急性期と回復期のリハビリの話 その③  〜リハビリテーションのリスク〜

リハビリ

ふー。今日はちょっと喋りすぎかなぁ。と沢尻悠は額を拭う。白波百合や桜井玲奈もまた自分の大切な後輩だから伝えたい事はある。進藤守は何を考えているやら傍観を決め込んでいるからため息も出る。

沢尻 悠
沢尻 悠

さぁざっくりとリハビリテーションの種類を振り返った所で、急性期と回復期のお話を進めようかねー。今までのお話を纏めるとまずは急性期のリハビリテーションとは実際場面はどんな事かざっくりまとめてみてー。

白波 百合
白波 百合

えぇと、病状の安定していない人が病状の安定を目標に治療を行う。それに並行して合併症予防や廃用症候群予防を行うっすね。そしてその中には中枢疾患の急性期と運動器疾患の軽症の方や手術の前後のリハビリをしたり、肺の疾患や心血管の疾患の方のリハビリをするっすね!

桜井 玲奈
桜井 玲奈

なら回復期では中枢疾患や運動器疾患の経過が長くなる方のリハビリや急性期病棟で病状の安定した方、だけども重症度が高いなどの理由で自宅すぐに帰るには難しい方、そういった方に転帰先に向けた心身機能の向上や必要な動作の獲得を行うのですわね。そしてそこには高次脳機能障害や高度の嚥下障害を患う人も含まれる事も多いって事ですわね。

進藤 守
進藤 守

まぁ何度も言うが様々な要因が絡まるから細かく言えばキリが無い話でもある。だけどもあくまでよく見られる話という事だな。

そゆことー!と返事をしつつ、きっと言いたい事は分かっている癖にと眼を細めてみるも進藤はその視線から瞳を反らす。山吹薫と一緒でオレが回復期にいった理由も知っているのにと肩を落とす。

沢尻 悠
沢尻 悠

そうだね。だから回復期病棟には中枢疾患や運動器疾患のリハビリを中長期的に行うリハビリスタッフが多いのも事実だし、急性期には中枢疾患や運動器の急性期、そして呼吸器や心血管系のリハビリを短期で行う事が得意なリハビリスタッフが必然的に集まる。いや、そこで働いていくうちに得意になっていくというのが正しいのかなー。

桜井 玲奈
桜井 玲奈

でも・・・そう考えたら急性期のスタッフが様々なリハビリを知っているという事かしら?

進藤 守
進藤 守

決してそうとは言えないな。あくまで得意な分野が違うというだけだ。回復期での中長期的な介入では自宅生活を構築する福祉用具やサービスの調整、そしてそれに関わる他職種との連携が要求される。それは急性期の短期的な介入では難しい場面もある。それに急性期でも回復期的な介入や、回復期でも急性期的な介入が行えるセラピストも沢山いる事も事実だ。しかしだからと言って誰もが全てのリハビリに精通しているという訳でも無い事もまた言い難いが事実だと思う。

白波 百合
白波 百合

確かに自分もそうっすけど、一つの分野を極めるのも大変な時間がかかるっす!それこそ専門的に研究されたりする人も沢山いるっす!もちろん全ての分野のリハビリを極める事に越たことは無いっすけど・・・特に自分達や新人さんたちにはとっても難しい事っすよね・・・

自分が回復期に移動する事を告げられて拒否しなかった理由はそこなんだよねー。と沢尻は思う。それはきっと薫さんと経験した急性期の経験がある事だけどとは言わ無いでおこうと考えた。

進藤 守
進藤 守

そして厄介な事にこれから更に高齢者の患者様は増えいく。そしてリハビリテーションが有名になるに当たり要求される事も増える。他にも急性期での在院日数短縮が提唱されるという事はだな、以前よりも早く回復期病棟でのリハビリを行う事になるという事だな。

沢尻 悠
沢尻 悠

早々。玲奈ちゃんも最近回復期病棟で重症の患者が増えたなーとか思わない?その病院の方針にもよるかもしれないけれどウチではどうだろう?

桜井 玲奈
桜井 玲奈

確かにそれは十分に感じている所ですの。やはり急変も少しずつ見かけるようになりましたわ。きっと昔の方とは違って食習慣の変化やライフスタイルの変化によって、生活習慣病をベースにした様々な疾患を患っている方も増えているとも思いますの。

白波 百合
白波 百合

それに急性期ではあくまで病状が安定していても、慢性疾患の方がリハビリを続ける中でじわじわと慢性疾患を増悪させてしまうという事もやっぱり見かけるっす・・・

その白波の言葉に沢尻は静かに答える。重症患者のリハビリテーション。それがいま自分が求めている事で、急性期から回復期を見た時に必要だと思った事だ。治る人は何をしなくても生活の中で治る事も多い。だけどもそうで無い人はそうで無いと治る事もまた少ないのだ。

沢尻 悠
沢尻 悠

それに回復期病棟で何もなくても、次は在宅や転帰先になるんだから、そのための生活指導もまた必要だし連携も必要になってくるね。そのためにはその方の疾患に対する理解は絶対に必要になってくるの。知らなければね。何も出来ないんだよ。

進藤 守
進藤 守

でも現実問題として自分一人で全てを行う事は困難だ。まぁそのために先輩が居るんだという事を忘れてはならないよ。そして今リハビリしている疾患だけを見てもダメだ。たとえ既往歴に書かれていてもそれは今も尚患っている疾患でもあるのだからね。

桜井 玲奈
桜井 玲奈

それはそうですわ・・・でも、もちろん主疾患に対しするリハビリテーションも必要ですけど、現在患っている疾患以外もまた今は優先順位が低くてもいずれ問題になる事もあるのですわね。

白波 百合
白波 百合

そうっすね。そしてそれらの病状をしっかりと知る。カルテからそれらの病状の症状が進んでいないかをしっかりと把握して、日々のアセスメントやカルテの中からまずは拾うという事っすね。でもこれはやっぱりどこにでも共通するって事っすね。

うん。と沢尻は頷く。重症患者のリハビリを行うほど急変と隣合わせなのはどこでも一緒だと思う。そしてその時には急性期での知識も必要になる。

沢尻 悠
沢尻 悠

まぁ兎も角。急性期と回復期では得意としている事も目的もそれに至る内容も大きく違う。だけども互いの知識が全く関係ないとは言えないのさ。急性期でも在院日数減少となれば回復期の知識や対応が必要だし、回復期でもやはり急性期での知識や経験は必要となる。互いにフォローし合いながら介入できるのが理想だね。だけどもそれは難しい場面もある。

進藤 守
進藤 守

だからこそ何も知らないのではなく、ちょっとでもいいから知っておく。そこであれ?と気が付けば先輩に相談できる。そのためには各種検査と共にカルテを読めるようになる事がまず必要だな。

桜井 玲奈
桜井 玲奈

つまりは・・・今目の前にある事だけに捉われず基礎をしっかりと勉強しなさいという風にも聞こえますわね。でもスペシャリストだけでなく、多数の視点で患者様を見れるジェネラリスともまた必要とされますわね。これからは特に。

白波 百合
白波 百合

でも何かに困っている患者様や状態の悪い患者様でも目の前にしたら関係ないだなんて絶対言えないっすね!目の前の患者様をしっかりと観る!で困ったら容赦なく相談するっすね!

白波の返事に沢尻は静かに頷き、進藤は柔らかく笑みを浮かべる。きっと先輩が伝えたい事はこうなんだろうなとも思う。いつまでも先輩はいないのだから、自分一人でリハビリを行えるように。その時に悲しまないで済むように、孤独を味合わないで良い様に・・・全くこの子には過保護だねぇ。と沢尻はフンと鼻を鳴らした。

白波百合のノート 123

・急性期と回復期では得意としている事は違う。だけども今必要になっているのは急性期では回復期の方法論で、回復期では急性期の知識や技術。

・全てのリハビリテーションに精通する事は難しいが、カルテを読んだり、基本的な疾患の学習でリスクに気がつける。気がつけたら先輩に相談できる

・先輩早く帰って来ないっすかね。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

【総集編!!】

【これまでの話 その①】

【これまでの話 その② 〜山吹薫の昔の話編〜】

【時間がない人にお勧めのブログまとめシリーズ!】

【ウチ⭐︎セラ! 〜いまさら聞けないリハビリの話〜】

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