練されたチームは多くは無いだろうと思う。
まぁ最後にも言っておくけど、これはあくまで基準であって症状は当然変化するのね。その時々での判断は医師によるけど、決して自己判断せずに相談する事がまず大事だと発表されているし、それは僕もそう思う。
そうですね。血中酸素飽和度の数値は指が濡れているだけ、手足が冷えているだけでも低く出ますから、様々な要因を元に検討は必要です。
そうっすね・・・それで自分たち、リハビリスタッフにも出来る事はあるんすか・・?
不安そうに白波は首を振る。それに内海は頷いてみせる。『リハビリはね・・・医療だよ。歩ける歩けないとかそういう話ではない、生きる為の治療手段の一つだ』岩神先生が昔そう言っていたのを内海はなんだか思い出した。
山吹薫の覚え書 49
・基準に関しては医療従事者や医師によって判断、診断されるので専門家にまずは相談する。
・症状は常に移り変わる。合併症の併発も当然あるからその原因の追究が必要。もちろんその際に自分の身を守る。
・我々にも出来る事はあるのだろうか・・・
※このお話の登場人物は皆フィクションです。現在公開されている新型コロナウイルスの情報(厚生労働省HPや診療の手引き)より抜粋しています。それをご了承の上ご覧くださればと思います。
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
【Tnakanとあまみーのセラピスト達の学べる雑談ラジオ!をやってみた件について】
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【ウチ⭐︎セラ! 〜いまさら聞けないリハビリの話〜】
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