血圧測定の話 その① 〜そもそも何を測定するのか〜

血圧
山吹 薫
山吹 薫

という事でさっそくだが・・・血圧とは何だ?

白波 百合
白波 百合

いきなりっすか!?えぇと・・・

白波は顎に手を当てふぅむと唸る。去年から臨床に出て働き出している訳だけど、学生とは違って改めてこう尋ねられる事はなかった。書類はどうか、運動器の所見はどうか。そう言ったことばかりだった気がする。

白波 百合
白波 百合

心臓がぎゅっとなった時に出る血液っす。こう動脈の中をとってドバーっと血が流れるっす!

山吹 薫
山吹 薫

ふむ。誰もがそう思うな。では医療従事者の発言としては?どう表現する?

波はムッと口を三角にする。まるで自分が医療従事者じゃ無い風な言い分っすね!尖らせ他唇をいくら山吹に向けようとも肝心の本人は文献から顔も上げずにそう尋ねた。

白波 百合
白波 百合

心臓が収縮することで拍出される血液の圧っす。

山吹 薫
山吹 薫

うん。それは収縮期血圧の事だな。血圧はそれだけを測定するのか?

白波 百合
白波 百合

そして拡張期の圧力は拡張期血圧っす!

山吹 薫
山吹 薫

ふむ。心臓が拡張していても血液が拍出されるのかな?不思議なものだな。

白波 百合
白波 百合

・・・・・・?

首を傾げる白波。山吹はようやく顔を上げると唇を片方だけ上げ笑って見せる。しかし無駄に整った顔をしているっすと白波は一瞬目を丸めたあと、表情を元に戻す。

山吹 薫
山吹 薫

そもそも心臓が拡張期の時に大動脈弁はどうなっているんだ?そもそも心臓が拡張しているのに血液が拍出されるのは変な話だとは思わないか?

白波 百合
白波 百合

それはとっても変な話っすね・・・

白波は目に見えて肩を落としている。山吹はそれを横目で見て、なんとも分かりやすいものだと思う。しかし少し言いすぎたかと額に手を当てる。どうもこう言った後輩は扱いに困ると首を一度振る。

山吹 薫
山吹 薫

・・・という風にしっかり理解しないとこういう風に先輩にいじめられる事になるからしっかり勉強しないとね。

白波 百合
白波 百合

・・・・もう虐められてるっす。

白波の絞り出した小さな声は山吹には届かない。西日が休憩室に長い影を落とし始めている。

山吹 薫
山吹 薫

まずは一番よく見る二つの血圧から勉強しようか。収縮期血圧の理解は一応はそれで良いよ。

白波 百合
白波 百合

はいっす。心臓がギュッとなって血がドバーッと流れるっすね!

山吹 薫
山吹 薫

正確には心臓から拍出される血液が血管を押し広げる力だから、これはまぁ概ね一回拍出量になるな。あくまで一回拍出量である事は覚えておく様に。

白波 百合
白波 百合

一回拍出量・・・聞いた事がある様な無い様な言葉っすね・・・どう言う事っすか?

山吹 薫
山吹 薫

一回拍出量であって、それは決して心拍出量を観ている訳ではないって事だよ。考えれば分かるだろう?

白波 百合
白波 百合

・・・・・?

白波は再び首を傾げる。山吹は構わず続ける。

山吹 薫
山吹 薫

そして拡張期血圧は、その名の通り心臓が拡張している時の血圧なんだけれど、”拡張された血管の収縮時に血液を押す圧力”なんだよ。

白波 百合
白波 百合

ふぅむ・・・先生!イマイチよくわかんないっす。

山吹 薫
山吹 薫

先生では無い。心臓から拍出された血液が血管を押し広げるのがいわゆる
収縮期血圧だろう?

白波 百合
白波 百合

はい。心臓がぎゅっとした時に血管が広がる圧っす。

山吹 薫
山吹 薫

うん。そしてそれで広げられた血管は元に戻ろうとするから、その時に、
元に戻ろうとする血管に押された血液が、さらにその先の血管を押し広げる圧力が拡張期血圧ってことだ。だから心臓が拡張期でも、収縮していなくても血が留まる事なく全身へ供給される訳だな。

ちょっと待ってください。と白波はそう言い両手の人差し指をそれぞれのこめかみに当てぐるぐると回す。

白波 百合
白波 百合

心臓がぎゅっとして、出てきた血液の圧が収縮期血圧で、それでバッと広げられた血管がぎゅっと縮む時に出す圧力が拡張期血圧と言うことです・・・か?

山吹 薫
山吹 薫

まぁ。そんな感じだな。よく理解出来たな。誰しもが知っている事ではあるけどな

白波 百合
白波 百合

むー褒められているのか貶されているのか全然分かんないっす!。

山吹 薫
山吹 薫

もっと言うと、一回拍出量に心拍数を加えて心拍出量とし、それに更に末梢血管抵抗を加えて、初めて血圧の測定となる訳だけどな。

0白波 百合
白波 百合

・・・今、ウチの事、褒めてくれたばかりっすよね!?いや、そうでは無いっすか・・・

山吹 薫
山吹 薫

褒めてはいない。収縮期血圧と拡張期血圧の理解が漠然だとこの先が理解できないからな。その確認だ。特に心不全の患者のリハをしている時なんか、運動負荷後に血圧が正常だとしても、何も考えていなければ平気でリハビリの結果として、心不全が増悪する。何て事も起こりかねない。

白波 百合
白波 百合

それは・・・怖いっすね。

 

山吹は白波の目をまっすぐと見る。なっなんすか!と白波は体を固める。もう急にそんな真面目な顔をしながらこっちを見るなんて何を考えているか全くわからないと思う。

山吹 薫
山吹 薫

それはとても怖い事だよ。なので次は血圧測定で何を考えるかを考えようか。

白波 百合
白波 百合

・・・なんかウチが悩めば悩むほど喜んでません?

ふん。と山吹は口角を片方だけ上げつつ僅かに笑みを作りながら何も答えず文献に目を落とした。

白波はそれを口を尖らせながら、先輩の弱みを早々に探さなければと考える。

~白波百合のノート②~

・収縮期血圧=心臓が収縮した時の圧力 

・拡張期血圧=押し広げられた血管が血液を押し出す圧力

・血圧が正常範囲内でも運動時には注意する。

・心拍出量(一回拍出量×心拍数)×末梢血管抵抗=血圧

・先輩の弱みを探す。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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