COPDの話 その② 〜患いながら行われる治療〜

COPD

なんからしくないな。沢尻悠は坪井咲夜の前で語りながらなんだかそう思う。分け隔てなく気楽に・・・それが信条だったのにも関わらず出てこようとする言葉は重い。

沢尻 悠
沢尻 悠

それでCOPDの簡単な病態が分かった所で、次ぎはその治療だね。だけども最初に言っておくけど、現段階で長期間慢性的に障害された気道や肺胞を生まれたままの元通りに綺麗にする治療法はないとされているね。ただし早期に見つけて適切な対応を行う事で、それ以上の障害を防ぐ事が出来るし、生活はまた楽になるとされるよ。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そうやな。何でも同じかもしれへんけど、早期発見と予防って事やな。まぁそもそも患わないように予防をする事が一番重要やねんけどな!んで治療法にはどんなんがあるん?

坪井は出来るだけいつもの様に振舞っている。母親の治療が落ち着いたとは言え、一番辛いのは彼女だろうにと沢尻は一度首を振る。

沢尻 悠
沢尻 悠

兎にも角にもまずは禁煙だね!これがまず第一歩!昔からの習慣をすぐに辞めるって事はとても大変な事だけど、入院を機に生活を見直して禁煙する人もたくさんいるよー。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

今は禁煙外来やったり、非ニコチン製剤の飲み薬や、ニコチンパッチやガムといった代価のものを使いつつ禁煙も出来るらしいしなぁ。そればっかりは努力もまた必要やねんね。

沢尻 悠
沢尻 悠

もちろんタバコの刺激で痰の量が増えたり、その刺激で大きく咳き込む事もあるよね。そもそもそれらによって気管や肺胞が障害されている訳だからこれはまず指導する。これはみんなが出来る一つの事だね。

そやな。と坪井は俯きそう頷く。それを沢尻は眺めつつ結局の所自分にはこれくらいしか出来ないんだよな。そう思う。

沢尻 悠
沢尻 悠

そしてもちろん薬物療法もまた必要となる事が多いよ。気管支が狭まって呼吸苦を感じる人も多くいるし、それによって生活が制限されてさらに体が弱る事もまたある。なので目標は現状の改善と将来のリスクを低減していくって事かな?

坪井 咲夜
坪井 咲夜

ふむふむ。もしかしたら長い付き合いになるかもしれへんけど、それで苦痛をいつまでも味合うって事よりは随分とマシに感じるな!

沢尻 悠
沢尻 悠

だねーいくつかあるんだけど、まずは気管支拡張薬とされる、短時間作用性抗コリン薬、もしくは短時間作用性β2刺激薬がある。これは文字通り気管支を広げる神経を刺激、もしくは気管支を狭める神経を短時間抑制して気道の通り道を広げる薬って事かな?運動時や入浴時など日常生活での呼吸困難感の緩和につながるね。作用の時間や目的や用途に合わせて使い分けられるって感じかな。

ただ単に彼女に慰めの言葉をかけたとして、多分彼女はそれを望まないと沢尻は思う。大丈夫だよという言葉だけでは何処か投げやりに感じてしまうものだから。彼女は多分それを求めていない。そう思う。

沢尻 悠
沢尻 悠

そして長時間作用性抗コリン薬だね。これはさっきの短時間から長時間に変わったって事。機序は同じで一回の吸入で作用が12~24時間続くとされて、一秒量や努力肺活量の改善まで認められるね。そして長期的には患者様の病状の進行や死亡率を下げるとされているね。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そんなにええ感じな薬なんやな!でもそれだけって訳でも無いやろ?劇的に症状を緩和させる強い薬になるかもしれへんから当然副作用もあるねんな?

沢尻 悠
沢尻 悠

そうだね。閉塞隅角緑内障の患者様では禁忌とされていて、この薬の作用によって瞳孔括約筋が弛緩して散瞳する事から相対的に症状を増悪させる、もしくは前立性肥大症の患者様では稀に排尿困難症状を悪化させる事もあるからその点を主治医と相談する必要があるのね。

なるほどなるほどと坪井は頷く。それに沢尻は頷いてみせる。無責任な慰めよりも、何が今自分たちにできるのか。それを知る事は希望にも繋がると沢尻は思う。

沢尻 悠
沢尻 悠

他にも同じ長時間作用性のβ2刺激薬があって、これも12~24時間の作用が期待できて効果の減弱はあまり無いらしいね。そして効果は劣るけれど夜間症状や生活の質を改善させる貼付型のものもあって、長時間型のお薬を特別に配合した、長時間作用性抗コリン薬・β2刺激配合薬もある。これは作用機序と時間が異なる薬剤の効果を得た上で結果的に副作用のリスクが低下するとされるね。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そやったらより気管が広がる効果が期待できんねんな!そしたら肺の中にもたくさん空気が入るわけやし結果的に息切れも改善するねんな!

沢尻 悠
沢尻 悠

そうだね。他にもメチルキサンチンというものはあって、長時間作用性β2刺激薬と併用する事で気管支拡張効果が上乗せされるとの報告もあるけど副作用に吐気や不整脈があるから血中のモニタリングが必要ー。それに痰の量を減らす喀痰調整薬やCOPD自体の増悪を減らす抗生物質もあるねー。のお薬もその病状や進行度に合わせて処方されるから、受診した時にしっかりと自分がどういった所で息切れを感じていたりするのかを伝えるのが必要だね!お医者さんに相談って訳さ!

人でありながらセラピストでもある。それは過分な葛藤を生む。どちらかである必要はなく、どちらでもある事が必要。それを伝えたいのに相変わらず言葉が重く心から出てこない。そう思う。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そんでもちろんワクチンの接種も大切やって聞いたで!季節性の感染症で急性増悪する事もあるしなー!有名なのはインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンで死亡率が50%も低下する事があるねんて!

沢尻 悠
沢尻 悠

そうだね。COPDの急性増悪は疾患そのものが進行する事もあるし、他の感染症だったりするね。他にも高齢ならば誤嚥性肺炎にもより注意しなければならないよ!COPDだけって事は稀だし、脳梗塞だって合併されている方も多いんだから。

うんうん!と坪井は何度か頷く。まったくオレも素直になれないんだな。と沢尻は目を和らげる。こんな余計な所だけ山吹さんと似たものだとそう思った。

坪井咲夜の手帳 その6

・まず禁煙は絶対に進める!周りからもそれを指導する1

・色んなお薬は症状に合わせて処方されるから、受診の時にしっかりと自分の症状を伝える。

・ホンマに素直じゃないんやから

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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