石峰優璃の本の中 その⑤  〜私が消える時に残るもの〜

総論

それを知ったのは何度目かの検診の日だった。特に今までそんなことは無かったから随分と医師も不思議がっていた。

精密検査を受けてください。その言葉を最初私は理解出来ずに、はぁと間抜けな声を出したものだった。しかしその時ですらこの小柄な私の体の中にはそれら育って行っており、体の中へと病魔はその手を伸ばして行っていた。

あぁ・・・そんなものか。

それを知ったとしても私の中に浮かぶ感情はそんなものだった。そうだから別段混乱もせずにそれからの日々も過ごした。それからどうなるかも分かっていたし、いよいよ悪くなる前に普段の生活を送ろうと、その時には潔く死を迎えよう。そんなことすら考えていた。

しかし・・・今ではそれがどうしようもなく怖く感じる。

それはきっとこの病棟で出来たチームのせいであったし、そして少なくとも山吹薫のせいだとも想った。

もしこの世から私の全てが失われてしまった時、この世に私の何が残ろうのだろう。そんな事が不安になったのだ。今まではそんなことを考えていなかったし、どうせ死んだら何もかも無になるのだからと下らない。そんなことすら考えていたのに。

人は不思議なものだと思う。その日々で互いに影響を与えながらその心は容易く変化する。

その変化は成長と捉える事もまた出来るのかもしれない。

それでもそれは少なからずの恐怖もまた私の心の中に浮かび上がらせる。

今まではきっとそれらに無関心だったのだな。私は自分を自嘲する。

誰にも関わらずに自分一人で生きてきた。生きようとしていた。

それが今は酷く寂しく感じてしまっている。

私がどこかに消える時、彼は何を考えるのだろうかと思う。

そしてせめて少しでも私の残したものが彼の中で生き続けるのなら。

なんだかそれで私の一生はそれで良い・・・そんなことすら思えた。

【〜目次〜】

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