
とりあえず呼吸数の測定をしてようか。白波君、普通に息をしてくれないか?。

任せてください!
と言いつつ白波は大きく息を吸い込んでいる。そしてそれを何度も繰り返している。

どうっすか!?

うん。自然に呼吸はできていなかったね。でも君の自然な呼吸数は16回/分だったから。まぁ正常だね。

異常っすか?いや正常なんすね。でもいつ数えてたんすか!?
白波は両手を胸の前で交差させ驚いている。山吹は頬杖をついて目を細める。

なんだその仕草は。ともかく、呼吸数を測定するといっても、こうやって測定するのは難しい。君のように意識すればするほど呼吸数は変動する。勝手に体が調整するけど、意識的に容易に調整できるのも呼吸だ。

ならいつ測定するんすか!?

測定すると言わなければ良い。
白波は口を尖らせている。なんだそれはと山吹は答える。

脈拍測定の間でも良いし、日常生活上でも良い。他にも普通に会話できていれば呼吸数は正常だし、さっきの君みたいに会話が途切れ途切れになると、呼吸数が増加しているとも言える。

先輩もっすね。

どうしてそう勝ち誇る?そして会話も成り立たなければ、それは異常な呼吸数の増大という事だよ。それだけで25〜30回/分以上だ。

なるほどっすねえ。

そして呼吸にも幾つかの相がある。覚えているか?

呼気と吸気っすね。吸って吐いてを繰り返す感じっす。
ふむ。と山吹は顎先に手を当てる。

ならそれをやってみてくれ。

ん?別に良いっすけど?
白波は素直に吸って吐いてを繰り返している。

あれ!?おかしいっすね?

うん。呼吸数は25回/分を超えたね。おめでとう見事な頻呼吸だ。
むぅ。と白波は口を尖らせる。

吸気と呼気、吸って吐いての割合は1対2だったかな?

そうっす!それを忘れてたっすよ!
そう言って白波は再び呼吸を繰り返す、吸った時間より気持ち吐く時間を長くしている。そして直ぐに息を切らす。山吹は笑いを噛み殺している。

おかしいっすね。スポーツで鍛えたはずっすけど・・・

まぁそうなるだろうね。ちょっと考えてみたら分かると思うが、吸う時間より吐く時間が長ければ息なんて、すぐに切れるだろう。

さては、分かっててやったっすね!?

そればどうだか知らないが、呼吸の相は2つではなく正確には4つだ。『吸気相、吸気ポーズ、呼気、休止期』だよ。

そんなにあるんすか?そして間の2つは何っすか?

吸気ポーズとは息を吸った後に呼気に移り変わる一瞬の間で、休止期は息を吐き終わった後に休息をする時間だよ。『吸気:呼気=1対2』 というより、『吸気+吸気ポーズ:呼気+休止期=1対2』となる。
なるほど!と白波は自分の胸に手を当てて呼吸を数えている。

よって、さっきの君みたいな呼吸、つまり吸気ポーズと休止期が消失している呼吸は異常だ。だからある意味そこを見抜くのも一つだね。
そして一分間に16回が正常ならば、およそ4秒間に1回の呼吸が確認できれば良いとも言える。

それは楽っすね!

あくまで簡略化したものだからそれは念頭に置くこと。そしてここでも心拍出量の時の考え方が必要になる。一回拍出量と心拍数、想定するなら血圧と脈拍数といった考え方だね。

えぇと・・・量と頻度っすね!

うむ。息を沢山吸えなければ頻度を増やすしかない。逆に息を沢山吸えたら呼吸数は一定で良い。呼吸数を測定しながら胸部や腹部がきちんと膨らんでいるのも確認する必要がある。

沢山息を吸えてるかどうかっすね!
うむ。と山吹は答える。何となく話しやすくなってきた。そう思う。僕が白波とのやりとりに慣れてきたからかもしれ無い。そうとも思う。

呼吸のパターンと数と深さ!これだけ確認すれば大丈夫っすね。

いや、大丈夫ではない。

・・・そこから何を考えるかっすね・・・

そうだね。それにまだ忘れている。

何なんすか!?

異常な所見や聴診だよ。
あぁ~と白波は項垂れている。それでもまぁちょっとは勉強しているじゃないかと山吹はそう思う。そしてそれは口に出さないことにした。
白波百合のノート11
・呼吸は吸気・吸気ポーズ・呼気・休止期の4つの相を確認する。呼気ポーズと休止期の2つを確認することもコツ。
・会話が成り立つかも重要な所見。それで予測できる。
・呼吸でも量と頻度は大切。数と胸とお腹の膨らみを見る。
・なんだかちょっと先輩の言っていることが分かってきた気がする。
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