大腿骨頸部骨折の話 その⑥ 〜歩けるためにやるべき練習〜  【白波百合とリハビリテーション】 

大腿骨頸部骨折

まったく心配して来てみれば、お節介な先輩だねぇ。と沢尻悠は進藤守を見る。まぁそれは自分も大して変わらないんだけど、と沢尻は両手を腰に当てる。

沢尻 悠
沢尻 悠

さてさて!それではいよいよ創部の治癒に合わせて疼痛の鑑別をしながら、体重を掛ける練習をする!そしてそれに合わせて歩く練習をする!もちろん脱臼肢位の指導も含めながらね!

白波 百合
白波 百合

おっす!体重を掛けても大丈夫と患者様と一緒に気持ちを共有しながらっすね!

進藤 守
進藤 守

そうだな。不安感が軽減して段々と動けてくると食事もまた進むからな。何もせずにベッド上でずっと生活していたら空くはずのお腹は空かないさ。

はっと白波は両手をお腹に当てて顔を僅かに赤くし、ヘへへと笑った。まったくこんな可愛い良い子を放っておくなんて薫さんも酷い男だねぇと思いつつ、その山吹薫の気持ちも分からなく無いと沢尻は思う。

沢尻 悠
沢尻 悠

まず体重を掛ける練習をする前に大切な事は、座っている姿勢を見る事だねー。当然座っている姿勢はそのまま立っている姿勢になるし、立っている姿勢はそのまま歩く姿勢になるのさー。だからまずは座っている姿勢を見る事が重要!

白波 百合
白波 百合

確かにそうっすね!立てば芍薬座れば牡丹!歩く姿は何とやら!っすね!

進藤 守
進藤 守

随分と古風な言葉を知っているな。痛みはどうしても避けてしまうし、座っている時にも無意識に体重を掛けるのを避けてしまう。そんなもんかもな。

沢尻 悠
沢尻 悠

重要な事だよー!特徴としては、いつもは足と足がくっついて座れている人でも、足と足の間が開いていて、そして体が手術をしていない方の足に傾いているって感じかなー?そのまま立っても当然、手術をしていない方に体が傾いてしまうよー。

ほうほうと白波は自分の足の位置を整えている。沢尻はそんな姿を眺めつつ、この子は何でも先入観なく自分の知識や技術としていく。それ自体は素晴らしい事だけど危なかっしい事でもある。

白波 百合
白波 百合

確かにそうっすね!ならまずは座っている姿勢から手術をした方の足に体重を掛ける練習もするっす、そして鏡なんかを用いながら自分の姿を確認してもらって、足と足をくっつけた状態で立ち上がってもらうっす!

沢尻 悠
沢尻 悠

そうだねー!それは最初は難しいから手すりや平行棒を持ったまま練習してもらうと良いよー!そして気を付けの姿勢で立てるように練習をする!この姿勢を取るだけでも手術した方の足に体重は乗ってくるよー

進藤 守
進藤 守

なるほどな。そしてその気を付けの姿勢から手術してない方の足をちょっとずつ上げていくのも良いな。最初は一瞬でも足を開いた状態で、かつ手術をしていない方の足に体が傾いた状態で体重を掛ける練習をするよりも、ずっとやりやすいと俺は思うよ。

誰かに教わる事に慣れてしまえば自分で考える事を忘れてしまう。よく聞く言葉ではあるけれど、本当にそうかなーと沢尻は思う。それはきっと教える側の問題であって学ぶ側の責任では無い。

沢尻 悠
沢尻 悠

立っている姿勢が整って来たらすぐに歩く!という気持ちにはなりやすいけど、その前に気を付けの姿勢のまま、手術してない方の足を踏み出す練習もやっておくとなぉ安心だねー!

白波 百合
白波 百合

ふむふむ。確かに体を前に進めるのは大変っすもんね!支える力が十分では無いとお尻あたりの筋肉に過剰に力が入ってしまうっす!

進藤 守
進藤 守

でも最初から何も支えが無い状態で立っていたり、歩き出すのは怖くないか?

沢尻 悠
沢尻 悠

そうだよー!だから足への荷重量を考えつつ平行棒から歩行器、杖といった風に支えを少しずつ減らしていく。そして支えが無くなってから、この人に関しては元の歩き方を思い出していくって感じかなー?そんで支えが無くなってから元の歩き方の練習をやるのがポイントだとオレは思うよー。たとえ杖を使っていてもそれは杖を使った歩き方であって、元々の歩き方ではないからねー。

多分、薫さんは白波ちゃんが自分の後ろ姿しか見えなくなるのが怖いのだろうと思う。一人でこの世界で生きて行くのが怖くなるから。相変わらず困った先輩だと沢尻は腕を組む。

白波 百合
白波 百合

確かに元々の歩き方や体重の掛け方を思い出すのは重要っすね!やっぱり手術の後の十分に体重を掛けられない期間でその感覚は忘れてしまいそうっすもん!

進藤 守
進藤 守

感覚とは容易く変化するものだからな。それに十分な栄養を取っていたとしても筋が働かなければ筋肉も合成されない。よって手術していない方の足ばかり使っていると、片方の足だけが鍛えられてしまうな。

沢尻 悠
沢尻 悠

そうそうー。それに手術していない方の足の膝や足首、股関節だったり痛くなることもあるから、術後の回復に合わせてどれだけ早く元々の歩き方を思い出してもらうかがポイントかなー。だけども時間が掛かることが多いから長い目もまた必要かもねー。

まったく自分の後しか見えなくなるだなんて傲慢だなぁと沢尻は目を細める。百合ちゃんは薫さんとは違うんだし、隣に立って違う視線で生きて行くことも出来るだろうに。

白波 百合
白波 百合

という事は・・・術後は手術による侵襲の影響を念頭に置きつつ、合併症予防のための早期離床を行って、創部の回復に伴いつつ段階的に体重を掛けながら元々の歩行を思い出していく。もちろん、その元々の歩き方に問題がある時にはその歩き方の指導も行う!こんな所っすかね?

沢尻 悠
沢尻 悠

そしてそこからは回復期の病棟で生活に合わせたリハビリを行う。それはウチの後輩ちゃん達の分野だねー!

進藤 守
進藤 守

まぁ俺らの場所で十分な基礎や自宅に帰るまでのリハビリに専念できる状態を作るという事だな。

沢尻 悠
沢尻 悠

そういう事ー!

向けられた人差し指に白波は大きく笑みを作って一度頷く。この子はきっと大丈夫だろうと思うしかし薫さんのかつての指導者がきっと、薫さんを今の様に育てあげ、そして今の薫さんにしてしまったのだろうな。・・・一体何者なんだ?沢尻は腕を組んで空になった山吹のデスクを眺めた。

白波百合のノート 100

・歩く姿勢はまず座っている姿勢から!段階的に進めて体重のバランスを取っていく。

・歩行は目標だけども、生活を考える!そしてその多くは回復期病棟で行われる。

・先輩早く帰って来ないっすかね・・・・

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

【総集編!!】

【これまでの話 その①】

【これまでの話 その② 〜山吹薫の昔の話編〜】

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