低アルブミン血症の話 その③ 〜運動処方で考えるべき事〜

アルブミン

何気ない単純な日々で始まった勉強会。いつしかそれは夜の帳を纏っている。桜井玲奈は目の前の巨大な岩水静を眺める。百戦錬磨の元救急科の理学療法士、そして山吹薫の先輩。

桜井 玲奈
桜井 玲奈

それで・・・低アルブミン血症については大体分かってきましたのですけれど、一体どうすれば良いのかしら?

岩水 静
岩水 静

ふむ。もちろん最初に行われるのは原疾患の治療だ。もちろんその低アルブミン血症が、肝硬変やネフローゼ症候群、もしくは多発外傷などによるショック状態によるものだったら、もちろんその治療が進められる。

沢尻 悠
沢尻 悠

そうそうー。そしてそれはもちろん慢性疾患の急性増悪だったりしてもそうだねー。まずは症状のコントロールを進めながら、廃用症候群予防、もしくは失われた身体の機能の維持向上を図ることは一緒だねー。でも考えることはちょっと違ったりするんだよー

そしてこの山吹さんの下で学んだ、沢尻悠・・・二人を交互に眺めながら桜井は多分この二人は自分の望んでいたリハビリをすでに学んでいるのだと改めて思う。

岩水 静
岩水 静

そうだな。それぞれの治療はまた今度話してもらうと良いが。昨今特に問題になっているのは低栄養だな。単純に摂取エネルギーが低下しており、それによって血中のタンパク質が低下して、低アルブミン血症を呈している。もちろん低アルブミン血症により起こる浮腫みなどの障害以上に、その低栄養にアプローチする必要がある。

桜井 玲奈
桜井 玲奈

つまりは、えぇと・・・摂取エネルギーが極端に低下して、基礎代謝や活動によるエネルギーの消費が増えている。ということかしら

沢尻 悠
沢尻 悠

単純に言えばそうだねー。だからハイ!摂取エネルギーを増やしましょう。という訳にもいかないよねー。食事の量は体力や社会的な要因、精神的な要因も絡むからいろんなんチームでアプローチしなければいけない。その人が望むその人らしい食事を提供するだったり色々考えなければいけないのだけど、問題は低アルブミン血症を呈するまで栄養状態が低下している。ということだねー。

沢尻はひらひらと手を振りながらそう答える。さすがに疲れているのかその身をテーブルに預けている。その姿を見て岩水は腕を組みつつふん!とそのテーブルを吹き飛ばせそうなほど鼻息を鳴らす。

岩水 静
岩水 静

これほどで疲れるだなんて情けない。貴様の後輩の方が十分に元気じゃないか。しかしそうだな。言い換えれば低アルブミン血症を呈するまで異化が亢進している、もとい体の中のタンパク質が材料として使われすぎている。と言い換える事も出来るかもしれないな。その時点で手足の筋力は衰えている事が多い。

沢尻 悠
沢尻 悠

そうそうー。だから低アルブミン血症を呈している段階で、普段提供する運動療法の負担は大きくなっている事を考えなければならないねー。それに体力の衰えから活動性も低下している事も多いから、すぐにレジスタンストレーニングで筋力をつけよう!という訳にもいかないねー

桜井 玲奈
桜井 玲奈

なるほどですが。体を構成する筋肉の材料であるアルブミン自体が枯渇している訳ですから、十分な効果も得られませんの・・・アルブミン値が低下しているなら抵抗運動よりも有酸素運動によって活動性をなんとか維持する必要もある・・・と言う事ですわね。

そういうことー!と沢尻は人差し指をあげる。それは回復期病棟でもよく見る事だと桜井は思う。でも沢尻以外に内部障害まで加味したアセスメントを口にする人は少ない。それもまた事実だと桜井は思う。

岩水 静
岩水 静

そうだな。易疲労性もまた問題になるが、また忘れていないのは慢性疾患の事だ。いわゆるCOPDや心不全、慢性腎不全といった慢性的に緩徐に進む疾患だな。もちろん急性増悪もまたある。それは今もなお患い続けているという事だから、当然軽微な炎症の持続もまたある。よって普段生活しているだけでも、我々とは違いそれだけ消費されるエネルギーもまた多い。

桜井 玲奈
桜井 玲奈

なるほど、確かに、得にCOPDを患う方は痩せ型の人が多いような気もしますわ。それはそういう事ですの?

沢尻 悠
沢尻 悠

一概にそれだけとは言えないけれど、そうである事もまた多いねー。低栄養によって引き起こされる低アルブミン血症の原因は、何も栄養の量だけではなくて、やはりのその陰に疾患が隠れてる事も多い事もまた考えなきゃねー。そしてその多くは目に見えないから、急に食事量が減って痩せてきたら要注意!って事。

岩水 静
岩水 静

それだけではないな。逆に体重が増える事もある。それは特に心不全の症状の進行により起こるのだが、血中のアルブミン値が低いと、血中に水分を引き込めずに細胞間質に水分は溜まる。よって尿量もまた心不全に伴う血圧コントロール不良により減少する。よって一見体重は増えているように見えて、それは水分の量であり、実際の筋肉量が減っているという事もある。

なるほどですわね。と桜井は返事をする。多くの疾患は教科書に記されている。だけども臨床で経験しないと分からない事もまた沢山ある。知識を身につけるという事はそういう事でもあると桜井は思う。

桜井 玲奈
桜井 玲奈

しかし、正直低アルブミン血症というのはよく見かけもしますし、良く観る症状でもありますわ。それでもそこにはいろんな機序でそれが生じていて、沢山考えなければなりませんのね・・・

岩水 静
岩水 静

そうだな。単純に栄養状態の低下に伴いそれが生じていてもそれは、元を辿ると複雑である事も多い。単に食事低下の低栄養であっても、なぜ食事量が低下しているのかの問題は多岐に渡る。そして慢性疾患を患っていたらまた運動量もまた検討する必要がある。

沢尻 悠
沢尻 悠

それに多発外傷や疾患の超急性期、肝硬変やネフローゼ症候群。低アルブミン血症によって引き起こされる症状に加えて、原疾患によって引き起こされる症状にも目を向ける必要があるから・・・・まぁいろんな視点は必要だけど、自分では分からないものだから、周りの目も絶対に必要だったりするよねー。

そうですわね。と桜井は返事をする。それは確かな言葉になっているかは分からない。だけどもこの二人と話していると果たして自分はこのままで良いのか、そんな言葉が頭の中をグルグルと巡るのでった。

桜井玲奈のメモ書き その3

・低栄養によるものでも、その低栄養に至る原因がある。単に食事量の低下だけではなく、慢性疾患の影響もある。

・低アルブミン血症だからと言って体重が減少するだけではない。特に心不全や腎不全のある方では注意!

・私はここで何を今学べているのでしょうか・・・

『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。

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