山吹薫はいつもの様に朝早くに救急科のリハビリ室へと足を踏み入れる。消える事の無い様に思うその電灯の向こうにはいつもの主任が・・・
ぬはははは！今日も早いではないか新人よ！自己研鑽はやはり朝が捗るな！
・・・えぇと今日はお早いですね。それに主任は・・・？
主任ちゃんは休暇だよー。そしてボク達はその代わりの業務をやっている訳だけど・・・毎日主任ちゃんはこれ毎日やってるのかなぁ・・・新患を把握するだけでも大変だねぇ・・・
朝早くから随分と疲れた様に、そしていつものように体を奇妙に傾ける内海青葉と、盛大に笑い声をあげる岩水静がそこにいた。いつもの様に腰まで伸びた長く黒い髪を纏めることもせずに、無邪気な笑みを浮かべる主任はそこにはいない。
ふむふむ。心筋梗塞・・・それも三枝病変か・・・緊急でカテを行っている様だな。ところで新人よ。心筋梗塞とはなんだ？
また急に・・・えぇと心筋梗塞とは簡単に言えば心臓を栄養する冠動脈が何らかの影響で高度に狭窄、もしくは梗塞し心臓を構成する筋肉へと酸素が巡らずに壊死を起こす疾患・・と言ったところでしょうか。
つまりはそうだねー。これは突然死の原因ともなる日本人の死亡原因でもかなり多い方ではあるねー。そして心筋は脳と同じで、一度壊死してしまうと元の状態には戻らないから早急に治療が必要となるの。
何だか主任が居ないだけで、随分とこのリハビリ室が広く感じると山吹は思う。もちろん山の様に巨大な岩水がいるからそんな事は決して無く、いつもよりは狭いくらいだけど。と山吹はため息を吐く。
その原因の主な所は動脈硬化と言われている。血管は細く当然心臓に栄養を送る冠動脈の壁に、コレステロールなどのドロドロとしてものが張り付いて血管が脆くなったり、弾力が低下し非常に脆くなる。その結果として心筋に血液が送る事が出来ない状態となり、壊死の原因となる訳だな。
体の循環の中心を司るのが心臓とも言えますもんね。そしてその機能を保つための冠動脈が、その機能を果たせずに心臓に重篤なダメージを与えてしまう。やはり心筋梗塞は重篤な疾患ですね。
そうだねー。そして一見リハビリなんてとてもじゃない！みたいな状態には
見えるけど、診療の進捗や介入の時期に合わせた、リハビリテーションはとても効果的だからねー。新人ちゃんもよく勉強しておかないとねー
そうだぞ！しかし朝早く仕事を始めるのはやはり気持ちが良いな！いつかこの様な活動も世に広く普及されるだろうな！
普通にやってる人なら普通だよねぇ・・・と呆れる内海に強く同意をしつつ、主任も休む事があるのだな。とぼんやり山吹は気持ちの中に浮かんだ寂しさから目を背けた。
山吹薫の覚書67
・心筋は再生しない。よって心筋梗塞発症後には素早い治療が必要となる。
・心筋梗塞の治療に合わせて段階的に行うリハビリテーションもまた重要。
・主任も休む事があるのだな。当たり前だな・・・
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
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