なんだか今日はこの二人が奇妙だと山吹薫はそう思う。岩水静と内海青葉という二人の先輩がやたらと奇妙な笑みを浮かべている。
ふふーん。心電図や血液検査の他にも重要な検査はやはり画像検査ですよねー。
なんですかその奇妙な動きは・・・画像検査といえば冠動脈造影検査でしょうか?股関節や手首から動脈にカテーテルを入れて、冠動脈まで進め造影剤を流し込みX線撮影をする検査ですよね?こう考えると低侵襲であるけれど、その反面これをこなす医師は本当に凄いですよね。まぁきっとそれ相応の努力が必要だとは思うのですが・・・
それはもちろん鍛え上げられた腕前だな!そしてその造影検査と共に今はカテーテル・インターベンション(PCI)が割とセットで行われる。これは造影検査と同じ様に冠動脈まで勧められたカテーテルにて、細くなった冠動脈を広げるバルーン療法や、広げた血管が再び詰まってしまわない様に金属を網の目状にした筒を入れるステント治療が行われる。そして病変した部位が非常に石灰化している時にはロータブレータと呼ばれる器具を使い削りとるのだな。
この二人の話を聞いていると、自分なんかはまだまだだと山吹薫はそう思う。知っていても経験した事がなければ物事の本質はやはり理解は出来ないものなのだ。何事も
他にも並行して心エコー検査も行われるねー。これは超音波を用いて心臓の状態を探る検査で、心筋に冠動脈から栄養が行かないと当然心室の機能も低下するから、それが確認出来るよねー。他にも併存する心臓の疾患が分かったりするから、侵襲も無く検査出来るし、その結果は運動処方する時にもとっても有用だよー!
ふむふむ。だけども当然胸部レントゲン検査もまた重要ですよね。心筋梗塞により高度に心筋が障害されていれば心機能も低下します。二次的に心不全症状が出ていれば肺が鬱血しますし、そもそも心肥大が高度に進んでいるのも確認できますね。
そして良く待機的に心臓への治療をされる方が行われるのは心筋シンチグラム検査だな。体内に注入した放射性同位元素(ラジオ・アイソトープ)から血液の流れを計測するコンピュータ断層撮影で、心筋梗塞を起こした箇所に集積する性質から確定診断ができるものだな。しかし救急場面で直ぐに使用・・という事が難しいのもある。何せ急を要するからな!
そしてさっき岩水が話したPCIに加えて血栓溶解療法があって、ウロキナーゼ(UK)や組織型プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)といった血栓溶解薬を使用して血栓自体を溶かす治療だね。どちらかというとCAGとPCIを行う方が行える施設が多いからメジャーでもあるけれど、こちらも選択される事もまたあるから知っておかなきゃねー。
治療とリハビリテーション。いや、今やリハビリテーションも治療の選択肢の一つとして処方されるのであるから他の治療法を知っておく事は不可欠だと山吹はそう思う。
こういった検査と治療はあるけれど、それが高度に進んでカテーテル治療も難しいと今度は外科的な治療が必要になるねー。冠動脈バイパス術と言って、冠動脈の詰まってしまった部分を迂回して新しい血管を繋いでしまう手術だねー。体の他の血管を取ってきたりして繋ぎ合わせる手術。心筋梗塞後のリハビリとはちょっと視点が違ってくるからこれはまたお話ししようねー。
そうだな。時代はどんどん低侵襲での治療へと向かっている。よってそれを知る事でリハビリの進捗もまた早める事が出来ると思う。それ故に我々を常に鍛錬を怠らぬ様にせねばな!
まぁそれはそうですが、果てしないですね。
そうとも!と笑う岩水に気圧されながら、どこがゴールになるのだろうか。そんな途方もない事を山吹は考えた。
山吹薫の覚書71
・心筋梗塞だけでは無く心臓の機能を包括的に理解する。
・リハビリテーションも治療として処方される。よって治療を知る事は重要。
・どうやらまだまだ成長しなければならない。
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
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