それで・・・こんな遅くにまたどうしたんだ？
ん？いや可愛らしい後輩のために是非ご指導を頂こうと思ってな。
こんな遅くにすみません！って山吹さんと百合もまだ残っていたんですね！
ちょっとあの後に気になって・・・先輩に腎臓の事を教えてもらっていたっす！
なんだ。と上代葉月は笑みを浮かべる。やっぱり考える事は同じだったんだと、まだまだ元気な白波百合と、僅かに疲れている山吹薫を見比べる。そして進藤守はというと・・・なんだかさっきと変わらない。
それじゃぁ。腎臓の正常を学んだから、次はその異常・・・特に腎不全について学んでみようか。そもそも腎不全とは・・・なんだ？山吹？
結局僕にまた話させる気だろう・・・良いよ。まずはこう言った病名の時には不全と機能障害と大きく二つに分けられる。機能障害とは可逆的な、元に戻る可能性のある障害の時に使われる言葉だ。不全とは不可逆的な、一度起こってしまった変化が、限りなく元に戻る可能性が低下した時にも用いられる事が多い事を念頭に置いた上で話を進める。
確かに・・・確か多臓器不全という言葉よりも最近は多臓器機能障害という言葉に変わりつつありますし、、、言葉の整理は大切ですね。
ふむふむ・・・それなら腎不全はなんらかの原因によって生じて・・・・腎臓の機能が著しく低下した・・・って感じっすかね？
首を傾げる白波に上代はそうだね。と返事をする。こうやって一緒に何かの問題に対して努力ができる仲間が一緒にいる。自分は恵まれているなぁ。そんな事を実感する。
ふむ。まずは腎不全もそうだが、急性と慢性に分けられる。呼吸不全もまたそうだな。横紋筋融解症の合併症に代表される急性のもの。これは多くは可逆的な機能障害だな。血中に放出された腎機能の低下を来す要因、多くはCK（クレアチンニンキナーゼ）や高度の脱水だが、これはそれらの要因の改善に伴い改善する事も多い、よってそれは腎不全というよりも急性の腎機能障害だな。
ふむ。今回百合ちゃんの受け持つ患者様もそうだったな。機能は改善する。しかしそれに時間が掛かる事もあって、廃用症候群予防を主とする俺たちのリハビリでも完全に廃用を予防する事は難しい時もある。まぁそれからのリハビリで改善する事も多いがな。
そうだったんすね・・・でも改善するなら・・・元の生活に戻れるななら・・やる事も沢山っす！
うん！私たちだってきっとやる事もまた多いんだから！
うっす！と白波と向き合い頷き合って、上代はなんだか小さい事を悩んでいたなぁと首を横に振る。誰かの患者様だからと言って自分一人で何とかしなければならないという事は無い。
そして急性では無く慢性。様々ある要因の中で、多くは生活習慣による所もあるのだが、長らく続いた機能障害が不可逆的に慢性化する事もある。その一つが腎不全だな。簡単にいうと、疾患に伴うか慢性的な生活習慣病の罹患に伴い、腎臓の中で血液をろ過する糸球体が十分にその機能が果たせずに腎臓の機能が落ち、結果として老廃物を十分排泄出来なくなる。これをそれは腎臓の働きが正常の30％以下になると腎不全と言われる。慢性化すると腎機能は回復が困難となる。
急性と慢性・・・長らく患っていると少なからず体へのダメージはどんどん溜まっていって、何れは治る事すら難しいという事なんですね・・・
でも全部が生活習慣病って訳でも無いかもしれないっすからね・・・腎臓自体の炎症だったり仕方が無い事もまたあると思うっす。
まぁ腎不全になったからと言って、何も出来ない訳でも無いよ。腎代価療法、いわゆる透析だな。そう言う治療で変化したとしても、日常の生活は続けられる。
進藤がそう纏めると呆れるように山吹は額に手を当て首を左右に振る。この二人もまた色んな過去を経て今に至るのだなぁと上代はなんと無く思う。
それで、まぁどのような症状が出るかというと、ろ過が難しくなる事から、当然排泄が困難となる。また腎臓の機能である電解質の再吸収に伴う電解質の調整が難しくなる。それに造血を促すエリスロポエチンの分泌が低下して貧血となり、逆にレニンという血圧に関するホルモンは過多となり血圧は上がりやすくなり、かつ調整が難しくなる時もある。そして活性型ビタミンDが十分に合成出来なくなるために骨折しやすくなる。まぁざっとこれらが一般的な腎不全の症状とされる。
なるほど、本来の腎臓の機能が分かっていればその逆が障害となりますもんね。だけど・・本当に沢山の症状ですね・・・
そうだな。それに関連して日常生活上でも様々な事が起こる。貧血を体感しなくても、過度に疲れやすくて疲労が取れなかったりする事もまた多い。それに電解質の調整が上手くいかない、特にカリウムの排泄が上手くいかないと、不整脈を感じて致死的な不整脈に繋がる事もある。それに関しても食事制限が必要となり、低栄養も合併する事もまた多い。
やっぱりこうやって考えてみると沢山、生活が制限されてしまう事も多いんすね・・・そうすると気持ちの面でも落ち込んでしまうっす・・
その言葉の裏で、きっと白波は今受け持っているあの娘の事を考えているんだろうなぁと上代は思う。そして一度息を吸う。
大丈夫。多分私はあの子の気持ち分かるよ！私は昔怪我をして、大切な大会に出れなかったの。だから・・・気持ちは分かると思う。今度ちょっとだけお話ししてみようかなと思うの。
えっえっ！いきなりどうしたんすか！？・・・でもそれなら・・・葉月も無理しちゃダメっすけど、ありがとうっす・・・・ささ！それなら先輩！もっと自分らに沢山教えるっす！
なんだか情報量が多いが、なんだか良い光景だな。
結果として僕がまた沢山話す事になっているがな・・・
上代は心地良くなった空気を大きくもう一度吸う。過去にまつわる悩みは・・・口に出す事でこんなにも軽くなるんだな。そんな事を考えた。
上代葉月のルーズリーフ その７
・腎臓の障害が慢性的に続き事で、慢性腎不全となる。腎不全とはこの事を指す事が多い。
・様々な合併症が出る。それは日常生活に大きく作用する。
・過去は向き合って言葉に出す事で、なんだか軽くなる。
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
【Tnakanとあまみーのセラピスト達の学べる雑談ラジオ！をやってみた件について】
雑談で学べるラジオも好評放映中！たまにはまったり学んでみませんか？
【時間がない人にお勧めのブログまとめシリーズ！】
【ウチ⭐︎セラ！ 〜いまさら聞けないリハビリの話〜】
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