心不全の話 その③  〜緩やかに進行する心不全〜 【山吹薫の昔の話】

心不全

それにしてもこの子たちは何だか似ているなぁ。と高橋美奈は、向かい合ってあれこれ臨床の事を話す石峰優璃と山吹薫を見つめる。

石峰 優璃
石峰 優璃

つまりは急性心不全は心筋梗塞などの虚血性心疾患に伴い、高度の息切れや時には意識消失を伴って発覚する。よってその急性心不全を呈した病状によってリハビリもまた変わる。ならば慢性心不全もまたあるが、それはどういう事だ?

山吹 薫
山吹 薫

言葉の整理をするならば、急激に病状の進行が見られるもの、もしくは呈したものは急性となりますし、緩徐に病状が進むのが慢性とも言えると思います。いずれも病状の速度は別にして、進んでいるという認識が僕は大切だと思いますね。

高橋 美奈
高橋 美奈

そうよねぇ。いわゆる慢性心不全は、病状の程度を問わずに状態がほぼ一定している場合を指す事が多いわ。だけども程度は本当に様々で、例えば心不全を呈していて、ある程度活動度が保たれている人もいるし、日常生活の中で着替えるのでも息が切れる人だっている。だから慢性心不全だからといって、完全に病状がコントロールされているって考えるのもまたリハビリをする上で、危険な事だと思うわ。

その通りですね。と山吹薫は顔を伏せる。何かを考えているようであり、石峰はまるで姉のような笑みでその姿を見つめる。もし本当にそうだったらよかったのにね。と高橋もまた笑みを浮かべる。

山吹 薫
山吹 薫

たとえ慢性心不全といっても、その心不全に至った原因はあります。それが過去の心筋梗塞だったり、弁膜症、高度の生活習慣病の延長線上にある動脈硬化、様々ですね。

高橋 美奈
高橋 美奈

それだけでもないわ。その時になんらかの治療歴があったりもする。長い期間をかけて、心臓のバイパス術や人工血管置換術、心臓外科手術を受けたとしても、その時までの障害により長い時間をかけて心不全にもなったりするわ。

石峰 優璃
石峰 優璃

そうだな。その週末として心不全があるのだから、生活指導と長い時間をかけてのセルフモニタリングは必要だ。そしてその指導を行う事もまた非常に重要だと思う。

いつか優璃が心を開く時が来るのだろうか。そんな事を高橋は考える。そうなって初めて優璃は優璃としての人生を歩めるのだろうと思うけれど、多分それは誰もが思っているよりもきっと難しいと思う。

山吹 薫
山吹 薫

そうですね。多くは服薬コントロールが必要であり、病状に合わせた適度な運動療法もまた必要です。しかし過度なストレスやそれを伴う環境、風邪や流行の感染症。そういったものでも増悪します。なんにしても日常の中からコントロールが必要ですね。

石峰 優璃
石峰 優璃

難しい事も沢山あるがな。それでも周りの目が必要だし、何よりも自身の認識もまた必要だ。生活指導によって患者様が自身の病状をコントロールできるように指導する。こればっかりはいつになっても悩むよ。

高橋 美奈
高橋 美奈

それでもそれが破綻した時に、慢性心不全の急性増悪、もしくは新たな急性心不全として病状が出始めてしまう。そしてまた入院しての心不全治療の必要性が出てくるから、早期発見に越した事はないけどね。

いつかこの小生意気な新人ちゃんが優璃の心を開いて、私には出来なかった優璃の優璃としての生き方が出来る。ちょっぴりなら期待できかな?と高橋は唐突に山吹の頭を撫でる。目を白黒する山吹を見て、高橋は柔らかく笑みを浮かべた

山吹薫の覚書64

・慢性心不全は病状がコントロールされているように見えて緩徐に進行している事も多い。

・生活指導がその多くの鍵を握る。また定期的な受診もまた早期発見につながる。

・高橋美奈はいつも唐突でよく分からない。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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