心不全の話 その⑤ 〜リハビリを行う時に知るべき事〜 【山吹薫の昔の話】

心不全

全くこの人は・・・と山吹薫は首を横に振る。自分が心不全になったら・・・だとかなんとも不吉な事を言う。と静かに笑みを浮かべる石峰優璃にため息を吐く。

山吹 薫
山吹 薫

またその話ですか・・・良いでしょう。主任が心不全として、心不全の治療が順調に進んでいると仮定して、何よりもまずは有酸素運動が重要とされていると思います。それは一般的なランニングなどそう言った高強度のものではなく、単純に病棟を歩くと言った低負荷のものから始めるべきだと思います。

石峰 優璃
石峰 優璃

ふむそうだな。あまり運動は得意ではないが、それは息が切れるほどの運動ではあってはならないな。逆に心臓の負担が増えて心不全が進むかもしれない。お互いに会話が出来る程度の負担で、翌日に疲労が残らない程度の運動負荷が必要だな。

高橋 美奈
高橋 美奈

そうね。特に優璃みたいな人は自分の負担を隠したままに我慢して運動しちゃうから、本人の主観的な訴えの他にも必ず血圧や脈拍、血中酸素飽和度と言った他覚的な初見も重要ね。ほっといたら無理しちゃうから。

どこか静かな表情をしている高橋美奈に、そうだなと石峰は無邪気に笑みを浮かべる。何がそんなに楽しいのだと山吹は再び首を振る。

山吹 薫
山吹 薫

確かに主任は無理しそうです。なので生活指導もまた絶対に必要です。入院期間が済んでも心不全とは長い付き合いになる事も多いですから、週に三回から5回の運動を定期的に続ける。もちろん雨や雪の日はダメです。そして他にも体重の管理ですね。心不全であるならば自然と消費エネルギーは増えていますから、体重の増加は肥満・・・・もありますがそれよりも循環動態の破綻に伴う体液量の増加の可能性が高いです。自分自身のモニタリングをしっかりと指導する事が必要です。

石峰 優璃
石峰 優璃

ふむふむ。なるほど。確かにきっと入院中は様々なスタッフが関わる事により気をつけるが、自宅に退院したらそれは分からないな。入院中にしっかりとその辺は教えて貰わなければならないな。

高橋 美奈
高橋 美奈

そうね。特に処方されたお薬を自分で中断したり、塩分や水分を過剰摂取してしまう。もちろん過労やストレスなどを過度に感じる環境では無いかもまた把握と指導が必要だわ。もちろん新人ちゃんが言った体重の管理以外にも、自身で血圧や脈拍の管理も行うようにね。自分で自分の状態を把握する事まで理解が出来るように指導するのが理想ね。

確かにこの主任は放って置いたらいくらでも無理はしそうだと山吹は思う。でもそれは自分にとってそうであるだけで、主任としては当たり前の事かもしれないのだけど。

高橋 美奈
高橋 美奈

そして特に優璃みたいな人は自分の事ばかり考えてるから、自分の病気の事について軽く考えている事も多いわ。だからしっかりと心不全が進行したらどのような症状が出てくるのか、病気の事もまたしっかり指導が必要。それはもう口をすっぱくね。症状が軽い中に主治医と相談できたらそれだけ治療期間も少なくなるの。ある意味心不全とは心臓に関する疾患によって生じた心臓の終末像とも言えるんだから、それをしっかりとね。

石峰 優璃
石峰 優璃

随分な良いようだなぁ。これはあくまで仮定の話だが、運動療法の方法ばかりではなく、しっかりとその疾患の事についても理解を深めてもらう。それはとても重要な事だな。

山吹 薫
山吹 薫

まぁ主任なら大丈夫そうですがね。その体力はどこから出てくるのか知りたいですよ。

まぁカフェインと甘味だな。そう無邪気に笑う主任の笑みに柔らかく笑みを返す。ただその中で高橋だけがじっと石峰の横顔を見つめていた。

山吹薫の覚書66

・運動は息が切れずに会話が行えるペースで。翌日に疲労が残っていたら負担を減らす。

・自身の病状をしっかりと把握して、それが進行したらどうなるのかまでしっかりと指導する。

・主任なら何が起きても大丈夫だろう。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

【Tnakanとあまみーのセラピスト達の学べる雑談ラジオ!をやってみた件について】

雑談で学べるラジオも好評放映中!たまにはまったり学んでみませんか?

『えっ!?マジでやるの!?雑談で学ぶ運動処方とか!!』【Tnakanとあまみーのセラピスト達の学べる雑談ラジオ!をやってみた件について】

コメント

タイトルとURLをコピーしました