夜の帳はすっかりと落ちて、静かな街並みの奥底に進藤守の店はある。なんとも実家がBARだなんて便利なものだと、山吹薫はカウンターに腰掛けそう思う。

最近にしてはお前が来るなんて珍しいな。後輩の記念すべき勉強会の成功を祝って・・・ってところか?。

そんな訳じゃないよ。それに彼女ならそれくらい出来て当然だろう。

『護るリハビリテーション』か彼女らしいというか、大変な道を選んだものだな。

まぁそれについてはとやかく言うつもりはないよ。だけどそう言う考え方も出来るんだなと正直驚いた。
山吹は目の前の火酒に視線を落とす。照明を僅かな光を反射し揺れる。まるで僕みたいだなと山吹は困った様に笑みを溢す。

なぁ・・・僕はこのままで良いのだろうか。最近やたらと過去の先輩に出会うといつまで経っても追いつけないんじゃないか?。

追いつく必要なんてあるのか?それに多分その答えは意外と身近にあるんじゃないかと俺は思うね。

それはどう言うこと・・・・。
言葉を紡ぎ終わる前に、店のドアが開く。あー!!とあまりにも聞き慣れた声がして、進藤はよぉ!と片手を上げた。

ご無沙汰です。すみません!大人な会話の邪魔をしちゃって。

なんでもかんでもも大人な会話とちゃうと思うで。そんでうーっす!いつもの咲夜ちゃんやで!。

かっ薫様!?なっ・・・いえ、本日はお日柄も良く益々ご健勝のようでして・・・。

お日柄も何も今は夜や!。
まったく・・・と山吹は頭を抱える。それを見て進藤は僅かに笑みを漏らす。

先輩!こんな所で奇遇っすね!みんなと勉強会の打ち上げっす!先輩も一緒にどうっすか!?。

ふん。賑やかなのは苦手だからな。
またまたー!と白波百合に背中を叩かれる山吹を見て進藤はゆっくりと視線を伏せる。答えはいつだって自分の身近に有るものだとグラスを用意しながら進藤はそう思った。
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