上代葉月は、進藤守を眺めながら、こんなに勉強している人でも分からない事がある。そんな言葉になんだか安心していた。
これまで腎臓の体液調整、ホルモンによる血圧を初めとした種々の体の恒常性の調整を話してきたけど、なんとなくイメージがつくかな?
はい!とにかく沢山の役割を担っていて、そしてそれだけ多くの仕事をしなければならないと思いましたー!
そうかと進藤は笑みをつくる。その真意は分からないけれど、決して悪いものではないんだろうな。そう上代はそう思う。
そして腎機能の障害の有無は多くは検査結果で分かる。多く用いられるのはクレアチニンという検査の値だな。全ての場所で確実に検査されているとは言えないが、それでも重要な検査結果となる。
なるほど、確かに腎機能の検査結果で、もし腎機能の低下が見られるなら・・・例えば先ほどまでに話していた体液の調整が上手くいっていない、血圧の調整や、赤血球を造る働きや、骨を造る働き、それが低下するとも言えますもんね。
そうだな。異常を知るにはまず正常を。多くは正常の状態の逆が当たり前だが異常という訳だからな。そしてその正常が目標となる。そしてそのクレアチニンは、筋肉で産生されるのだが、そのほとんど全てが本来なら腎臓より代謝される。もちろん筋肉量の多い人はそれだけ値も高く出ることもあるが、多くの腎機能が低下する患者様は高齢者である事からも臨床では有用な検査になる事も多い。
なるほどと上代は相槌を打ちつつ、この進藤さんにも、もちろん山吹薫や白波百合にだって過去はある。そして過去は過去のものではなく現在にもまた繋がる過去なのだと思う。
そして一つはクレアチニンの増減を確認する事が腎機能自体のモニタリングにも繋がるし、血清クレアチニン濃度から、年齢と性別を考慮して推測される値が推定糸球体濾過量(eGFR)となる。この値が上がっていると腎臓の濾過量が低下している。つまりは腎臓の機能が低下していると考えらえるね。
ふむふむ。やはりちゃんと生化学検査を見ることは大切ですね!
見えない部分を観るために必要な方法だからな。それに同じく尿タンパクの量を観ることもあるが、生化学検査を全てに定期的に取るのは多くは急性期ということが多いから、確かな検査だけど全ての臨床で確認できるという訳ではない。
そう・・・ですよね。回復期でも何か異常が起きた時に状態を確認する。そういう事が多い時がありますね。そういう時はどうすると良いのでしょうか。
そうだな・・・と進藤はアゴに手を当てる。この語るのが苦手と言いつつ雄弁な先輩はどんな過去から今の先輩になったのだろう。上代はそんな事が気になった。
まずはやはり尿量だろう。排泄の量自体が減る。もしくは普段より濃く感じる。これは限度もまたあるが、とにかく腎不全へと繋がる原因、多くは生活習慣病だけど、急性期の得に高度の脱水に繋がるような病状があった場合、横紋筋融解症でもそうだが、得に確認する必要がある。
その臓器の持つ本来の役割が行えなくなる・・・それ自体がその臓器の障害を示唆するもの・・・という事ですか?
良いじゃないか。そういう事だな。それに体液の調整が難しくなると体は浮腫む、それに伴い体重も増加する。他にも体の中の恒常性が崩れると食欲不振や吐き気も出てくる。そして大切なのはそれだけの症状では腎機能が低下している以外にも多くの疾患が隠れている事もある。だけども腎機能を示唆するような背景がある場合にはアセスメントに繋げる事も大切だ。
過去は繋がって現在の自分へと繋がる。それが例え良いものでも、そして今尚続く傷だとしても、これからは決してそうだと確定している訳ではないのだ。
まぁとにかく腎臓に関する疾患にならない事も必要だな。バランスのとれた食事と運動、まぁ生活習慣病が普通の腎臓病には役に立つし、こまめな水分補給もまた必要だ。極端に脱水となるとそれで腎障害を来すこともあるが、まぁ普段生活する上では問題とならない事もある。
脱水症状は腎障害に繋がるのですものね。得に高齢者では注意しなければならないと思いました。
食事や水分摂取も特にそうだし、指導する必要も当然ある。嚥下能力との関連もまた必要だが、塩分の摂取や動脈硬化に繋がるようなバランスの悪い食事もまた直すように指導は必要だ。微小な血管で腎障害を起こしているという事は他の血管系の疾患もまた来す事もあるから、腎障害の方を受け持つ時は他にも障害があると考えて運動を提供する事もまた必要だな。
それに・・・と上代は思う。自分が経験した過去だからと言って、その状況であるあの娘が、自分と同じような過去を背負う必要もまたないのだ。
なるほど・・・確かに生活習慣病を起因とするならば単一の疾患だけを患っているとは確かに考えられませんね。腎臓の障害だからそのモニタリングを行いつつ運動を提供する。だけどもそこには心臓や他の臓器の疾患もまた隠れている可能性もあるのですね。
それもまた難しい事なんだがな。だからこそ生活の中でのセルフモニタリングが必要ではあるし、そもそも俺たちが臨床にいる間に指導しなければならない。そのためにはまぁ。お互い・・・勉強だな。
そうですね・・・ちなみに進藤さんや山吹さんはどんな勉強をしてきたのですか?
それは・・・まぁいつか話すよ。大した事ではないからな。
ふふふ。と上代は笑みをつくる。こんなに雄弁な先輩でもこんなにも自分の事を語るのは本当に苦手らしい。ちょっと前進かな。頭も・・気持ちも・・・上代は急に無口になった進藤の前で髪を揺らした。
上代葉月のルーズリーフ その6
・腎機能は尿量やeGFRを確認する。
・生活習慣病を背景とするならば、他の血管系の疾患が隠れているかもしれないから運動負荷時には要注意!
・過去を過去のままにしなきゃいけない、訳ではない!
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
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