心筋梗塞の話 その② 〜注意するべきその症状〜 【山吹薫の昔の話】

心筋梗塞

全く、毎日こんな量の仕事を一人でこなしてるなんてねぇー。と内海青葉は電子カルテの画面を眺めつつ、体をぐにゃりと曲げる。岩水静と半分こにしてやっと追いつくのだから相当な量だと改めて思う。

岩水 静
岩水 静

ふむふむ。それでは心筋梗塞の話の続きだな。心臓を栄養する冠動脈が要は詰まってしまって、心筋の壊死に繋がるこの病態だが、発症時には強い痛みを生じる事は知っているな?

山吹 薫
山吹 薫

えぇもちろん。形容し難い痛みですね。胸をえぐられる様な、まるで焼鏝を押しつけられる様など、人によっては表現は様々ですが、とにかく一瞬では消えない痛みが持続すると言われています。

内海 青葉
内海 青葉

そうだねー。でもそれだけじゃ無くて、心臓が全身に酸素を送り届ける事が出来ないわけだから、高度の息切れや、時には意識を消失する事だってある。でもそれとは逆に高齢だったり高度の糖尿病だったりすると痛みをあまり感じない事だってあるねー。そもそも痛みを訴えられない事もあるよー。それでも心電図の波形の変化やバイタルサインの大きな変化が生じるから、そこは他覚的に気が付く必要があるねー。

そうですね。と山吹薫は顎先に手を当てて、その言葉をまるで忘れまいとしている様に内海には見える。そして電子カルテに目をやりつつ、主任ちゃんはやはり働きすぎだとそう思う。

内海 青葉
内海 青葉

そしてそもそも心筋梗塞に至る原因というものの多くは生活習慣病の延長線上にあるとボクは思うよー。脂質異常症、高血圧、糖尿病、と言った所かなー。それが長く続いてしまうと全身の血管もそうだけど、冠動脈もまた血管が硬くなったり、プラークと呼ばれるコレステロールの塊の様なものが付着して細くなっちゃうんだよねー。

岩水 静
岩水 静

そうだぞ!それに加齢は避ける事が出来ないが、運動不足やストレス、肥満もまた当然として動脈硬化を進める原因となるから要注意だ!新人は運動などしなさそうだからな、気をつけるようにな!

山吹 薫
山吹 薫

この仕事自体が運動みたいなもんですよ。ストレスは置いておいて、ともかく生活習慣病自体がリスクファクターとなり、それを増悪させないために更に危険因子を常日頃考える。という事が重要ですね。

その通りだ!とガハハハといつも通り笑っている岩水の目の下にも明らかに疲労が浮かんでいる。これを毎朝やってから意気揚々とリハビリに向かうのだから主任ちゃんはやはり化け物だと内海は呆れる。

岩水 静
岩水 静

そしてもう一つ言うならば20分弱も続く激しい胸の痛みがその時は治ったからと言って、心筋梗塞ではなかった・・という訳では無いからな。

山吹 薫
山吹 薫

痛みが治ったのにですか・・・?いやでも心筋は再生しませんから・・・と言う事は!

内海 青葉
内海 青葉

そうだよー。それはあくまで心筋梗塞によって心筋細胞の壊死が終わったってだけ。心筋梗塞による心筋の壊死自体は起きていて心筋はもう前の様に働けてはいないから、その後に呼吸困難感や意識障害、血圧低下などショック状態に陥る様な症状が出てくるから要注意!

山吹 薫
山吹 薫

なるほど・・・早急に治療されなければ安心は出来ないという事ですね。

そういう事ー!と内海はそう答えながら、殺伐とした事務作業もまたこうやって進める事でなんか気が楽になるなぁとそう思った。そしてなるほどねぇと体を奇妙に傾けた。

山吹薫の覚書68

・心筋梗塞は激しい胸部痛で自覚する。一旦その症状が治ってもそれは心筋の壊死が収束しただけである。

・痛みが治っても放っておいたら最悪、死につながる可能性が高い。

・何だか内海さんが奇妙な笑みを浮かべている。

【〜目次〜】

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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