浮腫みの話 その④  〜新たに生じる浮腫みのリスク〜

浮腫

さてさて!坪井咲夜は大きく伸びをする。この二人が一緒にご飯を食べに行くなんてええ感じやな。そう尊大な笑みを浮かべる。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そんで、浮腫む理由とそれが怖い事は解ってんけど、うちらは何したらええの?

山吹 薫
山吹 薫

まぁ先ずは予防だな。リハビリのための入院中でも合併する事はよく見かける。

上代 葉月
上代 葉月

リハビリをする中でですか?

山吹 薫
山吹 薫

そうだな。別に食べすぎるからでは無い。

白波 百合
白波 百合

先輩その話はもう良いっす・・・

ふんと山吹は鼻を鳴らす。明らかに笑みを浮かべているなと坪井は思う

山吹 薫
山吹 薫

例えば心不全の増悪だな、過度な運動負荷は心臓の仕事量を増やす事を以前話したけれど、例えば自宅に階段が合ってその練習を積極的に何も考えずに始めたとする。すると浮腫みが出初めて息切れが見られてくる事がある。

上代 葉月
上代 葉月

それは・・・心臓がその仕事に耐えきれなくなって心不全が進行したって事ですよね。

白波 百合
白波 百合

胸がドキドキするようになって、心臓から十分な血液を拍出できなくなるっすよね。そんで心臓から肺、そして体に水分が溜まって浮腫むって事っすね。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そればっかりは怖いわな。何も考えずにやってたらウチらが運動処方し過ぎたって事やもんな。

山吹 薫
山吹 薫

だから主治医と十分に相談して、適時念頭に置いて評価が必要なんだ。ともあれ、浮腫んでいるのに気がついたら、先ずはそのままにせずに疑問に思う事だね。

なんだか休憩室の空気も変わってきたなぁ。と坪井は思う。人と人との距離もまた季節のように変わるねんなぁと自然と笑みは溢れる。

山吹 薫
山吹 薫

それ以外にも特に股関節や膝関節の術後なんかは、炎症で浮腫んでいるのか、深部静脈に血栓が出来て浮腫んでしまったのかの鑑別は必要だね。臨床での確かなリスクの一つだ。

白波 百合
白波 百合

ふむふむ。それは運動をしなくても、というか運動をしない事が大きなリスクになるっすね。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

って事は長時間じっとしている時にはしっかりと足首の運動をせなあかんな!

上代 葉月
上代 葉月

それはテレビで言っている通りだけど、血栓がない事を確認してからだね。

山吹 薫
山吹 薫

そうだな。僕らもリハビリを行う時にはまずそれが先決だな。片方の足が浮腫んでいて、それが術後や長期臥床中なら尚更だ。

しっかしこの人も得体が知れへんなーと坪井は思う。山吹さんは自分の事を語らないから特にそうやし、・・・まぁ周りの人もそうやけどと坪井はそう思う。

山吹 薫
山吹 薫

もちろん低アルブミン血症ならば、食事量や栄養状態にも配慮しつつ運動の負荷を調整する。そして肝臓や腎臓の病変、もちろん心臓に一時的な障害が見られる時もだが、原疾患の治療が先決となる時も多い。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そやなぁ。治療が終わってからのリハビリというより、入院中は原疾患の治療しながらのリハビリやから、疾患の治療の進行はしっかり見なあかんな。

白波 百合
白波 百合

そのために今まで勉強してきたっすから!・・・まぁこれからっすけども・・・

上代 葉月
上代 葉月

それはそうだとして、それならリンパ浮腫ならば何かやれる事はあるんですか?

山吹 薫
山吹 薫

リンパドレナージ等、治療と併用しながら浮腫に対しての治療や手技もある。その時はそれを調べてみたら良い。なかなか興味深いから。

ふむふむ。と三人は頷いている。山吹さんも昔はこんな風に誰かに教わった事があるんかなーとも思う。そしてこの人に何かを教えられる人なんて余程の人やなと思う。

山吹 薫
山吹 薫

そして何より注意しなければならないのは浮腫んでいるから体の中にたくさん水分がある。と考えてしまい血管の中に十分に水分、つまりは血液があると考えてはいけない。という事だ。

白波 百合
白波 百合

あれ?でも体の中にたくさん水分があるんじゃないっすか?

坪井 咲夜
坪井 咲夜

腎機能の障害で尿が十分に出なくても浮腫むっても言うし、そうなんとちゃうん?

上代 葉月
上代 葉月

浸透圧の話ですか?

山吹 薫
山吹 薫

そうでもあるね。そもそも一番最初に言っただろう?細胞間質に水分が過剰に貯留すると。そして毛細血管からそこに移行するとするならば・・・

白波 百合
白波 百合

なるほど。血管の中の水分が移動するから、血管の中が十分に満ち足りてはいないんすね。

そうだ。と山吹は満足げに答えている。しっかし多分新人の時はきっとこの人は小生意気やったろうなぁ。と想像し坪井はちょっと楽しくなる。でもそこに指導者はいた訳だから一体どんな人だろうと更に気にはなる。

山吹 薫
山吹 薫

それで一番怖いのは静水圧の話にも戻るが、起き上がると重力に従い足の方に血が下がるという事だね。

上代 葉月
上代 葉月

なるほど。長期臥床で足のポンプ作用やその・・・寝たきりの状態に慣れてしまって起き上がった時に血が下がるだけじゃないんすね。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

せやな!そうやって頭に血が行かなくなってしまってぼーっとするんやな!

白波 百合
白波 百合

とにかくもう浮腫んだ時点で相談が良いかもっすね。

山吹 薫
山吹 薫

そうだな。そうしてもらうと助かるよ。

そう言って山吹は白波に笑みを返し、白波もまたそれに満面の笑みで答える。坪井はその二人を眺めながら、いずれ指導者は居なくなるもんなんやけどな。そう思うとなんだか切なくなってそれでも・・・と二人から目を逸らした。

白波百合のノート 52

・リハビリをしている中で浮腫が出てきたら要注意。特に心臓に障害がある人は要注意。そして原疾患の治療が必要だという事も忘れない。

・浮腫んでいるからといって血管の中に血液がたくさんある訳じゃない。そのために離床する時などは要注意。

・今更だけどなぜ先輩はここまで付き合ってくれるのだろうか?

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